霞が関から見た永田町

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政治スキャンダルと政党支持率

 第二次安倍政権が発足して7年。気づけば、憲政史上最も在職年数の長い、内閣総理大臣となった。伊藤博文、西園寺公望、桂太郎、大隈重信、高橋是清など戦前の総理大臣は言うに及ばず、戦後日本の礎を作った吉田茂、所得倍増計画の池田勇人、沖縄返還の佐藤栄作、日本列島改造論の田中角栄など、並居る先人を抑えての、最長在任期間である。

 

 

記録には残っても記憶には残らない安倍政権

 

 歴代最長の在任期間を誇りながら、これといって具体的な成果が思い浮かばないのが安倍政権の特徴である。それはもしかしたら、社会の多様化に伴って政治の役割が大きく変わったことの証かもしれないし、政権にとって良く言えば、それだけ国際社会が安定したことの証かもしれない。

 

 長期政権の緩みだろうか、河合、菅原両大臣の辞任に始まり、年末には小泉大臣の醜聞も発覚、果てには秋元司衆議院議員の逮捕と続いている。秋元議員の逮捕は、IR誘致に伴い、中国企業から賄賂を受け取ったことが疑われている。こちらは推移を見守る必要があるが、場合によってはリクルート事件以来の政界を大きく巻き込んだ、大疑獄事件に発展する可能性がある。

 

 昔なら政権が2つ、3つ飛んでもおかしくない状況が続いている。これだけの事件が起きていながら、少なくとも安倍政権はまだ揺らいでいるようには見えない。今、まさに国民が不幸なのは、ここにある。

 

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サラリーマン化する国会議員

 

 これは与野党双方に大きな問題を抱えている。一つは小選挙区制の定着によって、国会議員がサラリーマン化してしまったこと。党本部の力が強力になり過ぎ、自民党の中から改革を訴えるうねりが起きにくくなっている。

 

 そして、もう一つの原因は野党だ。未だに1990年代から続く、テレポリティクスを引きずり、国民と向き合おうとしない、その姿勢に国民は、「安倍政権がいいとは思わないが、かといって野党でもね」という感想を抱くのである。2019年はいよいよ出生数が90万人を大きく下回り、日本の行く末はどうなるのか、と国民の不安も大きくなっている中で、今の政治状況は非常に不幸だ。

 

国民不在に見える野党の合流劇

 

 年末から年始にかけて、立憲民主党を軸に、国民民主党、社民党が合流に向けて動き出した。年明け冒頭解散や、あるいは今回の秋元議員の逮捕によって春先総選挙の可能性も取りざたされている中、野党が大同団結していくというのは、永田町の論理においては正しい。ましてや小選挙区制が定着した昨今、野党がバラバラでは与党・自民党には勝てないからだ。

 

 その理屈は分かる。分かるものの、一般には非常にわかりにくく、「自分たちの身のため」に合流しようとしているように見えてしまっている。問題は、そういう見え方をしていることに国会議員が気づいてないところにある。永田町にいると、社会の景色が見えなくなってしまうのだ。

 

 このまま合流したとしても、その統一野党はそれほど国民の支持を集めないだろう。だからこそ、野党は合流するのであれば、どうやったら国民の期待を集められるかを真剣に考えなければならない。1990年代後半にあった、「非自民」だけでは国民の期待は集まらないのだ。そこに気づいている国会議員が果たして、どれだけいるか。

 

今こそマーケティングを学べ

 

 マーケティングの基本に「プロダクトアウト」と「マーケットイン」がある。提供者(政党)の論理で商品開発(世論発信)するのがプロダクトアウト、消費者が欲しているものを届けるのが「マーケットイン」だ。非自民というアプローチはプロダクトアウトの考え方だから、支持が広がらない。むしろ、野党の大同団結は旧民主党の再結集と受け止められ、民主党政権時の数々の失敗を国民が想起するだろう。

 

 今こそ、野党はマーケティングを学び、マーケットインの考え方で情報発信をすべきだ。野党が合流するにしても、何を発信すると有権者は期待してくれるのか。少子化、高齢化、地方からなくなる雇用、都市部であっても終身雇用制度の終焉など、国民が不安に思っていることは多い。かつ、それらに対して自民党が手を打てていない、あるいは手を打っていても成果が上がっていないものもある。

 

 今こそ野党はマーケティングに大きく予算を投じて、ブランディングを考えるべきだ。それができた時、野党にもワンチャンス、訪れるに違いない。