政府は、男性の育児休業取得率を引き上げるため官民でつくる協議会を来年設置する方針を固めた。主に、育児休業により一時的に人手不足となる企業への支援策を議論し、女性が出産後に職場復帰しやすい環境を整備し女性活躍につなげる考えだ。
目標は2020年までに取得率13%
男性の育児休業取得率は?
厚労省は2020年までに男性の育児休業取得率を13%上げる目標をもっているが、現状、男性の育児休暇取得率は3.16%である。
厚生労働省は30日、2016年度の男性の育児休業取得率は3.16%だったと発表した。前年度より0.51ポイント増加し、比較可能な1996年度の調査以来過去最高だった。女性の育休取得率は81.8%で、前年度より0.3ポイント増加した。
厚労省は2020年度までに男性の育休取得率を13%にする目標をもつが、達成は見通せない。今後、外部有識者会議で男性の育休取得率を上げる施策を検討する。
男性公務員の育休取得率は8%
府省庁別では厚生労働省40.9%、財務省24.3%で取得率が高く、防衛省1.4%、国土交通省4.9%は取得率が低かった。
梶山弘志行政改革相は27日の閣議後の記者会見で、2016年度に育児休業を新たに取得した男性の国家公務員の割合は8.2%だったと発表した。前年度に比べて2.7ポイント増え過去最高だった。20年までに13%に増やす政府目標には届かなかった。
政府では男性育休の利用状況を義務付ける案が出ている
男性が育児休業を取りにくい雰囲気を改善するため、男性社員の育休利用状況を公表することを義務付ける案が出ている。男性の育休取得率は低く、期間も短い。その理由に育休が職場で歓迎されないことや、休業中の収入が減ることなどが指摘されている。厚労省は要員の調査や、分析を行い、有識者検討会を設けて議論を行う方針である。
厚生労働省は、女性に比べ著しく低い男性の育児休業取得率をアップさせようと利用促進策の検討を始めた。子育てと仕事の両立のための負担が女性に大きく偏り、安倍政権が掲げる女性の活躍推進の障害となっているためだ。取得しづらい職場の雰囲気を改善するため、企業に男性従業員の利用状況の公表を義務付ける案などが浮上している。
企業の取得率や取り組みは?
取得率0%の企業は87.6%
男性の育児休業取得率13%を目標に掲げているが、取得率0%の企業は87.6%に上る。 約70%の企業は、育児休業を取得しやすい環境づくりを実施していない。
育児休業の利用実績を聞くと、「女性のみの利用者がいる」の回答が55.4%で一番多く、「男性・女性両方で利用者がいる」は8.4%にとどまる。男性の育児休業取得率の平均値は正社員4.2%で、「取得0%」という企業は87.6%に上る。対して女性の育休取得率は95.2%で男性を圧倒している。
2015年 男性育休の取得率が高かった企業
日本生命保険は2013年から「男性の育児休業取得率100%」の目標を掲げている。目標を掲げた初年度の2013年から3年連続で100%を達成している。
順位 | 社名 | 男性取得率(%) |
1 | 日本生命保険 | 100 |
1 | 古河機械金属 | 100 |
1 | シーボン | 100 |
4 | T&Dホールディングス | 97.2 |
5 | 明治安田生命保険 | 94.4 |
6 | 第一生命ホールディングス | 85.5 |
7 | 朝日生命保険 | 81.6 |
8 | アサヒグループホールディングス | 73.1 |
9 | 大和証券グループ本社 | 69.6 |
10 | 三井住友フィナンシャルグループ | 65.5 |
登壇した同総合法人保険第八部法人部長の吉田大輔氏は、長男が1歳になる15年10月に1週間育児休業を取った。妻が16年4月に職場復帰を予定していたため、1歳時までに卒乳させたいという要望があり、夫婦で相談して取得時期を決めた。「男性は子どもが生まれたら全員育休取得するものという風土が社内ですでに醸成されており、推奨取得期間も7日間で業務の調整もしやすかった」と語る。
育休取得のための取り組み
男性が育児休業を取りやすいように育休に関する取り組みを行っている企業が増えている。
有給の育児休暇を最長6週間に
日本マイクロソフトは、有給の育児休暇を最長6週間取得できる新制度を9月から導入したと明らかにした。養子の育児も対象。収入が減らないようにすることで、育休の取得率が低い男性の活用を促し、働き方改革につなげる。厚生労働省によると、有給で1カ月以上の育休を認める企業は珍しいという。対象は正社員約2200人。
育休取得を促すメールが届く
男性社員が社内システムを通じて子供が生まれたことを報告すると、月に1度、自動的に社員本人と直属の上司に対し、育休取得を促すメールが届く仕組み。関電では子供が満3歳になる年度の末まで育休を取ることができるが、昨年度の男性取得率は3・2%にとどまっていた。
1日単位で育休をとれる制度
みずほフィナンシャルグループ(FG)傘下のみずほ証券の坂井辰史社長は、共働き世帯の増加を背景に男性の育休取得が社員の士気向上につながると指摘。「企業の活動を継続し、社員の活力を維持するためには(育休取得は)絶対に必要な対応だ」と強調する。家族の介護による休職も「経営側として積極的に対応したい」と語る。
1ヶ月以上の育休取得で仕事への意欲も高まる
労働者への調査では、末子出生後8週間以内に育休を取った男性にきっかけを複数回答で聞いたところ、「以前から取得を希望していた」(70.5%)が最も多かった。「職場の同僚や上司、会社から取得を勧められた」も40.0%を占めた。
一方、育休だけでなく育児目的の有給休暇などの休みを「1カ月以上」取得した男性のうち、「会社に仕事で応えたいと思うようになった」人は12.2%いたが、「3日以内」の場合は4.0%にとどまった。「会社への帰属意識が高まった」についても「1カ月以上」の12.2%に対し、「3日以内」は1.8%。「育児への意欲が高まった」も1カ月以上では58.1%だが、3日以内では31.9%だった。