霞が関から見た永田町

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受動喫煙を世界標準レベルに、問われる野党の戦い方

 

1月22日からスタートした通常国会。この国会で提出されるとされている「健康増進法改正案」は野党が存在感を発揮できると、一つの舞台となるに違いない。同法改正の肝は、受動喫煙の防止だ。

 

 

 

 

たばこを吸わなくなった国民

 

受動喫煙の防止ほど、国民の実態と、政権与党の対策にかい離が見られる政策はない。厚生労働省が公開している、日本専売公社・日本たばこ産業株式会社の「2017年全国たばこ喫煙者率調査」によると、2017年の喫煙率は男性で28%、女性で9%となっており、1970年代の喫煙率がそれぞれ82%、16%だったことを思うと、覚醒の感がある。実態として、ほとんどの国民はたばこを吸わなくなっていると言っていいだろう。

 

しかも、この調査の母数は法律上、喫煙が認められている年齢層に限っているため、母数に子どもたちの数を加えれば、社会におけるたばこを吸っている人は少数であることは一目瞭然だ。

 

 

世界最低レベルの日本

 

一般にはあまり知られていないが、日本は「たばこ規制枠組条約(通称、FCTC)」を締結しており、日本はWHOから受動喫煙対策が「世界最低レベル」と指摘されているほどである。また、2020年に日本はオリンピックを控えているわけだが、国際オリンピック委員会は「たばこのない五輪」を求めている。

 

まだ、ある。厚生労働省の発表によると、たばこが原因でがんや脳卒中、心筋梗塞などにかかった人は2014年で100万人以上、その医療費は1.5兆円にものぼる。そのうち、受動喫煙により発生した病気に対する医療費は約3200億円と推計されている。もはや、たばこによる経済的損失は計り知れないことは明白だ。

 

 

禁煙に踏み込んだ小池都知事

 

さすがにオリンピックのメイン会場となる東京都は2017年に「子どもを受動喫煙から守る条例」を可決し、これから始まる都議会では罰則付きの「屋内禁煙条例」が上程される予定となっている。2010年に早々と禁煙条例を制定した神奈川県からすると遅きに失したと思われるが、それでも2020年にオリンピックが東京で開催されることを思えば、ギリギリのタイミングとはいえ、東京都もやっと決断した格好だ。

 

これだけ、たばこを巡る世論は厳しくなっていながら、その世論から最も遠いところにあるのが永田町の政治家である。特に自民党はひどい。両院議員総会が開かれる会場は実質、喫煙可能な状態にあるという。この実態を報道したのが2017年11月のBUZZFEEDニュースだった。衆議院、参議院では基本的には喫煙は決められた場所でしか認められていないが、「政党の控え室」は例外となっているという。自民党の両院議員総会が開かれる場所がまさに、この「政党の控え室」に当たり、非喫煙者には相当厳しい、受動喫煙環境のようだ。

 

 

変われない与党・自民党

 

WHOから「世界最低」と指摘され、国際オリンピック委員会からは「たばこのない五輪」が求められ、実態としても国民レベルでは喫煙者の割合が30%を切っている状況にあっても、法律を決める側、それもその行政権を担当とする与党の意識が上記の通りなのだ。受動喫煙防止が遅々として進まないのもむべなるかな、である。

 

実際、法案が出てこないことには改正案がどのようになっているか分からないが、昨年11月時点では厚生労働省は自民党に配慮した、言ってみれば、当初案から後退した改正案を示したという。具体的には店舗面積が150平米以下の飲食店では喫煙を認めるというものだ。厚生労働省の当初案では30平米以下が基準だったことを考えると、大幅な緩和と言っていいだろう。

 

 

世界標準に向け野党が果たすリーダーシップ

 

果たしてこれで本当に世界が認める水準になるのだろうか。日本の政治が世界と向き合えるか否かが問われている局面だ。

 

この状況下にあって、野党が果たす役割は大きい。先に述べた両院議員総会を挙げるまでもなく、世論から大きく乖離した自民党に、受動喫煙を防止し、その水準を世界レベルに引き上げるだけの意欲はあるとは言えない。野党にこそ、このテーマは正々堂々と世論に訴えることができるだろう。

 

大切なことは政局にしないことである。世間が望んでいる、当たり前のことを堂々と訴えることだ。日本を見渡せば、神奈川県はかなり早い段階、2010年の時点で受動喫煙禁止条例を定めた。公共施設は原則禁煙、飲食店やホテル、カラオケボックスなどは禁煙と分煙を選択、ただし100平米以下の施設については努力義務とした。受動喫煙禁止条例の制定に当たっては相当激しい議論があったが、当時の神奈川県知事・松沢氏(現・参議院議員)の強いリーダーシップの下、この条例を可決した経緯がある。

 

この条例によって神奈川県は大きく変わった。実際、横浜や川崎など神奈川県下の都市から東京に来ると、どの飲食店もたばこ臭くてかなわないと感じるほどだ。

 

世間が望んでいるのに、政権与党がやろうとしない。こんなテーマほど野党にとって取り組みやすいものはない。与党を批判するだけでなく、野党して喫煙環境のあり方、受動喫煙のあり方を政策として訴えれば、国民はついていくだろう。政局ではなく政策。その姿勢を貫けるか、野党が問われている。