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ギャンブル依存症対策法案、IR法案に是々非々で臨む国民民主党

 

 

 

ギャンブル依存症対策は一刻の猶予もならない課題だ


ギャンブル依存症は、依存症患者の日常生活や社会生活にさまざまな弊害をもたらしている。当人は勿論だが、その家族にまで深刻な影響が及ぶ点で、非常にやっかいな問題である。


そうした認識に立って、野党は昨年12月6日、「ギャンブル依存症対策基本法案」を4会派(民進党所属議員を含む無所属の会、立憲、自由、社民)で、衆院に共同提出している。

 

本法案は、ギャンブル依存症対策に関しての定義や基本理念を定め、国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、ギャンブル依存症対策の基本となる事項を定めること等により、ギャンブル依存症対策を総合的かつ計画的に推進するものである。


 基本理念として

(1)ギャンブル依存症の発生、進行、再発の各段階に応じた防止・回復などの施策を適切に講じるとともに、依存症の患者等やその家族が日常生活や社会生活を円滑に営めるよう支援する

(2)ギャンブル依存症が多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の問題に密接に関連することに鑑み、これらの問題に関する施策との有機的連携が図られるよう配慮する

(3)ギャンブル依存症の特定原因行為を客に行わせる事業について、依存症の患者等による利用が制限されるようにする

(4)ギャンブル依存症の発生等の防止を図る観点から、特定原因行為をその客に行わせる事業については、国または地方公共団体による適切な監督のもとに行われるようにするとともに、法律違反に取り締まりの強化が図られるようにする

――こと等を掲げている。


さらに、内閣に、内閣総理大臣を本部長とする「ギャンブル依存症対策推進本部」を設置するとともに、ギャンブル依存症に関する当事者や専門家等で構成される「ギャンブル依存症対策関係者会議」を設置することを規定している。

 

 

セカンドベストの与党等案が成立へ


与党を中心とした「ギャンブル等依存症対策基本法案」(自民、公明、維新)もまとめられており、いったん提出したものを撤回して、野党案の内容を一部盛り込んだ修正を行った上で、2018年5月16日に再提出された。


 与党等案、野党案ともに基本的な考え方は同じである。違いは、野党案が「ギャンブル依存症患者と家族の経済的負担を軽減するために必要な措置をとる」「検討事項としてギャンブル関連事業者のギャンブル依存症対策に係る費用負担の在り方」などについて記載していることである。この点で、野党案が優れていることは明らかである。


 新しい与党等案は「ギャンブル等依存症関係者会議の設置」を野党案の主張通り取り入れていることを評価すべきである。自民党、公明党などが当初の案に固執せずに、野党に歩み寄っていることに着目しなければならない。

 

 さて、国会には「ギャンブル依存症対策基本法案」(立憲・無所属・自由・社民)、「ギャンブル等依存症対策基本法案」(自民・公明・維新)の二つの法案が出され、どちらを通すかという話になった。衆議院において、最終的には与党等案を採決する取り扱いとなった。


 こういう場合、野党とすればどうしたら良いのか。二つの案が全く異なっていれば、与党等案に反対すればいい。しかし、二つの案に大きな差はなく、与党等案には野党案を取り入れた修正も行われている。与党側のIR法案の審議に強引なやり方には強く反対、抗議しなくてはならない。しかし、ギャンブル依存症対策を遅らせる理由にはならないだろう。


 国民民主党は、健全・責任野党にふさわしい態度を取り、与党等案に賛成することを決めた。一刻も早くギャンブル依存症対策を前進させてほしいと願う関係者の声に応えるものであり、高く評価されて良い。

 

 

問題だらけのIR法案


 他方、政府が提出した「特定複合観光施設区域整備法案」(IR法案)は問題だらけで、拙速に成立をはかるべきものではない。以下に、この法案の問題点をいくつか示してみたい。

 

 最大の問題点は、賭博罪の違法性阻却についてである。目的の公益性、運営主体等の性格、収益の扱い、射幸性の程度、運営主体の廉潔性、運営主体の公的管理監督、運営主体の財政的健全性、副次的弊害の防止等がクリアーされているとは言い難い状況にある。


 刑法の適用除外としていることも説得性に欠ける。カジノについて「賭博罪の違法性阻却」がされているとしているが、他方、敢えて「刑法185条(賭博)及び第186条(常習賭博及び賭博場開帳等図利)」は適用しないとしていることは理解に苦しむ。
安倍総理は、世界最高水準の規制と言いつつも、諸外国と比較すると、果たして最高の規制基準かも甚だ疑問である。


認定区域整備計画の数についての問題もある。当初は3か所までとしているが「7年を経過した場合」見直すとされており、どこまで拡がるかということへの歯止めがない。IR建設には時間もかかるため、最初に建設されたIRの運営等の検証が十分になされないまま、いたずらに設置個所が増える可能性も否定できない。


 それから雇用問題もある。IRが建設・運営されると、雇用がIRに奪われ、地元が人手不足となり、逆に地元経済が衰退するのではないかと心配する声が各地方から出ている。

 

 といった具合に、政府提出のIR法案はあまりにも問題が多く、政府もまともな答弁ができていない。こうした諸点にも鑑み、国民民主党は法案への反対を決めた。6月13日の総務会において、内々に決めていた態度が報告された。ギャンブル依存症対策法案には賛成、IR法案には反対という「是々非々」を貫いている点で、国民民主党の取り組みはわかりやすいし、好感が持てる。


 憲法を蹂躙し、公文書を改ざんし、格差拡大を進める安倍内閣に対して、牽制し、抵抗することも必要だ。だからといって、野党は反対ばかりしていいわけがない。将来の政権の受け皿となるべき政策を積み上げていくことを優先すべきだ。政権が打ち出す政策に対しては、「勇気あるイエス」「勇気あるノー」を表明していくことが求められる。


 声はあまり大きくないが、良識ある野党が伸びていくことを望む人たちはかなり多いはずだ。そうした人たちの理解が深まり、国民民主党に対する支持がじわじわと上がっていくことを期待したい。

 

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