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面妖なる軽減税率の迷走  国民の負担増に目を向けよ

 

 

消費税10%まで、あと1ヶ月

 

 10月の消費増税まで1ヶ月となった。
 飲食料品については税率を8%に据え置く軽減税率も導入される。以前から、軽減税率の非合理性が指摘されてきた。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 

 1ヶ月前のこの段階でも、混乱の最中と言わざるを得ない状況であり、線引きが難しいという報道が連日のようになされている。

 

www.jiji.com

 

 

 これは、調味料のみりんは酒類に分類されるために10%、対してみりん風調味料はアルコール度数が低いために酒類には分類されずに8%となると指摘する記事だ。
 調味料のみりんのアルコール度数が高いからと言ってお酒の代わりにこれを飲むなんて人が多くいるようには思えないが、アルコール度数を基準にする以上、みりんも酒類とされてしまう。みりんとみりん風味調味料のアルコール度数がそこまで大きく違う訳でもないが、たとえ僅かな差であっても、あるところで線引きをしようとする以上、一方は軽減税率適用でもう一方は非適用ということになってしまうのだ。

 

 

もはや面白問答集と化した「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」


 些細な差で軽減税率適用と非適用に分かれるという事例はみりんに限らない。
 国税庁はそういう事例に関するQ&Aを公開して、随時更新している。

 

www.nta.go.jp

 

 

 これは「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」というものだ。以前から話題になっている、あのコンビニで購入した弁当の扱いみたいなことも、このQ&Aで詳説されている。
 国税庁としては整合的な説明をしているつもりであるだろうし、実際にこのQ&Aの中で何か破綻している点があるわけでもない。ただ、果たして、ここに描かれる世界は現実の日本社会を反映しているのだろうかとの疑問を抱く。
 こういう場合は軽減税率適用、こういう場合は非適用という説明がこれでもかとなされている。もはや、その内容は面白問答集といったところ。あるいは、政府公認のクイズ問題のネタ本かのようだ。

 

 

徴税協力費用の負担は続く

 

 今回の軽減税率の導入に関しては、それに対応する事業者の準備負担も非常に重い。大企業であれば、例えばレジの交換といったことも適宜対応しているとは思うが、小規模事業者はその限りでない。
 実際、対応は進んでいないようで、先日、経済産業省が軽減税率対応のために行う新たなレジ導入に対する補助について、増税後もそれを続けるとの報道があった。

 

www.nikkei.com

 

 

 消費増税がなければ、レジの更新作業といった作業はもちろん不要であった。政府が行う徴税作業に事業者が協力する。その費用負担が今回新たに生じたということである。
 10月に税率が10%になった瞬間、対応が終わるというわけではなく、引き続き諸々の対応が求められることになる。もちろん、年度末の税務処理など、今後も毎年のように消費税に関する処理が必要とされるのだ。

 

 政府は税率を上げるというそのことしか考えていないのかもしれない。10%に税率を上げれば、どれくらいの増収になるのか。そんな皮算用をしていることだろう。
 その裏側では、事業者そして国民が政府による徴税に協力するための費用を日々負担しているのである。
 先の国税庁による「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」についても、事業者はその内容を理解しているものとして扱われる。もし間違った適用などしてしまった場合、「知りませんでした」では許されないのだ。場合によっては、脱税とされてしまう可能性すらある。

 

 軽減税率なる面妖な仕組みを導入したがゆえに、社会が混乱する。その混乱の影響を受けるのも国民であって、政府ではないだろう。軽減税率が税制の根幹を破壊するとの主張もあるが、いつになったら、このような間違った仕組みを改めることが出来るのだろうか。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 先の参議院選挙では野党から消費増税の一時停止という主張も出された。もう一度立ち止まって、少なくとも軽減税率といった政策対応は改められるべきではないだろうか。