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野党は世論を喚起することでしか与党の横暴を止められない

 

 

 

野党の必死の抵抗

 

 臨時国会が閉会した。与野党対立法案であった入管法改正案については、与党が無理を重ねた国会運営の末、最後は深夜の参議院通過により成立した。

 

 与党が成立を強く決意した法案の成立阻止は困難を極める。唯一、野党が目指す方法としては、会期中の成立を阻止することにより、廃案に持ち込むというものがあるが、これは国会の会期延長が可能なため、実現させるのは難しい。ただ、野党としては、まずはこの会期末まで粘り廃案にするという方法を採用するしかなく、そのために、いくつかの手段が採られることになる。
 実際、今回の臨時国会でも会期末を視野に、野党は必死の抵抗を試みていた。例えば、以下のようなことが試みられた。

 

11/27 法務大臣不信任決議案の提出(国民・山井議員の2時間超の演説)
12/7 参院法務委員長の解任決議案の提出(自由党・山本太郎議員の牛歩戦術)
   法相の問責決議案の提出
   首相の問責決議案の提出

 

 まずは、入管法改正を所管する法務大臣の不信任決議や問責決議である。これら決議が提起されると、審議は止まる。次に、法案審議がなされる法務委員会の委員長の解任決議を提起するという方法である。
 いずれの決議案も本会議で審議されることになり、その際には、長時間の演説や採決の際の牛歩戦術などの抵抗手段がある。
 決議案は多数を握る与党が否決することになるので、法案審議を数時間から数日遅らせる程度の効果しかないが、それら決議案が提起されると、報道でも取り上げられるため、野党としては問題のある法案が審議されていることを国民へ向けて伝える機会を作ることが出来る。

 

 野党が出来る最後の抵抗手段は、内閣不信任決議案や首相問責決議案の提出である。それらが国会へ提出されれば、国会の全ての審議を止めることが出来る。ただし、これも国会で多数を握る与党は否決するのが通常のため、それらの提出をもって問題となっている議案の廃案にはつながらない。

 

 与党の横暴を止められない野党は不甲斐ないという批判も聞こえてくるところだが、現在の制度上、与党が成立を目指す法案を野党が廃案に追い込む方法はほとんど存在しない。今回の臨時国会では、衆議院において内閣不信任決議案が提出されることがなかったため、全ての抵抗手段が駆使されたわけではないが、提出されていたとしても、入管法改正案の成立が実際よりも数時間遅れた程度であったはずだ。
 今回の臨時国会については、会期の延長がまだ可能であったため、もし参議院での採決が遅れるようであれば、数日のみの会期延長を行い、最後は与党が入管法改正成立を押し切っていたはずだ。

 

 

野党として出来ること

 

 では、野党は無力なのかというと、そうではない。野党は戦略をもって戦うことで世論を喚起し、与党の横暴を止めることは不可能ではない。
 今回の入管法改正案については、短い審議時間であったが、その中でも野党の追及により、その問題点が明らかになっていった。さらに審議を重ねれば、より多くの問題点が明らかとなったことだろう。そこで、与党は数の力を背景に、審議時間を限定し、拙速に採決へ持ち込むことで反対の声が高まることを回避したのだ。
 実際に、12月8日9日に実施されたNHKの世論調査では、内閣支持率が低下している。国会を続ければ、更なる反対や疑問の声が高まっていたはずで、それを避けたかたちになっている。

 

www.nhk.or.jp

 

 

 野党は、国会の場で与党が示した案の問題点を突いていく。まずは、この作業を愚直に行うことである。もちろん、国会審議の様子は多くの場合に報道されることはなく、注目もされない。だからこそ、先にあげたような不信任決議案などを有効に活用しながら、国民の関心を少しでも集め、与党がいかに問題のある議案を国会に提出しているのか伝えていく必要がある。
 ただし、報道受けするパフォーマンスには走らないことが重要である。不信任決議案も国会審議を遅らせるためだけに行うのではなく、法案自体や法案審議のあり方に問題があることを国民に伝えるために行うということを明確にして行うべきである。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 もちろん、国会の中に閉じた活動では世論の喚起にはつながらない。例えば、野党の各政党や議員が積極的な情報発信を行うことも必要だろう。
 国民民主党からは、衆議院法務委員会の理事である階猛議員が入管法改正案の問題点を簡潔に伝える動画を公開している。このような取り組みを波状的に行っていくことが求められるだろう。

 

www.youtube.com

 

 国会での野党の「抵抗」に対して、世論の後押しをいかに得ていくのか。野党は戦略性をもって事に当たる必要がある。