霞が関から見た永田町

霞が関と永田町に関係する情報を、霞が関の視点で収集して発信しています。

MENU

組織防衛で官僚は出世する

 

 

 

7月は霞ヶ関の人事異動の時期

 

 17日付けで、財務省の広報室長に城田郁子氏が就任した。このポストに女性が起用されるのは初めてのことである。


 女性官僚も増えてはいるが、この事例に見られるように、これまでに女性が就いたことのないポストが各省庁には存在している。今回の人事異動は、福田前事務次官がセクハラ問題で辞職したこととも無関係ではなそうだが、まずは女性が就いたことのない役職がひとつ減ったという意味では歓迎される事態と言えるだろう。

 

 

この7月は霞ヶ関の人事異動の時期。国会が1月から6月まで開かれていることから、この時期に人事異動が行われる。何らかの事情でズレてしまった人事の帳尻を合わせることも同時に行われる。


 財務省は、福田前事務次官がセクハラ問題に関わり辞職したことに伴い、事務次官が空席という事態が続いていたが、今回の人事異動により、それも解消されることになるのだ。

 

 

改竄の責任を問われた岡本氏が事務次官に

 

 福田氏の後任の事務次官には、岡本薫明主計局長が充てられる方針であると、報道各社が報じている。

 

www.jiji.com

 

 

 岡本氏は将来の事務次官候補として以前から取沙汰されていた人物ではあるので、今回の事務次官への昇格も特段驚くようなことではない。選ばれるべくして選ばれた事務次官であると言えるだろう。

 

 ただ、岡本氏が主計局長の前の官房長のときに、森友学園への国有地売却に関する決裁文書の改竄が行われていた。官房長として国会対応を担い、国会でも答弁している。官房長は文書管理の責任も負っており、決裁文書の改竄に関わり処分があった際には、厳重注意の処分を岡本氏は受けている。

 

 そのような背景もあることから、福田氏の後任には、改竄には関わっていないとされる星野次彦主税局長が充てられる、あるいは浅川雅嗣財務官で最終調整に入ったという報道もあった。しかし、結局は本命視されていた岡本氏が順当にそのポストに就くこととなった。

 

www.jiji.com

 

 

国税庁長官には藤井氏

 

 もう一つ空席であった財務省の事実上のナンバー2のポストである国税庁長官。

 

 森友問題で引責辞任した佐川宣寿前国税庁長官の後任には、藤井健志国税庁次長が充てられることになるとも報じられている。

 

 ここ最近は、理財局長から国税庁長官へというルートであり、佐川氏やその前の迫田氏はそのルートでの国税庁長官就任であったが、今回は理財局長からではなく、国税庁の内部から昇進させるかたちを採った。

 

 藤井氏は、現在財務省の官房長であり事務次官の代理をしている矢野康治氏と同期。同じく同期で総括審議官を務める可部哲生氏、この3人が事務次官の座を争っているとされていた。今年6月の段階では、星野次彦主税局長が事務次官に昇格し、空いた主税局長に藤井氏が充てられるという報道もあったため、そうなれば、3名による事務次官への競争が続くことになったのだが、結局、星野事務次官とはならず、藤井氏も財務省本体に戻ることなく国税庁長官へ昇格することになった。この結果、藤井氏の事務次官への道はかなり険しくなったと言えるだろう。

 

 

結局、財務省の「順当な」人事に戻った

 

 この間、矢野氏は官房長として決裁文書の改竄や福田前次官のセクハラ問題に関して対応にあたってきたが、その姿勢は決して褒められるものではなかった。まだ矢野氏の処遇は明らかではないが、多くの場合、官房長の将来の事務次官の多くが経験するポストである。同期のライバルである藤井氏が事務次官レースからはほぼ脱落したとなると、矢野氏は事務次官レースで大きなアドバンテージを得ることになるのではないだろうか。

 

 ここで注目されるのが、太田充理財局長の処遇だ。最近の財務省の人事の流れであれば、理財局長の次は国税庁長官であった。しかし、国税庁長官に藤井氏が充てられることになったため、その人事はなくなり、太田氏は岡本氏の昇格で空くことになる主計局長に就くと報じられている。

 

mainichi.jp

 

 太田氏も将来の事務次官候補の一人として以前から報じられてきた。主計局長はまさに次に事務次官を見据えるポストであり、順当あれば、岡本氏の次の事務次官が太田氏ということになる。

 

 つまり、こういうことだ。

 

 決裁文書の改竄について責任があったはずの岡本氏が順当に事務次官に昇格する。決裁文書の改竄が発覚した後に対応にあたり、財務省の組織防衛にあたった太田氏や矢野氏も岡本氏以降の事務次官の座を見据えたポストを確保する。

 

 国民のためではなく、財務省のために働いた人物が結果として偉くなっていくという構造だ。

 

 福田氏や佐川氏は辞職することで、財務省から去っていくことになったのが、その後に続く官僚は結局のところ問題への責任はとらず、問題に関与していたとしても、ときには問題をうやむやにしようとすることで自身の出世を実現している。

 

 そういう人事を断行するというのが、現在の安倍政権であるということでもある。結局、膿なんて解消されていない。そういうことが確認出来る、この7月の財務省の人事異動になりそうだ。