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相次ぐ高齢者の自動車事故、政策でイノベーティブに解決へ!

 

 

 

平成が終わりを告げるカウントダウンが始まっていた4月19日。悲劇は起きた。87歳の高齢者が自家用車を運転中、池袋の真ん中で8人の通行者を引き倒し、自転車で横断歩道を渡ろうとしていた母子ははねられ、死亡した。

 

高齢者による自動車事故は引きもきらない。今年2月の警察庁の発表によると、2018年に発生した75歳以上の高齢者の運転の死亡事故は460件と前年比42%増。過去10年間で3番目の多さだった。死亡事故全体に占める割合は1.9%増の14.8%で、統計を取りはじめた1990年以降、過去最悪の数字となった。

 

 

4人に1人が75歳以上の時代がやってくる

 

まだ、ある。「平成28年交通安全白書」(内閣府)では、75歳以上の高齢者ドライバーによる死亡事故は75歳未満に比べて、事故発生件数が人口当たりで比較すると2倍以上になるという。

 

事故の要因は、ハンドルの不適切な操作が最も多く、前方不注意、安全不確認がこれに続く。視力が弱まる、周辺情報を適切に判断できなくなる、反射神経が鈍り、とっさの対応ができなくなるなど、明らかに高齢化に伴う、思考力、判断力、体力の衰えが事故につながっている。今回の池袋の事故も、こうした調査結果を裏付けるものとなってしまった。

 

これまで道交法の改正によって、運転免許証更新時の検査で、検査結果では高齢者は免許が取り消されるようになったり、あるいは自主返納の仕組みなども整ってきたが、まだルールは十分とはいえないのが実情だ。

 

 

高齢者が安心して移動できる社会をデザインしよう

 

これだけ事故が増えてくると、やはり、社会としてもより具体的な対応策を考えていく必要がある。そのリーダーシップはやはり、政治だろう。

 

憲法を持ち出してしまえば、高齢者にも移動の自由はあるものの、これだけ事故が多発し、しかも若い人が巻き添えになることを考えれば、その社会的損失は計り知れない。やはり、一歩、二歩踏み込んだ高齢者ドライバー対策を考える時が来ている。

 

75歳以上の高齢者は今後、急速に増えていき、少し先になるが、2065年には約4人に1人は75歳以上という時代がやってくる。そろそろ、そうした社会の変化、日本は世界でも例を見ない高齢化社会に突入しているという、はっきりとした問題意識の上に、高齢者ドライバー問題を考えていく必要があるだろう。

 

 

小手先の対応策では未来を見据えたビジョンを

 

この問題は単に免許証の発行を止めればいい、という問題ではない。例えば、地方都市へ行くと、交通の足がなくて、仕方なく車を運転せざるを得ないという事情もあるだろう。

 

いくつかのオプションがありそうだ。東京や大阪など都市部においては公共交通をより充実させ、合わせて高齢者の免許証は返上してもらう。一方で地方都市の場合は、現状の制度を維持するか、あるいは高齢者の免許証を返上してもらう代わりに、交通の便のよいエリアに引っ越してもらう、いわゆるコンパクトシティ化を推進するという方法もありそうだ。

 

 

MaaSとその先にある自動運転の世界

 

他にも一部の地域で始まっているようにタクシーの乗り合い制度を作っていったり、自動車への乗り合い制度を設けたり、そのプロセスの中でデジタル化を進めて、スマホ一つでタクシーなり、最寄りの自動車に立ち寄ってもらうという解決策もありそうだ。この辺はいわゆる、MaaS(mobile as a service)と言われる分野で、この分野で世界の最先端をいっているフィンランドで始まったサービス「Whim」が始まった背景には高齢者の移動の問題があったのはよく知られた話だ。

 

いずれにしても、高齢者ドライバーの問題は交通、住居、福祉など都市のあり方そのものをデザインし直すことになるだろう。そういう視点で、ぜひ、国会で政策論争を戦わせる政党が現れてほしいものである。