霞が関から見た永田町

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深センをベンチマークに、テクノロジー・ファーストを全面に打ち出せ

 

 

 

国民民主党のウェブサイトには「基本政策の概要」として政策が羅列されている。柱は2つあって、1つは「子育て、仕事、人生を楽しめる共生社会のために」。もう1つは「豊かで安全で持続可能な未来のために」、である。その中には、次世代につながる農業、原子力エネルギーに依存しない社会、地域主権改革を進め、自立した活力ある地域、世界水準の技術立国とある。

 

 

無党派層の関心を集める要素はもっている

 

実はそのいずれもすべて、鍵を握っているのはテクノロジーだ。IoT、スマートグリッド、ビッグデータ、5G、AI。国民民主党がどこまで気づいているのか、意識しているのかは分からないが、農業も地方分権もエネルギーも、それぞれが独立した事象ではなく、テクノロジーがあって実現する社会であって、同党が世界水準の技術立国をうたうのであれば、政策体系としてテクノロジーをベースに個別の政策を打ち出すと有権者には分かりやすいのではないだろうか。

 

そして、それは、あらゆる政党がリーチできていない、都市部の無党派層、ペルソナ的にいえば、東京や大阪、名古屋、福岡といった経済圏の中心で働く20代〜50代のビジネスパーソンに刺さる。政策の見せ方にも今後は工夫してほしいところだ。

 

 

世界最先端の情報が集まる深セン

 

今、世界を見渡せば、テクノロジーをベースに政策を打ち出し、都市ブランドを構築しようとする動きがそこかしこに見受けられる。その代表的な都市が中国・深センだ。深センは数年前から急速にエンジニア界隈で話題を集めている都市だ。従来の港湾都市・深センから技術開発で成長していくイノベーション都市への脱皮を図っているからにほかならない。

 

深センのこうした変化をエンジニアは肌で感じ取っているのだろう、筆者の知り合いでもドローンの技術動向は深センに行かなければ得られないという者もいれば、リモートワークを利用して、1ヶ月を東京と深センで半々を過ごすというワークスタイルに切り替えたエンジニアもいる。

 

ドローンの世界シェア7割のDJI、スマホの製造・販売を手がけるファーウェイやZTE、WeChatで有名なテンセント、電気自動車のBYDなど、名だたる企業が本社を構える。いずれも深センが創業の地だ。テンセントに至っては今や、その時価総額は世界第6位で、日本だとトヨタの42位が最高位であることを考えると、深センに集積する企業、そこで飛び交う情報は質、量とも日本をはるかに凌駕していることが明らかだ。先日、日経新聞も「紅いシリコンバレー」と特集記事を掲載したことで、一般のビジネスマンにも知られるようになってきた。

 

 

テクノロジーファーストであっという間に変貌を遂げた深セン

 

深センは元々、港湾都市だ。もちろん、今でも貨物量は世界のトップ10に入っているが、日々、シンガポールや香港、上海、釜山、高雄などとしのぎを削っている。港湾というインフラだけでは都市の成長を支えられないと判断したのだろう、気づけば、深センはITを中心にしたテクノロジー企業が集積する都市へと変貌を遂げつつある。

 

彼らがテクノロジーによって社会を変えようとしてるのは明らかだ。分かりやすいのが都市計画と電気自動車、自動運転だ。今、すでに深センでは自動運転のバスが走行している。今後、すべてのバスを自動運転に切り替える予定で、そのタイミングに合わせてバスはすべてのBYDに切り替わる予定だという。

 

ここにテクノロジーによって産業を大胆に変えていく政策が見て取れる。当然、自動運転に切り替えるということは都市計画そのものを見直すことにも繋がる。テクノロジーに合わせる形で社会をフィットさせることで、政策をドライブしていく姿勢が明らかだ。

 

 

国民民主党の政策は筋がいい

 

深センは非常にわかりやすい事例だが、今、テクノロジーが社会を大きく変えようとしている。高齢化、少子化、都市のスポンジ化と社会課題が膨れ上がっていく中で、テクノロジーが切り開く未来は確実に存在する。そういう意味で、国民民主党の政策は筋がいいと言っていいだろう。課題は冒頭に触れたように、同党が掲げる「世界最高水準の技術立国」の旗の下に、その他の政策を有機的に繋げられるかどうか、である。それは国民民主党の戦略にほかならない。