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「共同会派」の誕生を新章のスタートに

 

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旧民進系の各党派が共同会派設立で合意

 

9月19日、立憲民主、国民民主両党と衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」の代表が会談し、衆参両院の共同会派をつくることで合意した。これにより、すでに会派を組む社民党も含めて衆参合わせて170人を超える新たな勢力が生まれることとなった。

 

衆院の会派名は「立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム」、参院は「立憲・国民.新緑風会・社民」。参院会派は立民の長浜博行議員が代表に就き、幹事長は国民民主の大塚耕平議員、国会対策委員長は立民の芝博一議員が務める。一方、衆院会派は代表と幹事長を一本化しないことになったという。

 

紆余曲折というとあっさりしすぎだが、民進党から希望の党、小池百合子東京都知事の「排除」発言、立憲民主党の旗揚げ、わずか2年の間に起こった出来事はまた新たな局面へと進む。

 

新たな院内会派の誕生は、将来的には政党としてのかたまりを国民に示すことができるのかが、一つの注目点だ。共同会派設立に際して作られた文書では、「政府提案法案の賛否については、各党各会派で意思決定する前に事前調整をはかり、決定する」とある。

 

かつては同じ釜の飯を食った中とはいえ、過去の傷も未だ癒えない中での「共同会派」誕生に、各党所属議員の胸に去来する想いは様々だろう。だが、この苦難を乗り越えた先に自民党に変わる政権選択可能な政党の姿があることを是非とも認識して進んでもらいたい。

 

共同会派の最大勢力となる立憲民主党も、政策面で国民民主党や社会保障を立て直す国民会議など会派をともににするメンバーとの足並みを揃えることが重要だ。

 

どのような軸を持って自民党と対峙していくか。この捉え方を誤れば、左派政党と代わり映えのしない立ち位置になってしまいかねない。バランスに配慮した、健全な野党としてのポジションを見定めることが大切である。

 

 

 野党であることに慣れてはいけない

 

9月の改造人事で総務大臣の椅子に座った野田聖子議員は、2014年のインタビューで、民主党政権の誕生と前後して右傾化していった自民党について次のように証言している。

 

「野党でいると埋没していく。マスメディアの露出もどんどんなくなる。与党と差別化しないといけない。だから政策的に個人重視の民主党に対して、自民党は、国家を基本とする政策を重視するというわかりやすさを出していこうとした。それでかなり右にずれたかなと思います。野党の自民党を一生懸命支えてくれた方たちが、そちらのほうにいたということもあります」

 

こうした振り返りは実に示唆に富む。いわゆる中道から左派にかけての色合いが強い民主党政権の誕生とともに自民党は下野した。野党・自民党としてのブランディングには苦労したのであろう。

 

このインタビューは中央公論新書『自民党』でも引用されており、自民党が右傾化していく過程を示す証言の一つとして取り上げられている。ここではさらに、右傾化していく自民党の中心にいたのが現在の安倍晋三首相がいたことも記されている。

 

少しでも露出を増やすために、存在感を示すために、言葉が過激になっていったり、先鋭的な主張に変化していったりするのだとすると、自民党の右傾化もかつての下野にも一因はあるといえよう。

 

メディアに注目されたいがために、耳障りのいいことを言い連ねて関心を引くのは、思想の左右を問わず気をつけなければならない。

 

 

結果も大事だが、足場固めはもっと大事

 

今はようやく共同会派を設立した段階であり、これから会派としての立ち居振る舞いが問われていく。結果を焦るあまりに、急速な左傾化が進めば、さらに左のほうで手ぐすねを引いて待ち構えているグループがある。

 

旧民進党はもとより、かつて民主党が政権を取れたときに、あの総選挙で何が起こったのか。誰が支持をしたのか。再び誕生するチャンスが到来するかもしれない今だからこそ、必要な政策整備に力を尽くしてもらいたい。

 

憲法改正や原発に関して各党で意見の相違は見られるものの、これはこれからの課題。各党党首が必要と考えてきた一定多数の塊ができた今こそさらなる足場固めが必要だ。

 

右傾化した与党自民党に対して、左派陣営には共産党を筆頭にれいわ新選組が控える構図。この中で新たに誕生していく“大きな塊”はどこにポジショニングすべきか。多くの国民がじっと注視している。しっかりと霞ヶ関を動かしていける政策を打ち出すことが肝要。

 

あわせて、玉木代表のような新しい取り組みにも積極的に挑戦する姿勢は、新しい世代との対話の機会をも生み出す。特に国民民主党に所属する議員の多くは、立憲民主党の追い風に乗って当選してきた議員よりも、逆風ながらも選挙で勝ち残ってきた実力ある議員たちだ。まもなく始まる臨時国会からは「スピード」も重要。そうした有能な人材(適材)が適所に配され、国民にとって魅力ある国会論戦が繰り広げられることを期待したい。