まさに急転直下。民進党と希望の党が「合流」することになった。
ただし、民進党は解党せずに、前原代表も希望の党に直接参画することはなく、今回の選挙は無所属での立候補を表明している。
民進党は残しつつ「希望の党」から選挙に臨む
「合流」の方法については、まだ詳細が不明な点もあり、希望の党が民進党からの希望者を全て自動的に受け入れるということではないようだ。実際、希望の党側の細野豪志氏は総理大臣経験者の合流を遠慮して欲しいと表明している。志を同じくする人が集まるのが政党であり、必ずしも志を同じくしない人まで無節操に合流させるというのも変な話で、一定の選別が行われるのは当然と言えば当然だろう。ただ、一連の報道を見る限り、今回の総選挙で民進党から立候補予定であった者のうちの多くが希望の党へ「合流」することになるようだ。
現在、民進党には参議院議員もおり、さらには全国各地に地方議員もいることから、簡単に解党出来るのかと言うと、実際にはそうではない。前原代表も無所属で立候補し、今後は参議院議員や地方議員がどのように希望の党へと合流していくのかを考えていくとしている。
特に、解党をこの段階でしようとすると、各種の手続きや事務処理が発生し、それでは選挙どころではなくなってしまう。現在の民進党を残しつつ、総選挙に臨む候補者は希望の党へ「合流」というのは極めて現実的な判断である。
なによりも、28日の衆議院の解散により、これまで衆議院議員であった人々は、「ただの人」になった。よって、いずれの党から立候補しようと、その政党がその人物に公認を出すかどうか決めれば良いだけである。今回、民進党は全ての公認を取り消すとしているので、希望の党から立候補しようというのであれば、希望の党に公認の申請をする。手続き上は、ただこれだけである。公認を出すにあたって、党員であることを求めているのであれば、党員になるだけであり、入党申請の可否を含めて、申請を受けた党側が判断をすることになる。民進党で公認を得ていた人物については、希望の党は基本的には受け入れるという姿勢のようだが、党として公認を出す以上、あるいは資格審査を行って、公認候補に相応しくないとして、申請を退けるということも起きるのかもしれない。それでも、急遽の解散と新党の立ち上げであるから、候補者は一人でも多く欲しいはずで、そう簡単に拒否するということにもならないだろう。何より、数が集まらなければ、そこに力は生まれない。この点につき、より多くの仲間を国会に送り出そうという前原代表の現実的な判断も働いていたものと思われる。
「希望の党」を下で支えているのは民進党
ところで、党の公認ということが話題になっているが、実際の立候補手続の際には、政党の候補者であることを示す「所属党派証明書」を提出することが求められている。選挙事務所などに行くと、公認証が飾られていたりするが、それは内部でのみ通用するもので、立候補に関する実務では「所属党派証明書」の提出の有無が全てである。この証明書を提出しないと、選挙では政党の候補者として扱われない。そして、この「所属党派証明書」の提出の有無で、報道機関はその候補者が政党の公認候補であるかどうかを判断している。
希望の党は、立ち上げ間もないことから、「所属党派証明書」を作成し、各候補者に渡すといった事務作業を行う人員も手薄になっている可能性がある。その点も、現職としての経験を持つ者の参画や民進党の事務局の応援はありがたかったはずだ。
全国規模の選挙を戦うのは決して容易なことではない。看板として希望の党というものを掲げても、それだけでは戦えない。ここでの前原代表の英断は、民進党が「合流」することにより、選挙活動の下支えをするロジスティックスも整ったことを意味する。
色々と批判はあるところであろうが、看板とロジスティックスが揃い、現実的に政権交代を目指そうという集団が立ち現れつつところを、いま私たちは目にしているのかもしれない。