霞が関から見た永田町

霞が関と永田町に関係する情報を、霞が関の視点で収集して発信しています。

MENU

中小企業策政策を総点検して、刷新すべきだ(2/2)

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 

 

 

毎年のように出される中小企業関連法案はフォローアップされているのか


 経済産業省・中小企業庁が毎年のように国会に中小企業に関連する法案を提出している。厳密な仕訳をしたわけではないが、以下に、ここ何年かに閣議決定されたものをリストアップしてみる。2018年の提出法案名には中小企業を連想させる単語が見当たらないが、中小企業に対する措置も主要な柱となっているので、2法案も入れておいた。日付は閣議決定の日である。

 

(2018年2月9日)
「生産性向上特別措置法案」及び「産業競争力強化法等の一部を改正する法律案」
(2017年2月28日)
「中小企業の経営の改善発達を促進するための中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案」
(2016年3月4日)
「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律の一部を改正する法律案」
(2015年2月20日)
「株式会社商工組合中央金庫法及び中小企業信用保険法の一部を改正する法律案」
(2015年3月10日)
「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律等の一部を改正する法律案」
(2015年3月27日)
「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律案」

 

 たった4年かそこらでも、こんなリストができてしまう。それ以前も同じような傾向が見られる。中小企業政策に限らないが、国が取り組んできた産業政策関連の法律は熟議を経て、制定されたものか疑わしいものも少なくない。


 テクノポリス、頭脳立地だのキャッチフレーズばかりが躍って、本当に効果があったのかどうか十分に検証されないまま、尻すぼみになったものも多々ある。2000年代には、深い反省もなく、関連法が次々に廃止された。


2001年には「新産業都市建設促進法等を廃止する法律」が成立している。2002年には「首都圏整備法及び近畿圏整備法の一部を改正する等の法律」の中で、「首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律」「近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律」が廃止されている。2006年には「工業再配置促進法を廃止する法律」が成立している。

 

 果たして、毎年のように提出されている中小企業関連法は、十全な効果を発揮していたのだろうか。政策評価はきちんと行われているのだろうか。そもそも中小企業対策は社会保障などに比べるとそんなに予算規模も大きくならないので、安直に新政策を提言しやすい。それに中小企業という名目が立つと、与野党ともに反対しにくいし、法案も国会を簡単に通りやすい。


それゆえに経済産業省は毎年のように中小企業の関連の法案を乱発して、提出いるのかとうがった見方をしてしまう。全会一致ものや、中小企業政策にケチをつけるのかとの反論も出るかもしれないが、国会で関連法や予算が通っているものである以上、きちんと検証しなくてはならない。

 

 

中小企業政策の総点検・洗い直しが必要だ


 いずれにしても、中小企業政策は総点検・洗い直しが求められる。確かに、中小企業政策といえば、税制、金融が中心であって、場合によっては補助金を活用することもある。本当に目新しいことは、なかなかやりにくいという実情がある。


 だからこそ看板だけを変えて、実態は同じというようなことが許されていいわけがない。役所が格好つけるだけのために、制度の名前が変わったり、申請書類が変わったりするのは、中小事業者にも負担をかけることになりかねない。この点は厳しく検証すべきである。
 
 中小企業庁が『中小企業施策総覧』という本をまとめている。通常400とか500ページ台の厚さになる。中小企業政策についての百科事典とか辞書ともいえるものだが、全部読み込もうとすると、あまりの細かさに辟易してしまうことになる。全体のヒアリングを受けたこともある。

 

 政策当局は、よく言えば、きめ細かな政策が講じられているとでも説明したいのだろうが、担当の役人しかよく分からないようではお話にならない。忙しい中小事業者にとっては、分かりやすい、利用しやすい制度でないと意味がない。

 

 繰り返しになるが、中小企業政策の基本パターンは、税を軽減する、金を借りやすくする、補助金を出すということである。複雑な制度をやたらつくって、申請手続き・書類を面倒くさくすることだけは解消しなければならないが、あまり進歩は見られないようだ。

 

 民主党政権では、中小企業憲章というものが閣議決定されている。中小企業政策の基本的考え方と方針を示したもので、なかなかのものだった。政権を奪還した安倍内閣はこれに対して冷たい対応をとっていることは残念だ。この憲章に沿って中小企業政策をつくり直せば、かなり良い政策体系が確立できると考えるが、現在の自民党政権では望み薄だ。

 

 旧民進党、旧希望の党は中小企業が正社員を雇った場合は社会保険料を減免することを主張していた。これなどはもう一度精査して、法案を刷新すれば、中小事業者へのアピールにもなるはずだ。

 

 今、全国の中小企業が抱えている最重要課題の一つは、中小企業経営者が新しい世代に経営を引き継いでもらうことである。経営者が確保されないままに、せっかくの優良・黒字会社が存続しなくなってしまう事例も目に付く。

 

 政府・与党は事業承継税制の拡充をアピールしているが、あくまでも納税猶予が基本である。主税局の抵抗にあって、中小企業庁は大胆な事業承継税制を打ち出せないでいる。


もう少し実態を調査してみたいところだが、米国における遺産税(相続税)の廃止、英国における事業用資産に対する100%課税免除など他の先進国では大胆な事業承継対策が講じられていることをよく聞く。


 また、国民民主党は、基本政策に「事業承継政策の拡充による地域経済支援」をうたっている。政策を深堀りして、自民党政権が取り組んでいる中途半端な施策を刷新して、大胆な事業承継税制を確立することなどを期待したい。