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さくらももこさんを追悼する --クールジャパンへの政府の取り組みは適切に--

 

 

 

さくらももこさんの訃報が飛び込む

 

 8月27日の夜、「ちびまる子ちゃん」などの原作者であり、各方面で活躍していた、漫画家のさくらももこさんの訃報が飛び込んできた。乳がんで8月15日には死去していたとのこと。これまで多くの人々を楽しませていただいたことに感謝するととともに、心よりご冥福をお祈り申し上げる。

 

 実は、同じ日、ニュースが流れる何時間か前に、「さくらももこ」という名前が一瞬、頭をよぎった。歌手のイルカさんがNHKの『ごごナマ おしゃべり日和』に出ていたからである。「そういえば、イルカさんとさくらももこさんは声が似ていたな」と。

 

 かつて、『さくらももこのオールナイトニッポン』を聞いていたので、さくらももこさんの声とアニメに出てくるちびまる子ちゃん(声優はTARAKOさん)のそれがそっくりであることを知っていた。そして、歌手のイルカさんも似たような声である。実際に、『オールナイトニッポン』にこの3人が揃って出演し、同じような声で語り合うという企画も行われている。

 

 それにしても、さくらももこさんが53歳という若さで亡くなられたことは、今後ますます活躍が期待されていたこともあり、あまりにもショックで残念でならない。

 

 

世界で愛される日本のアニメ

 

 「ちびまる子ちゃん」については、中国や台湾では「櫻桃小丸子」という名前で知られてきた。YouTubeを見るとわかるが、台湾では実写版のドラマも放映されていたようだ。アジア諸国、中東諸国などで、さくらももこさんを追悼する声が上がっていたと聞く。「ちびまる子ちゃん」は60の国・地域で放送されていたとのこと。


 「ちびまる子ちゃん」に限らず、日本のアニメは世界各地で放送されたり、読まれたりして、愛されてきた。作品や作風によって、人気の度合いは地域によって異なるようだが。

 

 経済産業省の商務情報政策局コンテンツ産業課によると、映画・アニメ・TV番組・音楽・ゲーム等の国内コンテンツ市場規模は約12兆円の規模になる(出典:デジタルコンテンツ白書2017(一般財団法人デジタルコンテンツ協会))。


 また、海外のコンテンツ市場規模は今後アジアを中心に市場が拡大し、2022年には約81兆円となる見込みである(出典: Roland Berger 調査(2017))。


 さらに、海外の市場における日本由来コンテンツの売上シェアは約260億米ドルと海外市場規模全体の4.4%を占めており、そのシェアは分野ごとに異なり、マンガ、ゲーム、アニメ、キャラクターの順に大きくなっている(出典: Roland Berger 調査(2017))。

 

 アニメをきっかけに日本に関心を持ったという外国人の発言はよく聞くところである。実際に、アニメの「聖地」に出かける外国人も少なくない。日本人にアメリカ好きが多いのも、映画、音楽、コーラなどのソフトパワー、文化に憧れたからというのがほとんどではないか。アニメだけが日本の売りではないが、それでも日本のアニメが世界の人たちを魅了していることは喜ばしいことである。

 

 

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クールジャパンに名を借りた「税の無駄遣い」はチェックを

 

 アニメも含めて、日本の文化やサービスの魅力を海外の人たちにも伝えていくこと、実際に来日してもらって日本の文化などを体験してもらうことはどんどん促進すればよい。


 2010年6月18日、菅内閣が決定した「新成長戦略」において、「クールジャパンの海外展開」が盛り込まれた。このように、経済政策や成長戦略の視点もふまえ、政府が「クールジャパン」に取り組んでいくことは評価できる。

 

 ただ、「クールジャパン」というものは、楽しいイメージが先行して、表向きの印象がいいだけに、無意味な取り組みや税金の無駄遣いが行われる可能性が大きい。安倍内閣がやたら進めている「官民ファンド」なるものの運用を今一度チェックした方がいい。


会計検査院は今年の4月13日、「官民ファンドにおける業務運営の状況について」という報告を内閣に行っている。 この中で、経済産業省所管の「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」が17件、310億3,100万円の投資で44億5,900万円の損失(回収額等と支出額の差額)を出していたことも指摘されている。この機構については、出資額は693億円(政府586億円 / 民間107億円)である。そもそも国の出資比率は84.5%と異常に高くなっており、経済産業省としての責任は問われて当然である。

 

 

臨時国会に法案提出との報道

 

 『日本経済新聞』(8月24日付け朝刊)に、「クールジャパンに司令塔、自公、臨時国会へ法案提出」との記事が出ていた。「クールジャパン戦略推進会議」という政府の司令塔をつくることなどを柱とした「クールジャパン戦略推進法案」というものらしいが、まだ報道ベースなので、まともに論評する必要もないだろう。


 「クールジャパン」そのものはイメージがいいだけに、内容を厳しく精査しないままに野党も簡単に受け入れてしまうおそれがないとも言えなくはない。いずれにしても、以下の点は明確にすべきである。

 

・「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」が損失を出している件について、あらためてその原因と責任の所在を明らかにすること。同機構の改廃も含めた改善策を示すこと。


・日本の文化やサービスの魅力は、本来はクリエイターや民間の自助努力によって高められるべきものであり、軽々に政府が関与する問題ではない。政府と民間等の間の役割分担などについてきちんと精査を行うこと。


・単に「官邸に組織をつくる」「予算、税制の支援措置を行う」などのありきたりの法案となっていないかチェックする必要がある。法案を具体的に執行していくための裏付けを整理しておくこと。法案に書かないにしても、想定される予算措置、税の優遇措置はまとめておくこと。予算を投じた際の政策効果などについても明らかにすること。