法案成立数は減少、成立率は向上
26日、国会が閉幕した。
参議院議員選挙が控えていることから会期の延長も難しく、後半になると予算委員会が開かれないなど、全般的に低調な印象の残る通常国会となった。
ここで、会期末に話題になるのが法案成立数や成立率だ。
今国会に内閣が提出した閣法は57本。そのうち54本が成立した。成立率は94.7%。
会期の長さに差があるために単純な比較は出来ないが、昨年の通常国会では提出された閣法が65本で、成立したのが60本であった。その成立率は92.3%。
法案成立率という点では、今国会は昨年を上回った。ただし、今国会は閣法の提出法案数が絞られており、成立数を見ると、2016年の56本に次ぐ少なさだった。
闇雲に法律を制定すれば良いわけでもないから、その成立数の少なさをもって低調な国会であったと断じるわけにもいかないが、国会は立法府であり、立法活動はその活動の核心をなす。その活動を測る指標として法案成立数を見るのであれば、本年の第198回国会は低調であったと言わざるを得ないだろう。
野党提出法案はまともに審議されず
今国会に提出された法案の一覧は衆議院のWebサイトで確認可能である。
ここにある「衆法」や「参法」は議員が提案した法案である。それらの多くは野党議員の提出によるものである。与党議員が提出してはならないというわけではないが、与党議員の場合は党を通して、それを閣法とするのが成立への近道であるため、与党議員による「衆法」や「参法」は少ない。
「衆法」や「参法」のうち成立に至っているものは、その多くが委員長提案によるものである。これは議員の他に、委員会にも法案提出が認められており、その場合の提案者は委員長となることによる。この委員会提案は与野党で合意が取られているからこそ、そうなるのが一般的である。だからこそ、委員長提案の「衆法」や「参法」は基本的に全会一致で成立に至っているのである。
さて、「衆法」の一覧を見ると、その多くが「衆議院で閉会中審査」となっている。
会期中に議決されなかった議案はそのままでは会期不継続の原則により廃案となってしまう。しかし、閉会中にも継続して審議を行うという議決を行うと、その会期不継続の原則の例外とすることが出来る。実態としては、多くの法案はまともに審議すらされずに、ただ廃案を避けるために閉会中審査の手続きが取られた結果、「衆議院で閉会中審査」となっているのである。
野党議員が法案提出を行い、与党が審議を拒み、そのまま会期末を迎えるので閉会中審査の手続きが取られる。それは常態化しているが、今国会の後半は予算委員会が開かれなかった。
そう、予算委員会を開いていない時間に別の委員会を開くことも出来たわけで、審議を行う時間がなかったわけでは必ずしもないのだ。しかし、与党は野党提出の法案を審議しようとはしなかった。
低調な国会の責任は与党に
数日審議拒否をしただけで、野党に対して職場放棄との批判がぶつけられる。ところがどうだろうか。与党は時間があるにもかかわらず、野党からの提案を無視し、委員会で審議をしようともしていない。閣法の提出法案数は少なく、さりとて、各法案について普段以上に時間をかけて審議したわけでもない。最低限の時間の審議をもって「十分な審議時間を確保した」として、与党は法案成立させてしまっているとさえ言える状況であった。
少ない法案を最低限の時間だけ審議して、野党から提案のあった法案はまともに審議しない。そうして、今国会は低調なものとなったのである。
国会審議の実態はなかなか国民に伝えられず、マスコミで報道されるのは与野党対立の場面ばかりだ。今国会では、ある意味で与党あるいは安倍官邸の巧みな国会審議回避策が功を奏して国会審議は低調なものとなり、与野党対立の場面どころか、国会審議自体がほとんど報じられない状態を長く続かせることに成功した。
最後の最後になって、老後に2000万円必要という金融庁の報告書の問題で、少しだけ国会が盛り上がったが、時は既に遅し。このまま参議院議員選挙に突入してしまうため、どれだけ今国会が低調であったのかといったことは話題にもならないかもしれないが、いかに安倍政権や自民公明両党が国会審議を等閑にしていたのかはあらためて確認されるべき事柄であって、それが投票の判断基準になっても良いはずだ。