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海洋再生エネ発電促進法案の成立を急げ

 

 

 

欧州から大きく立ち遅れる日本


 この国会に、政府から「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律案」が提出されている。


 長期にわたり海域を占用する海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用を促進するため、基本方針の策定、促進区域の指定、当該区域内の海域の占用等に係る計画の認定制度を創設するための法案である。

 海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関しては、長期にわたる海域の占用を実現するための統一的ルールがなく、先行利用者との調整に係る枠組みも整備されていないため、今回の法案が成立しなければ、海洋再生可能エネルギー発電を積極的に推進することも不可能だ。


 実際に、既設の洋上風力発電設備について、欧州とわが国を比較すると、欧州は3,589基が実用段階にあり、価格も約6円~12円/kWhとなっている。ところが、日本は実証試験の段階のものが6基あるだけで、価格も約36円/kWhという低迷した状況にある。

 

 風力発電など再生可能エネルギーは海上だけのものではないが、2007年には海洋基本法も施行され、海洋政策担当大臣の下に総合海洋政策本部も設置されているのに、関連する法整備が放置されてきたことは遺憾である。

 

 

IR(カジノ)法案よりこの法案を優先すべき


 この法案の所管部局は内閣府の総合海洋政策推進事務局である。したがって、内閣委員会で審議するのが自然ではある。


 しかし、内閣委員会では、TPP関連法案、IR法案などが無理やり押し込まれて、こうした法案が後回しにされていることも問題である。

 

 参議院においては、衆議院にある地方創生に関する特別委員会で審議される法案まで内閣委員会で審議されることが多く、極めて忙しい委員会となっている。


 TPPやIRを本当に重要視しているのなら、与党は特別委員会でも設置すれば良かったのに、強引に内閣委員会に関連法案を持ってこようとしたことが尾を引いている。そもそも問題だらけのIR法案を拙速に審議する必要などない。優先すべきは海洋再生エネ発電促進法案であることは明らかだ。

 

 

早期の法案成立を求める国民民主党の主張は的を射ている


 国民民主党は、洋上風力発電の設置見込み数、費用対効果、償却期間、エネルギーの地産地消、洋上風力発電の設置と船舶等の航行、漁業権との関連などをしっかり検証した上で、この法案への賛成を決めるとともに、早期成立を強く主張している。

 

 再生可能エネルギーについては、国民民主党は政府・与党よりも熱心な取り組み姿勢を見せているだけに、その主張は当然のことだろう。


 再生可能エネルギーの促進という大目的に加え、国民民主党が強調するのは、地域経済の振興、中小企業の支援という視点である。


洋上風力発電施設については、様々な部品が必要となり、中小企業が受注機会を増やすという点でも大いに期待されている。


国民民主党がこの法案の早期成立を求めていることには説得力があり、的を射ていると評価できる。

 

内閣委員会にこだわる必要なし


 法案は内閣委員会で審議されるのが自然だと述べたが、これにこだわる必要は全くない。


 超党派でとりまとめが行われている「ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律案」についても、内閣府、総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省その他の関係行政機関の総合調整を行うことなどが規定されている。こうした法案は内閣委員会で審議されることが多いが、国土交通委員会で取り扱われる見通しだと聞く。

 

 今回の海洋再生エネ発電促進法案にしても、内閣委員会に固執する必然性はない。国土交通委員会、経済産業委員会、環境委員会でも構わない。それぞれの委員会の状況もふまえつつ、法案がきっちり審議されるような配慮が求められる。


 今国会の会期が7月22日まで、32日間延長することになった。ここまで会期が確保できるのなら、国民生活、地域経済にとって明らかにプラスになる海洋再生エネ発電促進法案などの審議を最優先させるべきである。


 なお、政府は「第5次エネルギー基本計画」を7月にも閣議決定する予定である。この案については、様々な意見が聞こえてきており、国会での集中審議も含めて、議論を深めていくことが求められる。海洋再生エネ発電促進法案との関連でも、政府をしっかり質していくことが大切である。