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ふるさと納税制度へ自治体の自由を縛る規制導入 法改正を成立させた総務省の失敗とは

 

 

 

ふるさと納税「規制法」が成立

 

 地方税に関連する4法案が参議院で可決され、成立した。そのうちのひとつは、ふるさと納税に関わるもので、「規制法が成立」と報じられるように、返礼品の競争状態となったふるさと納税制度に規制を導入するものである。

 

this.kiji.is

 

 

 具体的には、ふるさと納税に関わる返礼品について、調達費が寄付額の30%以下で地場産品に限定するというルールを設け、寄附の募集については適正な実施を要請するというもの。このルールを遵守すると総務省が見込んだ自治体を指定し、その自治体だけがふるさと納税制度の対象とされることになる。ここで対象の自治体に指定されないと、その自治体への寄付について税優遇を受けられなくなることから、その自治体に対して寄付が集まらなくなることが予想される。
 一見して明らかなとおり、これは、手厚い返礼品で莫大な寄付を集め、それを改めるよう総務省が「指示」しても従わない一部の自治体を狙い撃ちした規制である。

 

 総務省による指定は、昨年11月以降の返礼品の送付状況などを考慮してなされるとされている。そのため、一部の自治体は指定されないという事態も当然に予想される。

 

 特に都市部の自治体を中心に、ふるさと納税制度は不公平であるとの批判もあったため、それに総務省としても法制化で対応したということになろう。

 

 

ふるさと納税の本来の趣旨から逸脱しているのは総務省では?

 

 ふるさと納税に規制を導入する法案に対しては、国民民主党などの野党が反対した。
 国民民主党のサイトでは、この件について、「国による制度設計の不備が返礼品競争を招いたという指摘から目を背け、国が地方の自由度を縛る顛末(てんまつ)に至ったことは、国と地方の関係に禍根を残す法改正だ。」と批判している。

 

www.dpfp.or.jp

 

 

 これは真っ当な批判である。そもそも、ふるさと納税について総務省は勘違いをしており、その勘違いのまま法改正を突き進むというのだから、もはや常軌を逸している。

 

 ふるさと納税と返礼品は別のものであると、歴代の総務大臣は国会でも答弁してきた。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 

 その返礼品の部分で各自治体が創意工夫を行った結果、自治体間で集まる寄付の額に大きな差が生じた。その際、何の工夫も行わなかった自治体が声をあげたことから、その声に引きずられて、まずは法律上は自治体が従う必要のない「通知」を出すという方法で自治体に無理やり総務省の意向に従わせようとする。従わない自治体があれば、その自治体名を公表し、それでも従わないと、今度は法律を無理やり変えて、言うことを聞かせようというのである。
 ふるさと納税とは直接の関係はないと総務省自身が言っていた返礼品のその送付状況を見て、ふるさと納税制度の対象となる自治体に指定するのかどうか、総務省が決める。もはや、やっていることは無茶苦茶である。ふるさと納税と返礼品は直接の関係はないと言っていたのはどこの誰なのか。

 

 そこには国としての制度設計に不備があった。そう認めるのが第一歩ではないだろうか。
 しかし、ふるさと納税制度は菅官房長官がかつて考え出した仕組みである。間違っても、その制度設計に問題があったとは出来ないのであろう。

 

 

自治体の自由を縛り、何もしないことを助長する

 

 今回のふるさと納税制度への規制の導入は、国民民主党による批判にあるとおり、「国が地方の自由度を縛る」ものである。
 こうなれば、創意工夫を行いふるさと納税で多額の寄付を集めるようなことはせずに、黙って国の指示に従い、税収に不足があれば、国に頼れば良い。そんな主体性を失った自治体を作り出すための規制でしかない。

 

 ふるさと納税については、泉佐野市のような自治体がやり玉にあげられるが、どこの自治体も財源は慢性的に不足している。ふるさと納税であろうが、何であろうが、一円でも多くの税収が欲しいところなのだ。
 自主的な事業だけを各自治体が行っているのであれば、節約をすれば済むということかもしれない。しかし、全国の自治体は国の様々な施策に付き合わされている。いや、振り回されていると言っても良いだろう。
 そういう中で自治体の自由を縛ると言うのである。そうであるならば、財政上、もっと手厚く国が自治体を支援していく必要があると思うが、ふるさと納税の規制を合わせて可決された地方税に関わる法案は、そのような方向性のものではなかった。
 一方で自治体の自由を縛り、一方で国は支援も行わない。自力で頑張れと言いながら、自力で頑張ることは禁じる。これが現在の総務省の方針であると言えよう。
 そうなれば、もはや自治体は何もしないに限る。そんな地方自治の存在しない国を現在の安倍政権は目指しているのかもしれない。