民主党政権の失政の事例としてあげられた口蹄疫
安倍総理をはじめ自民党の議員は、民主党政権時の失政として口蹄疫が発生した際の対応の遅れをあげることがある。悪夢の民主党政権というときの、その証拠として2010年に発生した口蹄疫の流行に対する民主党政権の「不手際」をあげるのである。
2010年3月頃に宮崎県で発生した口蹄疫は同年7月4日の終息宣言まで大きな被害をもたらした。当時は民主党が政権を握っており、その対応が十分ではなかったのではないかとの声は当時からあった。確かに、国としての対応に全く不手際がなかったのかと言えば、そんなことはないが、後に公表された報告書でも、宮崎県の初動に大きな不手際があったことが指摘されている。
口蹄疫の流行がなかなか止まらなかったということが多くの人の記憶の中に残っているであろうことから、悪夢の民主党政権の証左として口蹄疫のことが持ちされると、それに納得してしまう人が多いのだろう。しかし、現在起きている豚コレラの問題への現政権の対応を見ると、民主党政権時の対応は必ずしも悪夢と言えるようなものではなかったことが分かる。
もう豚コレラは1年以上感染拡大している
2019年9月13日に埼玉県で豚コレラの発生が報告された。
これが初の関東地方での感染報告となったが、さかのぼること1年前に岐阜市での感染が報告されている。
以後、野生のイノシシを媒介したとされる感染が各地へと広まっている。
宮崎県で発生した口蹄疫の際には、全国への感染拡大は防ぐことが出来た。しかし、今回の豚コレラは岐阜市から北陸地方や関東地方にまで感染が拡大している。
既に封じ込めには失敗している。これが実情である。
動きの遅い安倍政権
豚コレラ感染拡大に対して、ひとつの有効な対応策はワクチンの接種である。感染のあった地域を中心に、ワクチン接種の要望が出てはいた。本年7月の段階で、政府・自民党がワクチン接種の検討もしていた。
しかし、9月14日の段階では、新たな江藤拓農水大臣の下で、ワクチン接種について結論を出さないというスタンスを農水省は取っていた。
それでも、関東地方にまで感染が広がって、ようやく重い腰を上げて、ワクチン接種に踏み切ると報じられた。
ここから分かるように、関東地方に感染が拡大するまで、結局決断が出来ずにいたのである。その判断の遅れによって、被害が拡大している。もう一年も豚コレラは終息もせず、かえって感染拡大しているのである。政府として、そこに大きな不手際があったとしか思えない。これを「自民党政権の悪夢」と言わずして何と言えよう。
対応策を提案していた国民民主党
豚コレラに対して動きの遅い現政権であるが、例えば国民民主党は豚コレラ対策本部を立ち上げて、農水大臣への申し入れや法案提出などを行っている。
野党の提案を受け入れることは政権の失政を認めることであると言わんばかりに、この種の野党の提案に対して現政権は無視を決め込んでいる。
自らの過ちを認めず、目の前の問題への対応に遅れているのが現在の安倍政権である。口蹄疫への対応への不手際ゆえに民主党政権が悪夢であったとするのであれば、豚コレラへの対応に遅れる現在の安倍政権も十分に悪夢であると言えよう。
安倍政権には、くだらない面子など捨てて、野党や各地の自治体首長の提言や要望を聞き入れながら、迅速な豚コレラ対策を何としても期待したい。