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大臣に都合の悪い情報は迅速に共有されている ―野田総務大臣への情報漏洩から分かること―

 

 

 

野田大臣の情報公開請求漏洩問題が発覚

 

 自民党総裁選への出馬も取り沙汰されていた野田聖子総務大臣。情報公開請求漏洩問題で、総裁選どころか、その政治生命すら危機にさらしかねない事態に陥っている。


 この問題については、野党から国会の閉会中審査を行うべきだとの声も出ているが、自民党もそう簡単に応じるわけもなく、国会の閉会に助けられたと言っても過言ではないだろう。


 情報公開請求漏洩問題については、25日の記者会見で、菅義偉官房長官が野田大臣に情報を漏洩した金融庁の職員を処分する方向であると発言している。安倍官邸としては、総裁選のことも見込んで野田大臣の力を削ぎつつ、政権運営に悪影響が及ばないように早期の火消しを図りたいところだろう。

 

 

金融庁による情報公開請求の漏洩

 

 今回の情報公開請求漏洩問題。具体的には、金融庁が野田総務大臣に関わる情報公開請求があった事実を野田大臣に伝えていたという問題だ。

 

 事の始まりは、野田大臣の事務所秘書が今年1月末、金融庁から無登録営業の疑いで調査を受けていた仮想通貨関連会社の関係者を同席させた上で、金融庁の担当者に説明を要求したことである。これ自体、現職の大臣が間接的に省庁に圧力を加えたのではないかという疑念を生じさせる事柄である。


 この事実を掴んだ朝日新聞が金融庁に対して野田氏側との面会記録の情報公開請求を行った。その情報の開示決定が下される前に、請求の内容が金融庁から総務省担当者を通じて野田氏に伝えられたというのだ。これをもって、金融庁が情報を漏洩したとされている。

 

 そもそも、この金融庁による情報漏洩は野田大臣の口から報道関係者に伝えられたことから発覚している。どういうことかと言うと、5月下旬に行われた野田大臣と女性記者との懇親会で、情報公開請求があったことを金融庁から伝え聞いたと野田大臣が記者に話していたのだ。

 

 

情報公開制度を所管するのは総務省

 

 野田聖子議員が大臣を務める総務省。国の情報公開制度を所管するのがその総務省である。野田大臣がその制度の趣旨を知らなかったという言い訳は当然に通じない。

 

 2016年、地方議会議員の政務活動費に関する情報公開の請求があった際に、事務局が請求者名を議員に伝えていたケースが相次いだ。それを受けて、総務省は情報公開制度の適切な運用を各自治体に文書で要請していた。

 

政務活動費に係る対応について

 

「開示請求者の情報が公になれば、開示請求の萎縮や情報公開制度への信頼性の低下につながるおそれもあることから、情報公開制度の適正な運用確保のため、開示請求者の個人情報等は当該情報を知る必要のない者にまで情報提供、共有することがないよう、留意する必要があります。また、個人情報保護の観点からも、開示請求者の個人情報の適正な管理が要請されています。」

 

 

 総務省が自治体に出した文書から重要な部分を抜き出したが、この文章が今回の金融庁による情報漏洩の問題点を的確に指摘するものとなっている。


 今回は開示請求者が朝日新聞であり、一般人ではなかったことから、開示請求者の情報が公になっても直ちに開示請求を躊躇するといった萎縮効果は働かないと思われたのかもしれない。それだけでも大問題であるが、2年前に総務省が行った要請に反するような行為が総務省において起きていたのだから、事態は殊更に深刻である。情報公開制度の根幹を揺るがす事態であるとすら言える。

 

 

大臣に関わる「不都合な」情報の共有

 

 今回、特に問題と思われるのは、金融庁がわざわざ総務省に開示請求の事実と開示請求者名を知らせたことだ。金融庁の保管する情報を開示するのかどうかの判断が問われる場面であるにもかかわらず、あえて総務省に情報提供を行っているのである。何かと言われる縦割り構造を乗り越えて、開示請求に関する情報が迅速に共有されていたことになる。

 

 森友学園や加計学園の問題では、安倍総理をはじめとした大臣には重要と思われる情報が伝わっていなかったこととされ、大臣らは「聞いていない」「承知していない」で野党の追及をかわしていた。

 

 しかしどうだろう。今回の金融庁の情報漏洩で分かったことは、大臣に不都合な情報であれば、先の総務省が自治体に対して行った要請にもあるような制度上の留意点など軽く乗り越えて、情報共有が図られているということである。

 

 これでは、決裁文書の改竄について知らされていなかったと述べた麻生財務大臣の言葉とて、にわかには信じられなくなる。

 

 情報公開制度を所管する総務大臣自身がその制度の根幹を揺るがすようなことをしていたのだから、大臣の辞職も当然に視野に入る事態である。百歩譲って、金融庁から総務省、そして野田大臣へ開示請求に関する情報が伝えられたことは省庁間の日常の情報共有の範囲内であるとしても、その情報を野田大臣は記者に自ら漏らしている。これでは、情報公開制度だけではなく、省庁内の情報管理がまともに出来ていないことにもなる。

 

 制度の趣旨は無視する。情報管理も出来ない。野田聖子大臣は大臣失格であるばかりか、議員としても不適格なのではないか。そんな疑問しか浮かばない。