霞が関から見た永田町

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開催されない予算委員会 国会から逃げることで支持率を上げる安倍政権

 

 

 

開催されない予算委員会

 

 衆参両院の予算委員会が開催されない状況が続いている。
 予算成立後、例えば4月中旬には、桜田義孝前五輪担当大臣の失言など一連の安倍政権の不祥事に関して、安倍総理が出席する集中審議の開催を野党が求めたことがあった。この要求については、衆議院予算委員会の野田聖子委員長が拒否し、参議院予算委員会の金子原二郎委員長も応じなかった。

 

this.kiji.is

 

 

 その他にも事あるごとに野党は予算委員会の開催を求めてきた。今月も、例えば国民民主党の原口一博国対委員長が会見で予算委員会の開催を求めている。

 

www.dpfp.or.jp

 

 

ただ、与党はそれに応じる姿勢を見せずに、現在に至っている。衆議院は80日以上、参議院は50日以上、予算委員会が開かれていないのだ。

 

www.asahi.com

 

 

予算執行者の資質を問うのも予算委員会の機能

 

 既に今年度予算が成立しているのだから、予算委員会の開催は不要ではないかとの批判も聞こえてきそうだ。
 その批判は、予算委員会が新年度の予算案だけを議論する場であるという前提に立つのであれば正しいが、その前提は少なくとも現在の日本の国会では成立しない。そもそも、予算は予算案とその執行で成り立っている。ゆえに、予算委員会は、予算案だけではなく、予算の執行についても問う場として、これまで機能してきたのである。
 そのような慣例を打破すべき、予算委員会では予算案だけを審議するように変えるべきという意見も、もちろんあり得るとは思うが、少なくとも現状では予算委員会は予算案だけなく、予算の執行に関わる事柄も審議されている。とりわけ、予算の執行については、その執行者である内閣のあり方が問われるところとなり、内閣総理大臣以下、各大臣の出席のもとで、その政治姿勢が問われることにもなるのである。
 もちろん、大臣に問題があれば、その資質が問われる場ともなり、実際にこれまでもそのような場面が何度となく繰り返されてきた。

 

 「予算委員会は幅広いテーマ、特に総理大臣や閣僚の責任追及の場として戦後一貫して機能してきた。その慣例は極めて重要だ。」

 

www.yomu-kokkai.com

 

 

 「読む国会」では、以上のように書かれているが、まさに予算委員会は時の内閣総理大臣の責任を問う場として重要な役割を果たしてきたのである。
 そのような予算委員会が衆議院に至ってはもう三か月近く開かれていないのだ。

 

 

国会から逃げることで支持率を上げる安倍総理

 

 安倍総理の政治姿勢を国会の場で正すというのであれば、予算委員会ではなく、党首討論の場で行えば良いではないかという声もあることだろう。
 その党首討論も昨年6月以来、実施されていない。ただ、こちらは、ようやく開催に向けた動きが見られて、6月19日に実施されることで調整されているようだ。

 

www.nikkei.com

 

 

 以前、安倍総理は「国会から逃げる」というエントリがあった。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 

 政権にスキャンダルが浮上すると、それが国会で取り上げられ、支持率低下に結びつく。そうであるなら、出来るだけ国会を開かない方が良い。そんな判断をしているように受け取れるのが安倍総理なのだ。
 今国会も前半は統計不正の問題で安倍政権は厳しく追及されたが、これも予算成立後、結局有耶無耶になってしまった。その有耶無耶につながったのが、まさに予算委員会や党首討論の不開催と言えるだろう。国会で追及されなければ、マスコミも取り上げる量を減らす。情報が減れば、それだけ追及の声も萎んでいき、そのまま問題は有耶無耶にされるのだ。

 

 実際、この間、安倍政権の支持率は上昇傾向ですらある。

 

 

 

 三春充希(はる)氏がまとめている内閣支持率のグラフを見ると、2019年3月以降、支持率は増加傾向にある。
 国会審議で追及されなくなれば、それだけ支持率を下げるリスクを軽減出来るのかもしれない。そういう意味では、予算委員会の開催を渋る与党の行動は、政権の維持を考えれば、極めて合理的なものとさえ言える。
 ただ、それが国民にとって良いことなのかと言えば、そういうわけではない。いたずらに予算委員会や党首討論を開催して、そこに総理や各大臣を縛り付けるのも問題だが、この間の国政上の重要課題について安倍総理や各大臣からの説明、さらには与野党からの質疑の機会があってしかるべきだろう。

 

 解散風が吹き始め、6月に実施されることになりそうな党首討論の場で、安倍総理が解散の話題を持ち出す可能性まで囁かれている。このままでは、予算委員会は開かれることはなく閉会や解散となってしまい、ここ最近の国会でも予算委員会の開催日が最小だったということになりそうな雰囲気である。
 国会の開催したがらない安倍総理は、今度は開催中も最も重要な委員会といえる予算委員会を開かせないことで、国会から逃げ回ることに成功している。問題を隠すことで支持率を保つという安倍総理らしいやり方だが、そろそろその限界が見えてくるのではないだろうか。