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北朝鮮漁船の乗組員を易々と引き渡す手緩い安倍外交

 

 

 

尖閣諸島中国漁船衝突事件ふたたび?

 

 2010年に発生した尖閣諸島中国漁船衝突事件。その対応が稚拙であったとして、当時の民主党政権は批判を浴びた。これが民主党政権の大きな潮目の変化となったことは否めない。その後、政権から追い落とされる直接の契機となったと言っても良いだろう。
 事は日本の領土領海に関わることであり、稚拙な対応は直ちに国家としての危機をも招来する。何でも強気にやれば良いというわけではないが、その対応があまりに弱腰に見えれば、国民の支持も失う。そういう意味では、政権には硬軟の絶妙なバランス感覚も求められるのが、この種の問題の対応の難しさだ。

 

 そんな尖閣諸島中国漁船衝突事件を思い起こさせる出来事が起きた。
 10月7日午前、能登半島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、水産庁の漁業取締船と北朝鮮漁船が衝突し、北朝鮮漁船が沈没した。沈没した漁船の乗組員を日本側が救助し、その後、別の北朝鮮籍の船に引き渡した。

 

 

mainichi.jp

 

 

北朝鮮漁船の乗組員の身柄を確保せず

 

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 このニュースを聞いてすぐに疑問に思うところだ。日本の排他的経済水域(EEZ)内で船が衝突し、相手方である北朝鮮漁船の乗組員が救助して、そのまま引き渡したというのだ。
 尖閣諸島中国漁船衝突事件の際には、日本の海上保安庁の船に中国漁船が「攻撃」してきたため、乗組員を逮捕し、少なくとも日本に連行はしてきたのだが、今回、北朝鮮漁船が沈没する程に大きく衝突までさせておきながら、救助して相手側にその場で引き渡してしまう。何だか手緩い対応をしてはいないだろうか。

 

 もちろん、尖閣諸島中国漁船衝突事件のときに日本側で対応したのは海上保安庁で、今回は水産庁である。今回の現場にいたのは民間船を借り上げた漁業取締船であるとの報道もあって、そうであれば、その装備や人員にも差がある。相手が何らかの反撃行為などを行ってきた際の対応能力にも差があり、無理に取り押さえて連行するよりは、安全を重視して、その場で相手方に引き渡すということも取り得る選択肢だっただろう。その現場の判断を現場で行ったとするのであれば、それを強く責めるべきではない。

 

 しかし、その後の日本政府の対応は手緩い。
 8日午前の会見で、西村官房副長官は、違法操業を確認できず、身柄を確保するという強制力を行使できなかったと言うのだ。

 

www.asahi.com

 

 

 安倍総理も参議院本会議での代表質問で同様の趣旨の答弁を行っている。

 

mainichi.jp

 

 

 8日に行われた自民党の水産部会などの合同会議に水産庁の職員が出席し、違法な操業を行っているのは間違いないが、水産物の捕獲を確認できなかったと答えたとの報道もある。

 

www.sankei.com

 

 

 そして、結局行ったことと言えば、北京の大使館ルートを通じて北朝鮮への抗議を行なうというもの。
 はっきり言って、何の実効性もない対応策だ。

 

 

挑発する北朝鮮に「負ける」安倍外交

 

 今年の9月には、今回衝突があった海域で、海上保安庁の船に小銃を向けながら北朝鮮海軍と思われる船が接近するという出来事があったばかり。

 

mainichi.jp

 

 

 今回は、相手は漁船であったが、水産庁の船と衝突するまで接近してきているわけで、その「敵意」は明らかだろう。
 相手の敵意に乗って、こちらも勇ましく対応すれば良いというわけではないが、少なくとも、その身柄を一旦確保した以上、例えば責任者だけは日本へ連行するといった対応も考えられたはずだ。その場で帰してしまっては、交渉すらままならない。

 

 事を単純に比較することが出来ない事情があるとはいえ、民主党政権下の尖閣諸島中国漁船衝突事件の際には、中国漁船の乗組員を日本に連行した一方で、今回の件では自公政権下では北朝鮮漁船の乗組員を連行せずに、その場で相手側に引き渡している。

 外交上、日本の立場を低くしているのはどちらだろうか。

 

 先日、フランスのシラク元大統領の国葬に際しての安倍外交の失態を指摘した。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 

 今回も相変わらず外交的失政を繰り返しただけのように見えるが、どうだろうか。
 日本国内では、随分と威勢の良いことを主張する安倍総理。しかし、実際の外交上の対応では、「弱腰」や「失態」と評されるようなことを繰り返している。
 もはや「外交の安倍」が虚構であることは周知の事実になりつつあるのではないだろうか。