霞が関から見た永田町

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働き方改革の本質は生産性の向上にあり 生産性の向上の先には賃金アップ

 

 

 

2019年4月から「働き方改革関連法」の本格施行が始まった。「働き方改革」というキーワードを入力して、検索してみた。「残業減、現場にしわ寄せ」(5/24・神戸新聞)、「時短のはずが、、、働き方改革」(5/15・読売新聞)、「働き方改革で注目集まるテレワーク しかし、経験者は1割足らず」(5/21・ITmedia)、「昼休み返上、増加中働き方改革しわ寄せか」(5/12・中日新聞)。

 

 

残業代が減って困るというマインドセットそのものが問題

 

こうして新聞記事のタイトルを見ると、あらためてげんなりするが、これが日本の現実なのだろう。4月に施行された関連法は残業時間の上限を定めるなど分かりやすい部分が報道されたこともあり、各企業とも法律への対応に汲々としているものと思われる。残業時間のキャップがあるため、その分を「昼休みを削る」などの本末転倒な対応をする企業が現れるため、上記のような新聞記事が出てくるのだ。

 

働き方改革において、本質的に重要なことは残業時間を減らすことではない。それは目的ではなく、本来結果に過ぎない。つまり一人ひとりの労働生産性を向上させて、従来1時間かかっていた仕事を40分で済むようにしましょう、30分で済むようにしましょう、という話なのである。

 

生産性が1.5倍あるいは2倍に向上すれば、当然、労働時間は減るため、残業は自ずと減るのである。働き方を変えることなく、一人ひとりの生産性を向上させずに、法律に対応しようとするから、昼休みにしわ寄せがいったり、現場にしわ寄せがいくのである。

 

日本の就労環境は長らく、残業代で帳尻を合わせてきた。基本給は低くても、残業代で1ヶ月のお給料の総額を上げてきた。これは経営陣にとってもメリットがある。基本給を抑えることは、健康保険や将来の退職金の計算にも大きく影響するからだ。

 

 

情報化社会への移行すらできてない日本

 

源泉徴収がすっかり社会に根付いている日本にあって、労働者にとって毎月の手取りが基本給ベースなのか、それとも残業代が占める割合が高いのかはほとんど意識されないと言っていいだろう。こうした現状だから、残業時間の減少は月の手取りの減少につながるため、現場も働き方改革に反対になりやすい。

 

ここに日本が直面する、大きな問題がある。実は日本人の労働生産性は世界的に見ると、極めて低い。信じられないかもしれないが、スペインやイタリアに比べても低い状況にある。

 

21世紀に入り、世界は工業化社会から情報化社会へ移行した。社会構造の変化に対応する過程で、各国の生産性は向上したのだが、日本は残念ながら、未だ工業化社会を前提にした社会構造になっている。

 

 

生産性の向上の先には賃金アップ

 

残業に対する考え方、大学に対する考え方、就職に対する考え方、どこを切り取っても工業化社会を前提にした設計になっているため、今、様々な歪みが起きているのである。一方で、日本人の労働の質は世界的にも評価が高く、世界4位。つまり、生産性を向上させることができれば、日本はもうワンチャンスあるのだ。

 

つまり働き方改革は残業を減らすという表層的な話ではなく、生産性をどう高められるかこそがポイントになる。そして重要なのは、それは残業代が減って困るという話ではないのだ。一人あたりの生産性が上がれば、それは企業の業績に反映されていくため、基本給そのものが上がっていく。結果、残業時間は減っても、毎月の手取りは減らない、もしくは上がっていく。

 

これは決して夢物語ではなく、世界各国がこの20年の間に証明してきたことだ。日本だけが遅れを取っている。政権与党がこの世界観を説明できていない現状を鑑みれば、ぜひ、野党こそ、来るべき未来を展望し、国民に夢と希望を語ってほしいものだ。