財務省の初動ミス
福田事務次官による記者へのセクハラ発言疑惑。先週一週間で急激に事態は展開していった。
16日:財務省より、福田氏はセクハラを否定との発表
財務省がさらに調査を行うゆえ、被害に遭った記者への協力要請
17日:与野党から財務省の対応への批判が相次ぐ
18日:福田氏はあらためてセクハラを否定するも、辞任発表
19日:テレビ朝日が自社の記者が被害に遭ったと発表
20日:被害者が名乗り出ても福田氏はセクハラを否定
野党は麻生大臣の責任を追及へ
既に、財務省の初動ミスということについては、ここでも書いたところだが、初動ミスとその後の不適切な対応が際立つ事態になっている。
まず、週刊誌報道を受けて、財務省内部で福田氏のセクハラ疑惑について調査を行ったわけだが、そもそも財務省の事務方のトップが否定していることについて、その組織内でその否定を覆す調査結果を出すことは容易ではない。この点、麻生財務大臣が強いリーダーシップを発揮して、大臣自ら事務方の話を丁寧に聴取する必要があったはずだ。しかし、麻生大臣がそのようなことを行った様子はない。事務方のトップの疑惑である以上、大臣としてどのように向き合うのか。麻生大臣が多忙を極めているとしたら、その指示で副大臣や政務官が調査にあたることも考えられた。そのような政治側のアクションがあったようには見えない時点で、麻生大臣以下の不手際は明らかだ。
さらに、被害者が名乗り出た後も、麻生大臣や矢野官房長は被害に遭った可能性のある人物が存在していることへの配慮を書いた発言を重ねている。この点についても、事後の対応につき、不手際を重ねている状況にある。
事務次官は適材適所だったのか
この間、森友問題や加計学園問題などに関わり、疑惑に関与している官僚は辞任させるべきではとの指摘がなされると、安倍総理や各大臣は適材適所でその人物をその役職に当てており、辞任させる必要はないと反論してきた。
今回の福田氏については、公表された音声データについて自らのものではないという立場を強調するようになっているが、「全体を見て判断してくれれば、セクハラではない」という福田氏の発言は、事実上、音声データにあった発言を氏が行っていたことを認めたということである。少なくとも、被害者が名乗り出たテレビ朝日は事実であると認定して事を進めており、福田氏がセクハラと受け取られる発言を繰り返し行ってきたのは、動かしがたい事実になっていると言えるだろう。
ここで問題となるのは、福田氏によるセクハラ発言について、一番古いものは2016年のものであることが明らかとなったことだ。その当時は、福田氏は事務次官になる前の主計局長の要職にあった。事務次官も事務方のトップとして重要なポストであることは当然として、この主計局長も国の予算編成を握る極めて重要なポストである。国の予算に関する情報は極めて重要であり、機密性の高い情報も含まれている。
ネット上では、福田氏はハニートラップにかかったとして、同情する声もあるようだが、主計局長や事務次官のポストにある者が容易にハニートラップにかかるようでは、それ自体、その人物が適材適所だったのか疑念が生じる。今回は記者相手であったことから、もし機密性の高い情報が漏れていたとしても、それは特ダネとして次の日の新聞やテレビニュースを騒がすだけであったかもしれないが、相手が外国の機関が送り込んで来た人物であったりしたら、どうなったのだろうか。
今回の福田氏の言動は自身の辞任による混乱に留まらず、財務省や日本の行政組織全般に対する信頼を揺るがす事態にまでつながっているのである。
麻生財務大臣の責任論
福田氏の言動について、その責を負うのは当然に福田氏自身であるはずだが、既に本人が辞任すると表明していることから、それ以上に責任を追及するのは難しい状況になりつつある。感情論として、重い処分を行って福田氏に退職金が払われないようにすべきとの意見もあるだろうが、さすがにそれは酷だろう。既に、福田氏は社会的な制裁を一定程度受けており、さらなる責任という意味では、被害を受けたとされるテレビ朝日の記者側のアクションが必要となる。
今後は、焦点は麻生大臣による任命責任や問題発覚後の対応への不手際につき、その責任が追及される場面に移っていく。既に野党は追及の姿勢を強めているが、先週の麻生大臣の言動を見る限り、まだ自身に対する責任論はそれほどのものではないと踏んでいるようだ。
そうこうしている中で、内閣支持率の低下傾向が止まらない。麻生大臣は辞任すべきとの声も広がっている。
福田事務次官の辞任もそうだが、初動の判断を誤ると、傷はさらに深くなり、収拾がつかなくなる。麻生大臣は安倍政権を支える屋台骨であることからして、麻生大臣の辞任は直ちに安倍政権の崩壊につながると考えているのかもしれないが、この件を長引かせると、気付いた時には安倍政権もろとも国民から見放されているという事態にいつの間にか陥っていないとも限らない。麻生大臣の潔い判断が求められる時期が到来しているのではないだろうか。