霞が関から見た永田町

霞が関と永田町に関係する情報を、霞が関の視点で収集して発信しています。

MENU

テクノロジーファーストの政党はどこだ?

 

 

 

トヨタ自動車とソフトバンクが移動サービス事業で提携し、「モネ テクノロジーズ」という字度運転や配車サービスを展開すると発表した。

 

今回の事業提携は単なる新会社の設立という話ではない。自動運転や配車サービスなどを通じて、自動車の会社からモビリティの会社への移行しようとするトヨタ自動車の強い意志が見て取れる。

 

今回の事業提携も、トヨタ自動車が自らソフトバンクへ足を運び、実現したという。トヨタ自動車の豊田社長が直々に出向くと聞いて、さすがの孫正義会長も驚いた、という報道もある。

 

 

グーグル、アマゾンを見据えるトヨタ・ソフトバンク連合

 

今回の日本連合ともいうべき、トヨタ自動車とソフトバンク連合が見据えるのは海外市場であり、そのライバルはuberやアマゾン、グーグルであることは明らかだ。

 

1990年代、日本はあまたのパソコン・メーカーが存在した。しかし、CPUにハードディスク、メモリ、OSと標準化されたパーツを組み合わせれば作れてしまうパソコンはあっという間にコモディティ化し、日本企業はパソコン市場から弾き飛ばされてしまった。

 

 

垂直統合から水平分業の波に飲み込まれたエレクトロニクス業界

 

その後もこうしたトレンドは、携帯電話機市場でも、液晶テレビ市場でも、次世代光ディスク市場でも、あらゆるデジタル家電市場で起きた。つまり、アナログからデジタルに移行するとはそういうことなのである。すべての部品がコモディティ化するため、ハードでは勝負にならず、ソフト勝負、コンテンツ勝負、仕組み勝負になるのである。

 

少なくとも、エレクトロニクス業界はそのパワーシフトに対応できなかった。唯一、ソニーが出井社長時代に未来に起きる変化に気づき、対応しようとしたが、社内の意識がそれについていけなかったために、ソニーも今や往時の姿は見る影もなくなってしまった。

 

 

オープン化の波が押し寄せる自動車産業

 

この流れは自動車産業に押し寄せつつある。トヨタ自動車がこれまでと同じように自動車産業の雄であり続ける保証はないのである。そういう危機感が同社にはある。実際、今年1月にラスベガスで開催されたコンシューマエレクトロニクス向けのテクノロジーが一堂に会する展示会「CES」でトヨタ自動車は、自動車ではない、新しいモビリティの未来を体現したコンセプト・カーを展示している。

 

今、日本はもちろん、世界は車を前提に社会が作られている。都市計画とは車中心そのものだ。モビリティとしての車はなくならないが、これまでと大きくことなるは、世の中のあらゆるものがネットワークに繋がる社会がいよいよ到来するということだ。

 

 

あらゆるモノがネットに繋がる時代の質的変化

 

この質的変化の意味は大きい。さきほど述べた1990年代、windows95が登場したことは、インターネットに繋がっていた人はまだ少数派だった。今、通信速度が速くなり、一人が一台スマホを持つようになり、ほとんどの人はネットワークに繋がった、常時オンラインの状態になった。これから通信の世界では5Gへと移行する。通信速度が現行の100倍の世界がやってくる。IoTと呼ばれるように、人だけでなく、あらゆるものがネットに繋がる時代がやってくる。

 

今回のトヨタ自動車とソフトバンクはそういう時代の質的転換を捉えた動きと言っていいだろう。いつの時代もテクノロジーが社会を変えてきた。今はそのテクノロジーが社会に与える影響が最大化する局面を迎えているのである。

 

 

テクノロジーファーストの旗を掲げるのは誰?

 

こういう状況にあって、国政政党の中で、テクノロジーへの造詣が深いという政党があるだろうか。残念ながら、現時点ではめぼしい政党は見つからない。かろうじて、国民民民主党は政策集の中で、テクノロジーファーストの旗が見える。ただ、まだ国会論争や代表を通じての世論への訴えかけからは、テクノロジーへの造詣は見えない。ぜひとも、頑張ってほしいところだ。時代の要諦であり、どの政党も旗を掲げていないブルーオーシャンの地である。