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参議院での国有林野管理経営法改正案の審議に注目 国民民主党・徳永参院議員がただした問題点とは

 

 

 

国有林野管理経営法改正案、参議院へ

 

 5月21日に、自民党、公明党、国民民主党、日本維新の会などの賛成多数で衆議院を通過した国有林野管理経営法改正案。22日には、参議院本会議で趣旨説明と質疑が行われた。
 俄かにマスコミ報道でも取り上げられるようになった印象があるが、この改正案の目指すところは決して悪いものではないが、問題点がないわけでもない。

 

mainichi.jp

 

 その問題点を鋭く指摘したのが国民民主党から質問に立った徳永エリ参議院議員だ。国民民主党は衆議院で賛成に回ったが、徳永議員の質問を見ると、その問題点も的確に把握していることが分かる。
 徳永議員の質問の概要は同党のサイトに掲載済である。

 

www.dpfp.or.jp

 

 徳永議員、曰く。
 「国有林は国民共有の財産であるから、改正案が成長産業化の名の下に公益的機能を損ない、地域の振興にも寄与せず、大企業の利益だけを図るためものであるならば、しかもコンセッションであるならば、決して賛成するわけにはいなかい」

 

 その他の多くの野党は単に問題点の指摘一辺倒であったが、改正の趣旨自体には賛成している国民民主党はその点で極めて現実的な姿勢を見せ、功罪両面を的確に把握した上での対応をとっていると言えるだろう。上記に引用した徳永議員の言のように、公益的機能を損なわないよう、地域振興に寄与するよう、一部の大企業に利益が偏ることのないよう、そして、安易にコンセッションの対象としないよう、細心の注意を払った改正を行うことが求められているのである。

 

 

国有林野管理経営法改正案の内容

 

 国有林野管理経営法改正案の主な内容となるのは、国有林における樹木採取権の設定である。国有林の一定の区域で一定の期間、安定的に樹木を採取できる権利を意欲と能力のある林業経営者に樹木採取権を設定する道を開くというのである。
 この樹木採取権の設定に関わる樹木採取権実施契約の締結や樹木採取権の取消についても合わせて定める内容になっている。

 

 木材を用いたビジネスを各地で振興するということで、国有林を活用したいという民間事業者に樹木採取権を設定することは十分に合理性を持つ施策であろう。
 問題点への対応については、吉川貴盛農相がその答弁で、大手独占とはならないように「伐採に伴う雇用増など地域への貢献を総合的に評価する」とするなど、一定の手立ては講じられることになっている。

 

 

忘れてはならない論点

 

 国有林野管理経営法改正案は、国有林を活用した事業を拡大するという趣旨であり、この事業という観点に関わり問題点が指摘されているわけだが、忘れてはならないのはその対象が国有林であるということである。対象が自然資源であることから、配慮が求められる事柄があるのである。

 

 どういうことかと言えば、国有林の木を伐採することになるのであり、その再造林の形成をどうするのかという課題が存在するのである。
 この点、改正の条文では、事業者に再造林の整備について義務を課すものではなかったため、伐採したきりになってしまうのではないかとの懸念が表明され、衆議院での可決にあたっては、事業者との契約で再造林を「明確化」することなどを求める与党など5党提出の付帯決議も合わせて可決されている。

 

 あまりに厳しく制限や義務を課してしまえば、法律が改正されても、それを利用する事業者が登場しなくなる可能性がある。だからと言って、野放図に国有林の利用を認めるわけにもいかない。こういうときに、野党は反対を叫んでばかりになりがちだが、国民民主党は与党の提案に賛成しつつ、付帯決議を検討させるなど、現実的な対応を見せている。
 国有林を無暗に売り渡すことのないように、一方で、豊かな国有林を活用した事業の振興も図る。そういうバランスの取れた改正案の成立となるのか、残された参議院での審議にも注目したい。