霞が関から見た永田町

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誤魔化しているのは障害者の法定雇用率だけなのか

 

 

 

 

障害者雇用の「水増し」

 

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 中央省庁や自治体などの行政機関が雇用している障害者の人数を水増ししていたとして、その数を公表する事態となっている。


 障害者雇用促進法により障害者の法定雇用率が定められており、民間企業は厚生労働省から毎年6月1日時点で障害者雇用数の報告を求められている。そこで雇用率が達成できなければ、不足する1人につき月5万円を納めなければならない。そこで、一定規模の民間企業はどこもこの法定雇用率の達成のために四苦八苦している。


 そういうなかで、少なくない行政機関が数字を操作し、本来は達成していない法定雇用率を達成しているかのように「水増し」していたのだ。


 今回「水増し」が明らかになった行政機関からは、「制度を誤解していた」といった言い訳も聞こえてくるが、民間企業が理解出来る制度を行政機関が誤解するということはおよそありえない。「水増し」どころか、もっと悪質な「偽装」をしていたのは明らかである。

 

 

特に悪質なのは厚生労働省

 

 それぞれの行政機関にもそれぞれ言い分はあるだろうが、間違いなく一番悪質なのは厚生労働省である。というのも、厚生労働省が障害者雇用について所管しているからである。例えば、法定雇用率について自治体が疑問に思ったとして、その場合、最終的に確認をする先は厚生労働省になる。もし、市区町村が都道府県に問い合わせたとしても、都道府県は厚生労働省に照会することになるであろうから、結局のところ厚生労働省が「公式の」回答を行うことになるのだ。

 

 障害者雇用率制度については、厚生労働省のWebサイトにも以下のようなページがある。

 

障害者雇用率制度

 

 そこにアクセスすると、「平成30年4月1日から障害者の法定雇用率が引き上げになります」という文言が目に飛び込んでくる。


 さらに、障害者雇用率制度について詳しく解説する資料が掲載されている。その資料は、「厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク」名で作成されたものであるが、もちろん、これも厚生労働省が主導して作成したのは想像に難くない。

 

 まさか、自分たちが「作った」制度を知らなかったとは言えまい。厚生労働省の「水増し」の数自体は他の省庁と比べると少なく、加藤勝信厚生労働大臣の記者会見での発言を見ても、「自分たちは問題ない」と言いたいかのようだが、厚生労働省についてはこの数字は絶対に間違えてはならないもので、間違いがあったとしたら、それはもはや故意以外の何物でもないはずなのだ。

 

 厚生労働省の調査では、故意による水増しは明らかになっていないと報道されている。

 

mainichi.jp

 

 それはそのはずで、制度を一番よく知る厚生労働省の過ちを故意でないとする以上、その他の省庁についても故意と認定するわけにはいかない。お手盛りの調査を行ったところで、真相など分かるはずもない。

 

 

もはや数字や記録を誤魔化すのは常態化しているのではないか

 

 障害者の法定雇用率の誤魔化していたこと自体、極めて悪質である。ただ、より深刻なのは、一部の法定雇用率を満たしていない機関が数字を誤魔化していたわけではないことである。法定雇用率を満たしていない行政機関は軒並み数字を操作していたのである。


 もはや、まともに法律を遵守していた行政機関がほとんど存在していなかったと言っても過言ではないだろう。中央省庁だけではなく、自治体も同様に数字を誤魔化していたというのだから、公的機関に求められる信用性など、もうどこかへ行ってしまったのだ。

 

 振り返れば、国会を賑わせてきた森友学園や加計学園の件でも、中央省庁が遵法精神に欠けるのではないかと思うようなことがあった。分かりやすい例では、財務省では文書の改竄まで行われていた。

 

 報道での取り扱いも小さかったが、加計学園問題に関わり、藤原豊内閣府地方創生推進室次長(当時)が加計学園を視察した際に、学園の本部のある岡山市から獣医学部が開設される愛媛県今治市の移動に学園側の車を利用した。これについて、「社会通念上、相当と認められる程度を超えて民間事業者の車両を利用した」として、厳重注意処分がなされたと8月28日に報じられた。

 

mainichi.jp

 

 これも障害者の法定雇用率の件と構造は同じである。分からなければ問題ないとばかりに、数字や報告が「偽造」され、それについては処分がなされないのだ。実際に、藤原氏は、旅費の精算に際して官用車を使ったと記していたにもかかわらず、「旅費が不要なら慣例的に官用車と書く」とされて、この点については不問となったと報じられている。


 明らかに「官用車」を利用していないにもかかわらず、偽りの報告が行われても不問とされる。公務員による不正が行われても、それが正されない異常がこの国では常態化しつつあるのだ。

 

 障害者の法定雇用率の件も明らかな不正であるにかかわらず、誰も責任は問われず、単なるミスとして処理される。もはやこの国の行政機関は信用してはならない組織の代表になってしまっているのかもしれないと思わせる出来事が特に安倍政権になって続くばかりである。