9月末に臨時国会が開催される予定となっているが、働き方改革などが審議の焦点である。
臨時国会は、長時間労働の是正をはかる働き方改革関連法案やカジノ実施法案などの審議が焦点となる。野党は学校法人「加計学園」や防衛省の日報隠蔽問題などを追及する構えで、与野党対立は深まりそうだ。
「働き方改革」をめぐる与野党の攻防
8月23日、自民党の森山裕国対委員長と民進党の山井国対委員長が国会内で会談した。この中で野党が要求している臨時国会について、その開会が遅れる理由として森山国対委員長から「働き方改革の法案が調うまで待って欲しい」と説明があったことを山井国対委員長が明かした。
これについては、民進党のWebサイトに以下のように山井国対委員長が語ったと記されている。
「新執行部の判断になるが、働き方改革の法案については連合も、労働時間の上限規制の法案と、今まで残業代ゼロ法案と言われてきた長時間労働や過労死を増やす法案とを一本化すると加藤大臣は明言しているが、それは絶対にやめて欲しいと(主張している)。それを一本化したらそう簡単に審議に応じられなくなる」と法案の一本化に強く反対する意向を示した。
法案の一本化が行われると、その内容は「あれもこれも」になり、時に問題のある条文を紛れ込ませるということも行われるので、山井国対委員長の懸念は一理あると言えるだろう。それくらい、今回の「働き方改革」がカバーする分野は幅広い。
「働き方改革」とは
では、「働き方改革」とは何を指しているのか。
昨年9月、安倍首相が議長とする「働き方改革実現会議」が設置された。以後、安倍内閣の主要な政策と位置付けられ、加藤勝信働き方改革担当大臣が中心となって産業界や労働界、有識者を交えての議論が積み重ねられてきた。
この「働き方改革実現会議」では、以下の論点について検討することとされた。
参照:第一回会議議事録
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai1/gijiroku.pdf
1 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
2 賃金引き上げと労働生産性の向上
3 時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正
4 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題
5 テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方
6 働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備
7 高齢者の就業促進
8 病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立
9 外国人材の受入れの問題
「働き方改革実現会議」は10回の会議を重ね、本年3月には「働き方改革実行計画」がまとめられている。この計画こそが安倍政権の進めようとしている「働き方改革」の全容と言える。
この計画には本文の他に工程表も含まれている。上記の九つの点につき、それぞれ今後の対応策が時系列に沿って示されているのである。そのいくつかについては、法整備が必要となるとされており、冒頭の森山国対委員長の発言にもあったように、次の臨時国会で関連する法案の提出が目指されているのである。
「働き方改革」で捉えている課題
パートタイム労働者の比率が上昇したため見かけ上全体の総労働時間が減少
日本は労働時間が長い割に生産性が低い
全課題は以下を参照
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/pdf/sankou_h290530.pdf
複雑な「働き方改革」法案に求められること
働き方改革の法案として提出が予定されているものについて、その具体的な内容は「働き方改革実行計画」に基づくものになるはずで、テーマとしては上記の九つの点に関連するものとなる。その九つの点については、民進党としても同様の課題認識を抱いているはずだが、実際の法案となると、ひとつひとつのテーマであっても、その内容は複雑なものになることが予想され、さらに「働き方改革」法案として一本の法律に集約されるようなことがあると更に複雑となることから、その審議は容易なものではなくなる。特に、労働法制については、経営側と労働側のせめぎ合いがあるわけで、細かい字句の違いでどちらかに大きく有利に働いたり、あるいは不利に働いたりもする。解釈の余地を残し過ぎると、法律が悪用される可能性もある。臨時国会での審議となれば、審議時間も限られることになる。
働き方に改革が必要であるということは国民的な合意もあるところであり、新たな法律については、より実効性のあるもので、かつ悪用が行われるなどの欠陥がないよう、臨時国会では慎重な審議と検討が求められるところだ。