霞が関から見た永田町

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小学校のエアコンはなぜ後回しなのか

 

 

 

連日、猛暑が続く日本。真夏日はおろか、猛暑日さえ当たり前になりつつあり、例年9月になっても、この暑さが続く。ようやく残暑と言える気温に落ち着くのは早くて9月下旬、概ね10月の第1週あたりだろう。

 

さて、そこで考えたいのが小学校のエアコン設置問題だ。この夏は不幸なことに学校の授業中に熱中症で小学生が死亡するという事故まで起きてしまったことから、にわに公立学校におけるエアコン設置問題にフォーカスが当たっている。

 

 

自治体間格差が大きいエアコン設置問題

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実はエアコン設置は自治体によって大きな格差があるのが現状だ。北海道や東北地方など元々、涼しい地域はエアコンがなくても過ごしやすい。そういう地域を含めての話であるという前提になるが、全国の約半数の公立小中学校にはエアコンが設置されていない。今、自治体間格差が最も大きなものの1つがエアコンなのである。

 

文部科学省の調査によると、2014年時点でのエアコン設置率は32.8%、わずか20年前の1998年では3.7%だったことを考えると、急速に公立小中学校におけるエアコンの設置が進んでいる状況だ。特に伸びが顕著なのは普通教室で、昨今の猛暑も手伝って文部科学省では普通教室のエアコン設置については設備費用に半分を交付する仕組みを用意している。

 

 

8月下旬から始まる学校、エアコン設置は必須

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昔は2学期といえば9月1日始まりが全国的にも一般的だったが、土曜日の授業がなくなったころから年間の授業時間数の確保の観点で、2学期のスタートは8月下旬からとなっている。ただでさえ、残暑の季節が後ろにズレている状況で、8月下旬から学校が始まる子どもたちにとって、教室へのエアコン設置は必須だろう。

エアコン設置問題は、かつての夏場の部活中の「飲み水問題」と同じくらい、根性論が未だにはびこっている世界と言ってもいい。曰く、「昔は暑い中で勉強していたんだ」。

 

その代表格は所沢市である。不思議なことだが、所沢市はこれまでも度々、公立学校におけるエアコン設置に巡って市長発言が取りざたされ、そのたびに「時代錯誤だ」と叩かれきた。所沢市の場合、2011年に市長の就任した、藤本氏が筋金入りのエアコン反対論者だ。同市は2006年に自衛隊機の騒音のために窓を締め切らないといけないという理由からエアコンの設置が決定していたが、藤本氏が市長に当選すると、「東日本大震災を経験し、私たちは便利さや快適さから転換すべきだ」という理由から2015年にエアコン設置工事を中止した。

 

 

市長執務室からエアコンをなくしてからおしゃったらどうか?


この際、異例とも言える住民投票が行われ、賛成5万6000票、反対3万票という民意が示された。3万の反対票があったのは驚きといえば驚きだが、それでも民意は示された。これだけの民意を示されながら、それでも所沢市長は、最も騒音のひどい地域の2校だけでのエアコン設置の方針しか示していない。まさに筋金入りのエアコン不要論者だ。

 

これに対して歯切れがいいのが、元大阪市長の橋下徹氏だ。同氏は2018年7月に自身のtwitterで、「本気でエアコンを設置するつもりなら、調査なんかせず、徹底した改革で財源を生み出して、即時実施すればいいだけ」と喝破している。橋下氏は大阪市長時代に行政改革で財源を捻出し、350億円以上をかけて大阪市内の小中学校にエアコンを導入したという。今、求められているのは、まさにこうした財源を組み替える創造性を有した首長の姿勢だろう。

 

 

市議会が動いてエアコンが設置された横浜

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もちろん、地方議会が力を発揮する場合もある。かつて、横浜市ではエアコンは設置されていなかったが、議会が与野党の立場を超えて、横浜市に対してエアコンの設置に向けて働きかけて、全校導入を実現した事例もある。エアコンの設置はそうは言っても財源が必要になる事業になるため、横浜市はPFIを利用して初期コストを平準化することで対応した。本来のPFIの使い方とは異なるが、子どもたちの環境を考えればこその知恵だった。

 

いずれにしても「財源がないから学校にエアコンを設置しない」というのは、言い訳にすらならない。それほど気候が危険な状況になっていることを政治家は認識すべきだろう。