昨年から既に総務省は勘違いをしていた
昨年、ふるさと納税の過熱する返礼品競争に総務省が「待った」をかけ、見直しの通知を出した。具体的には、ふるさと納税を行った人に対する返礼品は原則として地場産品とすること、そして、返礼品の調達価格は3割以下に抑えることが求められた。
返礼品競争が白熱化し、その地域とは関係のないものが返礼品とされたり、ふるさと納税された金額に近いような価格のものが返礼品とされたりしたことからの通知であった。そういう意味では、自治体に抑制を求めるものであり、通知自体はあっても問題ないとは思われる。総務省が勘違いをしていると感じたのはそこからで、この通知と合わせて、総務大臣が特定の自治体名をあげてそれに従うように迫った。
しかし、自治体としては背に腹は代えられない。出来るだけ多くの寄付を集めようと思えば、返礼品競争をせざるを得ない。
そもそも、ふるさと納税に制度上の誤りがあるのであれば、国会で法律を改正して対応するのが筋であった。さらに言うのであれば、誤った制度であるのであれば、止めるということも検討すべきである。
昨年、従う義務のない通知という方法で自治体の取り組みに介入しようとする総務省の姿勢を批判したところだ。
にもかかわらず、総務省が本年になって行ってきたことは、もはや暴挙としか思えない方法である。総務省は勘違いを続けている。
通知に従わない自治体名を公開
今年、総務省は通知に従わない自治体名を公開するということを行った。法的には従う必要のない通知につき、それに従わないからと言って、具体名をあげるというのは、行政の活動上、異例のやり方である。
通知に従わなかった全国の自治体のうち10億円以上のふるさと納税受入額を誇っている12自治体は、その自治体名が公表されたのである。
総務省としては通知に従わないということで歯痒くて仕方がないのかもしれないが、通知に従わないと名指しされた自治体は結果として多額の寄付を集めているのだから、皮肉なものだ。
総務省の資料には、通知に従った自治体として12事例が紹介されている。それら事例については丁寧な紹介がされているのだが、そのうち10事例は3億円程度しか寄付を集めることが出来ていない。さらに、残りの2事例のうち一つは熊本市であり、震災の復旧・復興の支援のために集まったという要因もあろう。つまり、通知に従うと3億円程度、通知に従わなければ10億円を超える、という如実な差が表れているのである。
このように通知に従わなかった自治体として公表されるのも、むしろそれらの自治体にとっては宣伝にさえなっている。総務省に反抗する自治体を晒したつもりかもしれないが、かえってそれは逆効果ですらあるのだ。
自治体独自の取り組みが成功への道
上に紹介した総務省の発表資料によると、2017年度の全国の自治体のふるさと納税受け入れた額は3653億円で過去最高を記録したとのこと。そのうち、上位10自治体名も総務省は公開している。
1位:大阪府泉佐野市 135億円〇
2位:宮崎県都農町 79億円
3位:宮崎県都城市 74億円
4位:佐賀県みやき町 72億円〇
5位:佐賀県上峰町 66億円
6位:和歌山県湯浅町 49億円
7位:佐賀県唐津市 43億円〇
8位:北海道根室市 39億円
9位:高知県奈半利町 39億円
10位:静岡県藤枝市 37億円
金額の後に「〇」をつけた自治体は、総務省の通知に従わなかった自治体として名指しされた自治体である。これを見て分かるように、全国一の受け入れ額を集めたのは総務省の通知に従わなかった大阪府泉佐野市である。
この泉佐野市は、別に違法行為を行ったわけではない。ふるさと納税の仕組みの中で、創意工夫を行った結果がこれである。
裏を返せば、総務省が通知を出そうが、それに従わず、多くの納税者に選ばれたのが泉佐野市であるとも言える。その他、佐賀県みやき町や佐賀県唐津市も総務省の通知など意に介さずに、ふるさと納税制度を最大限活用して、全国から多額の寄付を集めているのである。
上位10位およびに総務省が通知に従わなかった自治体としてリスト公開された自治体には、福岡県や佐賀県の自治体が数多く見出される。
つまり、それらの地域では、ふるさと納税制度の活用で切磋琢磨しているのである。近隣の自治体が多額のふるさと納税を集めているとなれば、それが出来ていない自治体はうかうかしていられない。各自治体、生き残りに必死であり、総務省が通知を出そうが、それが法的に従う義務のないものである以上、自らの生き残りを優先する。隣の自治体に負けないように、返礼品も工夫するようになるのだ。
自治体の取り組みを押さえつけるような総務省のやり方はもう時代遅れである。総務省のそういう勘違いを改めない限り、真の地域創生など程遠い。