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大阪万博とIR、新しい観光立国を示せるか

 

 

 

11月24日未明、パリで開かれた博覧会国際事務局(BIE)の総会で、2025年の大阪万博開催が決まった。2025年の万博開催をめぐっては、アゼルバイジャンの首都バクーと、ロシアのエカテリンブルグと争い、大阪は1回目の投票で最多の85票を集めた。その後の決戦投票では過半数の92票を勝ち取り、開催が決定した。

 

万博の開催期間は2025年5月3日〜11月3日までの185日、期間中に2800万人の来場者を見込んでいる。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、大阪・夢洲が万博会場となる。

 

 

2025年は今と違う日本がそこにある


今から6年半後の2025年5月、日本はどんな社会になっているだろうか。よく言われるのが2025年問題だ。良くも悪くも日本経済を牽引してきた、最大の消費者だった、団塊の世代が後期高齢者になるのが2025年。日本人の4人に1人が75歳以上という、世界でも類を見ない高齢化社会に突入している。

 

単純な人口だけで見ても、現在と同水準の人口を維持できるのは東京や愛知、沖縄など一部で、あとは軒並み人口が減っていく。東北地方や中国・四国地方の大半の県は1割も人口が減ると言われている。

 

そういう中での大阪万博。しかも掲げるテーマが「いのち輝く未来社会のデザイン」である。これまでの大量生産大量消費型社会の、延長線上で万博を企画したら、きっと失敗するだろう。この万博で問われているのは、人口縮退期における新しい社会の豊かさを提示できるか否か、である。

 

 

新しい社会像を万博は示せるか


まだ誰も経験したことのない社会の変化に対して、テクノロジーはどのように貢献できるのか、それによって今、私たちが漠と抱えている未来に対する不安を払拭し、未来へ希望を見せられるか、大仰にいえば、大阪万博はそんな使命を帯びたイベントと言えよう。政治の役割はビジョンを示すことだとすれば、これほど政治家の力量が問われるイベントもないだろう。

 

そして、周知の通りだが、大阪万博はその先のIRとセットだ。来年春には第一回目のIR候補地が決まると言われているが、大阪はその筆頭候補で、むしろ、大阪へのIR誘致は既定路線と言ってもいいだろう。今回の万博決定は大阪IRを確実なものにしたと言っていい。

 

IR自体は賛成派、反対派色々あるが、ここでは合理的に大阪IRの可能性を述べておきたい。身も蓋もない言い方をすれば、IRはお金を持っている外国人観光客に、いかにお金を使ってもらうかが全てだ。ギャンブル依存症など騒がれているものの、国民一人当たりのGDPが世界で25位と決して豊かな国とは言えなくなった日本人はIRの客とは言えない。したがってギャンブル依存症は杞憂に終わるだろうと思う。

 

 

IRではもっと地の利のある大阪


さて、お金を持っている外国人観光客をあてにしたIRという意味で大阪には地の利がある。それは京都、奈良、神戸と近隣に著名な観光地を有していることにある。特に京都・奈良は海外からやってくる観光客がイメージする「ザ・ジャパン」そのものだ。

 

万博会場に隣接する場所に整備されるといわれているIR。ここを拠点に大阪、京都、奈良の滞在型観光を実現できるか、ここも腕の見せ所だろう。IRを運営する、いわゆるオペレーターは基本的にはその中でのアクティビティをどう充実させるか、それしか考えないし、それが彼らのビジネスだ。したがって、大阪府・大阪市を核といて、近隣自治体の観光広域圏を生み出せるか、その中でお互いがウィン・ウィンの絵を描けるか、が問われている。