日本経済新聞社とテレビ東京の調査によると、幼児教育・保育の無償化と待機児童の解消では、待機児童の解消の方を優先するべきだと答えた人が63%であった。幼児教育・保育の無償化と答えた人は27%であった。
幼児教育の無償化は実現するのか?
幼児教育無償化とは
3歳から5歳児を保育所、幼稚園に預ける場合、費用が無償化される。所得の制限はなし。認可外保育所は、認可外保育所の平均保育料の3万5千円/月の支給を検討している。また、0歳から2歳児を保育所に預ける場合、住民税が非課税の低所得世帯は原則として無償化される。
幼児教育無償化の目的と問題点は?
目的
・子育てしやすい環境をつくり出生率を上げる。
・収入の低い世帯の子供も、幼児教育を受けることができ学力の差をなくす。
・子育て世帯の負担を軽減し、消費を増やす。
・費用の高い幼稚園も無償化することで待機児童を減少させる。
問題点
・収入の高い家庭では、教育費が増え習い事などにお金を回せる分、教育格差が広がる。
・財源確保のため、増税される。
幼児教育無償化の財源は?
幼児教育無償化は、2019年に引き上げられる消費税率の増収分と企業からの拠出金を財源とし、2020年度から実施する方針である。当初、増収分の4分の3を国債の返済に充てる予定であった。しかし、返済を予定していた額の2分の1に減らし、その残りを教育・子育てに充てることとなった。
国民からは無償化より待機児童解消の声
国民からは、幼児教育の無償化より待機児童解消を優先的に解決するよう声が上がっている。2016年には「保育園落ちた日本死ね」が流行語になった。いまでもTwitter上などで「#保育園落ちた2017」「#保育園入りたい」などのハッシュタグが活用されている。
待機児童とは
保育所、幼稚園などに入所を希望しても、保育所の定員の都合などで入所することが出来ない児童のこと。
待機児童は主に都市部に多い
働く場所が多く、住みやすいなどの理由から都市部に人口が集中しており、子どもの数も多い。しかし、都市部では土地の確保が難しく保育施設を作りにくい環境である。そのため、待機児童は都市部に集中している。
平成29年各都道府県ごとの待機児童数
都道府県 | 待機児童数 |
北海道 | 39人 |
青森県 | 0人 |
岩手県 | 178人 |
宮城県 | 558人 |
秋田県 | 41人 |
山形県 | 67人 |
福島県 | 527人 |
茨城県 | 516人 |
栃木県 | 131人 |
群馬県 | 2人 |
埼玉県 | 1,151人 |
千葉県 | 1,658人 |
東京都 | 8,479人 |
神奈川県 | 742人 |
新潟県 | 0人 |
富山県 | 0人 |
石川県 | 0人 |
福井県 | 0人 |
山梨県 | 0人 |
長野県 | 0人 |
岐阜県 | 2人 |
静岡県 | 248人 |
愛知県 | 185人 |
三重県 | 100人 |
滋賀県 | 356人 |
京都府 | 227人 |
大阪府 | 598人 |
兵庫県 | 943人 |
奈良県 | 124人 |
和歌山県 | 6人 |
鳥取県 | 0人 |
島根県 | 119人 |
岡山県 | 13人 |
広島県 | 93人 |
山口県 | 100人 |
徳島県 | 94人 |
香川県 | 3人 |
愛媛県 | 9人 |
高知県 | 0人 |
福岡県 | 1,149人 |
佐賀県 | 34人 |
長崎県 | 114人 |
熊本県 | 275人 |
大分県 | 42人 |
宮崎県 | 8人 |
鹿児島県 | 102人 |
沖縄県 | 2,047人 |
待機児童が増えている原因とは
保育士が足りていない
保育士は保護者との関わり方が難しく、労働時間が長く業務の内容が多い。業務内容のわりに、保育士の平均年収は323万円で、全職種の平均年収である422万と比べ低い。そのため、仕事が続かず辞めてしまう人が多く保育士が不足している。政府では、保育士不足解消のため、保育士の給与引き上げを検討している。
これは、教育の無償化や、保育園の施設などの整備、介護職員の処遇改善が柱で、保育士の待遇改善はこれまで入っていなかった。しかし、「保育園や幼稚園を無償化するより待機児童対策を先にするべきだ」という批判が強いことから、保育士の給与の引き上げも盛り込むことにしたもの。
保育の現場では保育士の給与水準が低いことなどから人手不足が深刻で、待機児童解消のひとつの障害となっていた。
働く女性が増えている
働く女性が増えており、保育所や幼稚園に子供を預けたい母親が増えている。そのため、限られた定員の保育施設に入りきれず、待機児童が増えてしまう。
国が待機児童の定義を変更 実際は減少していない
2001年、国が待機児童の定義を変えた。「認可外保育施設」を一時的に利用している児童については待機児童から除いてよいとした。そのため、待機児童数は減少したように見えるが、旧定義で見ると減少していない。
(参考:待機児童問題「見える化」プロジェクト:朝日新聞デジタル)
幼保一元化は停滞 一元化は待機児童対策になるか?
70年前、戦後間もなく開かれた国会で保育所と幼稚園を一元化する必要があると指摘された。しかし、70年経っても幼保一元化の取り組みは進まず停滞している。
幼保一元化とは
保育所と幼稚園の垣根をなくし、所管、対象年齢、保育時間などを一元化すること。保育所と幼稚園を一元化することで、就学前の教育水準を均一にすることが出来る。
幼保一元化のメリットは?
幼稚園でも時間外保育を受けることができる
幼稚園は保育時間が短いが、保育所のように長時間保育を受けることができる。母親が働いている場合、働く時間を制限しなくてよくなる。
「共働き」の条件がなくなる
保育園は「両親が共働きである」必要があったが、幼稚園にはその条件がないため共働きでない家庭の子供も入園することができる。
就学前に平等な教育をすることができる
保育所と幼稚園では待遇に差があるため、保育園では幼稚園のような教育ができない。幼保一元化することで、子供の教育の差をなくすことができる。
幼保一元化のデメリット
保育士と幼稚園教諭では資格が異なる
保育所と幼稚園では、働く人の資格が異なる。保育士資格と幼稚園教諭の資格を両方取得していないといけないため、人材の確保が難しくなる。
国からの補助が少なくなる
幼保一元化することで保育所ではなくなってしまうため、現在保育所に出ている国からの補助が減額になってしまう可能性がある。
待機児童解消のためのこども園
内閣府は、2006年からは保育所と幼稚園の良さを併せ持った施設としてこども園の認定を行っている。認定基準を満たす施設であれば都道府県等から認定を受けることができる。しかし、待機児童解消を目的に導入された制度ではあるが、移行する施設は少なく現状待機児童の解消になっていない。また、幼児教育無償化より「義務教育化」するべきという声も上がっている。