霞が関から見た永田町

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衆院選に向けて独自色を打ち出せる政党とは?

 

 

 

選挙が終われば政局−−。選挙が終わるたびに幾度となく見せられてきた光景だ。自民党と公明党の連立政権が長期にわたる中、野党は頼りなく、離合集散を繰り返し今日に至る。かつて政権を託された「民主党」の姿はもはやなくなり、第三極との合流を経て民進党へ。希望の党との合流話も虚しく、立憲民主党を第1党として、国民民主党、無所属の会など、かつてこの国を包んだ二大政党政治誕生の期待感は、存在もしなかった腹案とともにあっという間にしぼんでいった。

 

バラバラになった永田町の面々は、それぞれの政党に籍を置きながらも、今なお「もっと大きな塊に」とかつての栄華よ再びとの思いを胸の奥に秘めつつ、国権の最高機関である議場の椅子に腰を下ろしているのかもしれない。

 

 

キャスティングボートの自在な使い方


参院選の結果を見ればわかるように、与党の自民党と公明党は一定の議席数を確保した一方で、野党第一党の立憲民主党は躍進できず、国民民主党も現状維持、日本維新の会も大きな果実を手に入れるには至らなかった。れいわ新選組とNHKから国民を守る党の議席獲得が話題になった程度か。

 

そんな中、先日も書いたように、極端な左派勢力とは一線を画す健全な野党としての矜持を見せる国民民主党が改憲勢力としてのキャスティングボートを握ることとなった。これを契機に参院で日本維新の会と統一会派を組むという報道があったわけだが、これには確かに賛否はある。

 

また新たに国民民主党が立憲民主党に統一会派を要請するとの報道も出てきた。今度は逆にキャスティングボートを握っている国民民主党が野党勢力へも影響力を与えることで存在感を放つ余地もあるかもしれない。

 

ここで立憲民主党が国民民主党を果たして受け入れるのかどうか。むしろ社民党や共産党、れいわ新選組と組んで行きたいというのが本音ではあろう。発展的な健全野党の構築を目指す国民民主党に対して、立憲民主党の腹づもりは左派勢力の結集だ。

 

しかし、左派勢力の中心は立憲かられいわへと移りつつあり、じわりじわりとポピュリズムへの道を歩み始めている。国民民主党が統一会派でその存在感を放てば、枝野代表や辻本副代表が思い描く左派勢力の結集もそう上手くは進むまい。

むしろ良識ある立憲民主党議員が、開かれた憲法論議を恐れない国民民主党と歩調を合わせる方向へ持っていくことも可能だろう。

 

 

立憲の得票数の落ち込みに見る既存野党への期待値の低さ


今、有権者に短期的な政権交代を求める機運はないと言っていい。参院選の投票率の低さは、投票しないということによる消極的な政権支持の表れでもある。今回の参院選で国民民主党は比例区で348万票の得票を得た。得票率は7.0%。2017年の衆院選で希望の党が獲得した967万票からは大きく後退したが、これは仕方ない。一方、立憲民主党はこの参院選で791万票を獲得したが、2017年の衆院選では1108万票を獲得していた。3割近い得票数の減少は興味深い。減少分は立憲の不人気と、れいわが獲得した228万票の数字に表れていると言えるだろう。

 

行きすぎた改憲は多くの国民が望むものではないだろうが、広く憲法論議を行うことまでも封じる訳ではない。国民民主党を構成する議員には、改憲容認派もいれば、いわゆる護憲派もいる。これは政権与党の座につく自民党内も同じで、自民党内の改憲への温度差も幅は広い。

 

どのような枠組みを作ろうとも、国民民主党としての独自色をしっかりと打ち出していくことが重要だ。この苦境をぐっとこらえて、健全な野党としてのポジションを確かなものにしてほしい。早ければ年内とも予想される総選挙も決して簡単な道のりではないだろうが、これまでに姿を消していったかつての政党は、一足飛びに勢力拡大を望んで意見をまとめきれずに分裂していった過去がある。

 

どのような立ち位置をとるにしても、同じ轍を踏むことなくしっかりと地に足のついた政党を育てられるかは、民進党分裂の困難から国民民主党に集った良識ある面々にかかっている。

 

玉木代表が参院選後に繰り返し述べていた、地方での体験や若い世代との交流、特にしっかりと与党と議論をする姿勢を示した野党としての存在感は多くの国民が待ち望んでいる姿だろう。道のりは長いが、確かな一歩を踏み出していこうとする国民民主党と玉木代表のその選択に間違いはない。