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飾りではない埼玉県知事を選べるのか 

 

 

 

埼玉県知事選挙 始まる

 

 8日、任期満了にともなう埼玉県知事選が告示された。
 立候補者は5名、届け出順に以下のとおり。

 

 

 無所属で前参院議員の大野元裕氏(55)
 無所属で元高校教諭の武田信弘氏(65)
 NHKから国民を守る党公認で医師の浜田聡氏(42)
 無所属で元会社員の桜井志津江氏(63)
 無所属でスポーツライターの青島健太氏(61)=自民、公明推薦=

 

www.sankei.com

 

 

 直前になって立候補を予定していた行田邦子前参議院議員が体調不良を理由に不出馬を決めたため、選挙戦の構図は大きく変化した。

 

 

与野党対決の構図

 

 行田氏は2007年に民主党公認で参議院議員となり、その後、2013年の参議院議員選挙ではみんなの党から出馬して当選。希望の党を経て、今回の参議院議員選挙には出馬せず、県知事選挙に備えていた。その経歴からも分かるように、野党支持層からの得票が見込まれる候補であった。
 野党からは、国民民主党所属であった大野元裕前参議院議員も出馬を予定していたことから、野党支持者の票が割れることになると目されていた。
 対して、自民党と公明党が推薦したのがスポーツライターの青島健太氏。野党有力候補者2名に対して、与党が推す候補者が1名となれば、当然、与党が推す候補者が有利となる。このことから、事前の予想では青島氏が優勢とされてきた。しかし、行田氏が不出馬となると、そう簡単ではなくなる。埼玉県を舞台に、与野党対決の構図が出来上がり、与党が推す青島氏と野党が推す大野氏の一騎打ちが繰り広げられることになったのだ。

 

 

上田県政の維持か刷新か

 

 埼玉県は、上田清司氏が4期16年、ここまで知事を務めてきた。計4回あった上田氏の当選した選挙のうち2回(2007年・2011年)は自民党も支援にまわっていた程で、盤石の体制が築かれてきたと言って良い。上田氏は現在71歳であり、今回出馬していたら5期目に挑戦ということで、自身の1期目に定めた多選自粛条例の存在とも相まって、高齢批判や多選批判に晒されていたことは間違いなく、ここで身を引くというのは妥当な判断であっただろう。
 この上田知事が事実上の後継候補としたのが大野氏であり、選挙戦が始まっても大野氏の応援演説を熱心に行っている。

 

www.tokyo-np.co.jp

 

 

 4期16年の上田県政。その評価は色々とあるだろうが、少なくとも大きな失政がなかったからこその連続当選であったわけであり、その基調となる部分は継承されていくことが望ましいと言えるだろう。国会議員としての経験を積んでいる大野氏であれば、その継承も問題はなさそうだ。実際に、大野氏は「上田県政の継承と発展」を柱とした政策集を掲げている。

 

大野もとひろさんを先頭に日本一暮らしやすい埼玉を実現する政 策 集 2 0 1 9

 

 

 もちろん、上田県政のすべてを継承すべきかと言えば、そうではないだろう。特に埼玉県は少子高齢化がこれから急激に進行する。その対策ということであれば、上田県政を刷新するような取り組みも求められる。
 この点では、行政手腕はまったくもって未知数であるが、何か新しいことが出来るかもしれないという期待を青島氏は抱かせてくれそうだ。実際、その政策集を見ても、新しさを前面に出すよう苦心した跡がうかがえる。

 

 

青島けんたさんと共に『埼玉県民くらし満足度ナンバーワン宣言。』

 

 

 ただ、青島氏の政策集には、「本人らしさ」が見えてこないのが気になるところ。おそらく、関係者が主に作成し、それを本人が了承したというかたちなのだと思うが、「神輿は軽いほど良い」というのでは困る。

 

 

知事としての手腕はどちらが発揮出来そうか

 

 大野氏と青島氏。両者の政策集を見ても、いずれも網羅的であり、どちらが知事になっても政策上の相違はそう大きくなさそうだ。そうなると、最後は、その手腕がいずれの方が優れているのか、ということが重要になる。
 この点については、少なくとも大野氏は参議院議員を務めており、なおかつ内閣府大臣政務官や防衛大臣政務官としての経験を積んでいるため、青島氏に対して一日の長がありそうだ。
 行政職員や議員の経験がなければ知事が務まらないというわけではないが、知名度があるだけ知事になった人物が特に仕事をすることなく任期を終えた例を私たちは既に目にしている。この点、青島氏は軽い神輿ではないことを、この選挙期間中に示していくことが求められるだろう。
 与野党一騎打ちの構図になり、大野氏と青島氏は様々な面で比較されることになる。その際には、両者の知事としての手腕の有無を有権者としては見極めたいところだ。