霞が関から見た永田町

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海外からの投資意欲も高い関西経済を失速させるな

 

 

 

その場しのぎでない関西3空港の一体利用の仕組みを

 

 台風21号の直撃を受け、関西国際空港は完全閉鎖に追い込まれた。一部で運航は復活しているが、完全な再開には程遠い状況にある。


 注目されたのは神戸空港の存在だった。関西空港に置き去りにされた利用客が高速船の臨時便で神戸空港運ばれた。ネット上には「神戸空港なんてあったのか」みたいな意見もけっこう出ていた。

 

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 関西・西日本への玄関口であり、観光・輸送・物流の拠点でもある関西空港が機能不全に陥ったことは深刻な事態である。大阪府がとりまとめている「主要5か国・地域別 来阪外国人旅行者数(推計値)」によると、2017年においては、訪日外国人観光客28,691,073人のうち、大阪を訪問した人は11,103,445人もいた。実に38.7%の割合である。インバウンドを軸とした経済活動が低迷するだけでなく、関西を拠点とする企業などの活動にも悪影響を及ぼすおそれがある。

 

 ここに来て、激減している関空発着便を穴埋めするため、神戸空港、伊丹空港の受け入れの動きが出てきた。国際線を就航させるためには、国内線より厳しいセキュリティ対策、出入国・税関手続きなど運営面での課題があるし、騒音問題も無視できないが、3空港の従来の役割分担、行政の垣根などを乗り越えて、早急に対応を進めていく必要がある。


 関空が完全に再開するまでの応急措置という発想ではなく、恒久的な枠組みを考える中で、関西3空港の一体的な運用をはかっていくべきである。関西空港が台風に弱いということは証明されたわけであり、近いうちに同じような被害が起こらないとは断言できない。

 

 『神戸新聞』は6月25日の社説「3空港一体運営/鍵を握る『神戸』の将来像」において、「訪日外国人客(インバウンド)をはじめ旅客需要を取り込んでいくには、3空港が持つ機能を最大限に発揮する必要がある」「神戸空港は、民営化されたとはいえ、国内線に限定され、1日30往復便などの運用規制がかかったままだ」「民営化された3空港の将来像を関西全体で議論する時期にきている」などという問題提起をしていた。こうした主張に耳を傾け、もっと早い時期に新しい方向性を出しておくべきだった。

 

 

海外の投資家・富裕層の関西への関心は高い

 

 一般人の観光だけではなく、海外の投資家・富裕層による関西への関心度は著しく高い。ファイナンシャルタイムズ、ガーディアンなど欧州マスコミの報道ぶりは、私たちが想像する以上に、質量ともに充実したものである。ネット上でも読めた記事としては、たとえば次のようなものがあった。

 

“Special Report Doing Business in Kansai/Kyoto--Kansai: Japan’s historic heartland plays to its strengths --Region hopes tourism and healthcare innovation will help offset Tokyo’s dominance”(Robin Harding: JUNE 12, 2018)<Financial Times>

 

“Japan holidays/ The food in the Japanese monastery was‘basic and vegetarian’. What did you expect?” (Liz Boulter: Fri 27 Jul 2018 14.51 BST) <The Gurdian>

 

 ネットでは分からないが、ファイナンシャルタイムズは紙媒体のものとしては、びっくりするほど手厚い関西の特集記事を組んでいる。ガーディアンの報道にもある高野山には、宿泊客の8割か9割が西洋人という宿坊もある。


 来年2019年6月28日、29日の2日間で、G20サミット首脳会議が大阪で開催することが決定している。そして、2025年に開かれる国際博覧会の開催地は11月23日、パリに本部がある国際博覧会事務局が開く総会で決定される。大阪での開催となるよう、政府、大阪府は諸外国に対して最大限の働きかけを行っている。


 神戸市では、ポートアイランドにおいて先端医療技術の研究開発拠点を整備し、産学官連携により、21世紀の成長産業である医療関連企業の集積を図る「神戸医療産業都市」を推進している。ポートアイランドはその沖合にある神戸空港からのアクセスが便利である。神戸空港については、事業計画にビジネスジェットの誘致拡大も盛り込まれており、富裕層や著名人の来日を促進することが期待される。


 東京に進出している外国の企業は当然のごとく多いが、神戸三宮にはP&G、ネスレ、イーライリリーといった外資系企業の本社が集まっており、これからもこうした企業が進出することが期待されている。何が何でも東京に本社を置く必要がなければ、ゆったりとして暮らしやすい神戸に本社を置くことは賢明な選択と言える。

 

 

関西圏の発展の潜在的可能性は高い

 

 経済規模、人口規模などで見ると、首都圏の関西圏に対する優位性は揺るがないが、国際的な情勢もふまえて、長期的な視野に立つと関西圏の方が今後の発展という点では高い可能性を秘めているとも言える。特に欧州をはじめとする海外の企業・投資家は、以下の点から関西圏への投資・進出に積極的な姿勢を示している。

 

・首都圏は戦後のアメリカ一辺倒、中央集権国家の日本の形がつくられてきた本拠地であり、今後の斬新な発展を受け入れる土壌に欠けていること。
・首都直下型地震はいつ来てもおかしくない状況にあり、実際に大地震が発生すれば被害は甚大なものとなること。
・首都圏にはサラリーマン経営者が多く、大きな決断が期待できないこと。むしろオーナー経営者が多い関西の財界人に働きかけた方が効果的であること。
・皇室の歴史も含めて、文化・歴史・伝統については、関西の方が関東よりも遥かに厚みがあること。
・健康、自然、歴史遺産など海外の富裕層・知識者層を魅惑するテーマが関西では盛りだくさんであること。
・従業員のことを考えれば、過密な首都圏よりも関西圏の方が快適な生活を享受しやすいこと。

 

 以上、今後の関西圏の発展に着目した論を展開したが、首都圏だけ、関西圏だけ、あるいは都市圏だけが繁栄すれば良いというつもりは毛頭ない。外資系企業だけが栄えて、肝心の日本国民が豊かにならないのでは話にならない。一定の規制も含めた適切な外資誘導のルールも確立しなければならない。


 そして、どの地域に暮らしていても、安心して学び、働き、子育てができ、老後を過ごせる世の中をつくっていかなければならない。そのためには、国民民主党などが提唱している「一括交付金の復活・進化」などの改革も断行していく必要があるだろう。

 

 勿論、目の前の政治課題としては、一連の豪雨災害・台風、北海道胆振東部地震に対する災害対策に万全を期すことである。9月10日、5野党1会派は、自民党に災害対策のための予算編成と臨時国会召集を要求しているが、政府・自民党はただちにこの要請に応えるべきである。