霞が関から見た永田町

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正しい伝統の理解のもとに進めたい皇室議論

 

 

 

新時代の皇室像を印象づけた天皇皇后両陛下

 

「東風吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春なわすれそ」

 

学問の神様として名高い菅原道真が都を追われ太宰府へ赴く際に、庭の梅の木との別れを惜しんで詠んだとされるこの歌は「飛梅伝説」とともによく知られている。梅雨入りの季節が届き始めた6月。歓迎ムードに包まれた平成から令和への改元から一ヶ月が過ぎた。

 

改元に湧く5月の大型連休の折には、令和の典拠となった「梅花の宴」の舞台である大宰府政庁跡や坂本八幡宮も例年を超える来場者で賑わったという。

 

かつて昭和から平成への改元を体験した中高年には、当時の沈痛な空気感とはうって変わって、改元に湧く街の様子に、驚きとともに、まさに時代の変化を感じたことだろう。

 

天皇皇后両陛下の即位を祝って多くの人々が一般参賀に皇居を訪れ、令和最初の国賓として招かれたトランプ米国大統領との宮中行事もつつがなく終了した。通訳を介することなく英語で言葉をかわす様子に、新たな国際的な皇室像を内外に示すことにもなった。

 

 

今こそこれからの皇室のあり方を議論したい

 

こうした時節だからこそ、これからの皇室のあり方を国民全体で大いに議論していきたい。すでに報道にもあるように、現在の皇位継承順位は3位までにとどまる。今上天皇の即位にともなって皇嗣となられた秋篠宮殿下と、そのご長男である悠仁親王。さらに上皇陛下の弟である常陸宮様だ。悠仁さまはまだお若く、常陸宮様はご高齢であることを考えれば、皇位継承に関する議論は待ったなしといえよう。

 

さらに皇位継承の対象ではないが皇族の女性は11名。少なくないと言えるかもしれないが、現在の皇室典範上、女性は婚姻によって皇籍を離れなければならないとされている。今後、時間とともに皇族の数は減少していくことは避けられない。これに加えて、いずれ皇位を継承される悠仁さまと同年代の皇族方がいらっしゃらないことも憂慮すべき点である。安定した皇位継承とともに大きな課題だ。

 

我が国の皇室は男系男子によって126代続いてきた日本の伝統だ。そうしたことを踏まえ、あらゆる可能性を視野に入れた議論を求めたい。女性宮家の創設や旧皇族の皇籍復帰も議論の対象といえよう。歴史と伝統は、ときに新たな仕組みが積み重なることによって重層性が生まれ、やがて新たな伝統として受け継がれていくものであることを改めて認識したい。

 

 

なぜ天皇陛下が日本国民統合の象徴であるかを理解せよ

 

ところが、こうした課題の解決に向けて議論の素地を整えていかなければならない大事な時期にありながら、その流れに水を差すのが、我が国の伝統を理解していない一部の勢力である。「女性天皇」と「女系天皇」の違いさえも理解していないのではないかと疑問を抱かざるをえない。

 

報道によると、立憲民主党の枝野代表は「女性や女系天皇に対する国民の理解や支持は非常に大きい」との考えを示し、同時に参議院選挙でもこの考えを訴えたいという。多様性の重要度が増している昨今とはいえ、皇室の伝統に話を持ち込むのはお門違いも甚だしい。

 

それに比して、今後の皇室のあり方を議論していく上で、皇位の安定的継承に関する課題の認識とその取り組みを表明した国民民主党の玉木代表への期待度は高い。玉木代表はSNS上で、新聞社が報じた同党のニュースを引用しつつ次のように述べている。

 

「男系女性天皇の議論はしますが、女系天皇は極めて慎重に考えるべきとの立場です。とにかく、皇統の安定的な継続のために何が必要か、代表直属で丁寧に議論を重ねてまいります」

 

極めて冷静なコメントであり、公党トップとしての責任感を強くにじませるメッセージを発信したといえるだろう。

 

菅原道真の梅にまつわるエピソードには、都の梅が一夜にして道真のもとに飛んできたとする「飛梅伝説」とは別に次のようなエピソードが残されている。あるとき太宰府の道真を訪ねる人物が、道中、都に残る夫人のもとに立ち寄り、夫人の便りとともに庭の梅を根分けして持ってきたというものだ。西方に居を移した道真にとって、都からの知らせは、やはり東風だったに違いない。

 

7月には参議院選挙が予定されている。衆議院の解散もちらつき、同日選の香りも漂う梅雨の季節である。参議院議員の任期は6年と長い。令和初の国政選挙は、まさに令和の御代を占う大事な選挙となること必至だ。同日選ともなればその重みは更に増す。平成の時代に期待された政権交代可能な保守政党による二大政党制は実現しなかった。新たな令和の時代となった今、政権与党と議論しあえる地に足の着いた改革保守政党の登場は多くの国民に待ち望まれる。

 

梅雨明けとともに号砲が鳴る参院選でどのような風が吹き、どのような結果がもたらされるのか。かつて右大臣を務めた天神様も泉下から東風に乗ってやってくる知らせを待っているかもしれない。