英語民間試験の導入延期
大学入試試験に関わる英語民間試験の導入が延期された。
直接の引き金となったのは、萩生田文科大臣による「身の丈に合った」という問題発言である。その裏には、菅原・河井の両大臣の辞任に伴い、それに萩生田大臣の失言も重なると、政権のダメージが大きいと見た官邸の意向もあったとされる。大きな問題に発展する前に火消しを図ろうということだろう。
そもそも、この英語民間試験の導入に対しては、専門家からも疑問の声が上がっていた。それにもかかわらず、文部科学省はここまで聞き耳を持たずに強行してきたというのが実態だ。
今回の見送りに対して、日経新聞では、「「上から目線改革」に限界」と報じた。
まさに、聞く耳を持たない文部科学省の強硬な改革に、ようやく待ったがかかったかたちだ。それが、これまた上から目線の萩生田大臣の「身の丈」発言が要因となったというのも、何か因果だろうか。
国会でも追及されていた
この件、萩生田大臣の失言により、にわかに注目を集めたことは事実で、それをもって、問題になったから野党が追及を始めたとの誤った批判が一部では見られるようだ。しかし、この英語民間試験の導入に関わる問題点は国会でも以前から野党が追及してきた。
試みに、国会会議録検索システムで、「民間試験」という検索語で検索をしてみると、16件がヒットする。
一番古い使用例は、平成30年3月30日の衆議院文部科学委員会において。
ここで、「英語の民間試験の導入」について質問しているのが国民民主党の城井崇議員である。
以後、城井議員はこのテーマについて質問を重ねている。
先の検索結果で、上から順に4・5・8・13・14・16番が城井議員の発言中に「民間試験」の語が使用された事例である。
その他、立憲民主党の川内博史議員も何度か「民間試験」導入の問題点について、大臣らを問い質している。
少なくとも2018年(平成30年)3月段階で、国会の審議でも、英語の民間試験の導入について、その問題点が指摘されてきたのである。
城井議員による追及については、玉木代表との城井議員の対談の映像がYoutubeにあがっており参照されたい。
下村博文元文科大臣に説明責任がある
遡れば、英語民間試験の導入が決定されたのは、2014年の下村博文文科大臣の時である。
早速、立憲民主党の枝野代表が導入決定の経緯を追及すると表明している。
これは的確な判断であろう。現職の萩生田大臣は失言をしたと言っても、大臣就任時には英語民間試験導入は決定事項であって、それを予定通り進めようとしただけだ。その失言を追及したところで、問題の本質に迫ることは出来ない。
民間試験の導入を決定した際の大臣である下村議員に、まずは説明責任を果たしてもらうべきだろう。
さらに、英語民間試験の導入に裏には、何やら良からぬ話もある。
有力な民間試験のひとつとされる「GTEC」はベネッセと一般財団法人「進学基準研究機構(CEES)」が共催している。
このCEESの理事長は、佐藤禎一氏。1997年から2000年まで文部科学省の事務次官を務めた人物だ。
結局、英語の民間試験導入と言いながら、文科省の役人の再就職先を作っているだけではないかとの疑念を抱かざるを得ない。
合わせて、英語民間試験の活用という方針を文部科学省が打ち出したのは、中央教育審議会(中教審)の答申を受けてのことである。この中教審のトップを務めていたのが元慶應義塾大学塾長の安西祐一郎氏。安西氏はCEESの評議員を務めているとの情報もある。
受験生を振り回して、その裏では、文科省や関係者の新たな利権の確保なんてことにだけはしてはならない。