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中小企業策政策を総点検して、刷新すべきだ(1/2)

 

 

 

大企業に偏重した情報・記事のあり方に疑問

 

 『2017年版中小企業白書』によると、中小企業・小規模事業者(380.9万者)が企業全体(382.0万者)に占める割合は99.7%である。小規模事業者(325.2万者)の比率は85.1%である。


 いかに多くの人たちが中小企業で働いているか、そこにいる人たちが日本経済を支えているかを再認識する必要がある。他方、大企業との賃金格差は歴然としてあり、2015年で大企業の正社員の平均給与が38.4万円であるのに対して、中小企業の正社員のそれは29.8万円という水準にあることをしっかり受け止めるべきだ。

 

 日本経済新聞を読んでいると、「景況感5期連続改善 12月短観、大企業製造業プラス25」(2017年2月15日)などといつも大企業を中心とした見出しがつけられることが大半であることが気になっている。


中小企業の方が働いている人が多いことを考えれば、国民の生活にとっては中小企業の業績・業況感の方が重要ではないのだろうか。大企業こそ日本経済を動かしているという固定観念に縛られすぎていないだろうか。


知り合いには有能な中小企業の経営者、ビジネスマンが何人かいるが、その会社が日経新聞でとりあげられることはない。大企業は広報・宣伝力もあるから、黙っていても情報は入ってくるのではないか。経済記者が真っ先に取材すべきは中小企業の情報であって、多くの人が気付いていないビジネスネタを発掘することこそ使命ではないか。

 

昨年12月に、中小企業庁は「下請取引適正化推進シンポジウム2017~中小企業の公正な取引環境の実現に向けて~」を全国5会場で開催している。講師は弁護士をはじめとした法曹関係者がつとめているようだ。


日経新聞に開催報告が掲載されているが、役人だの大企業関係者の声ばかりが紹介されていて、中小企業側の声がまったく掲載されていないことがバランスを欠いているようにも思われる。


勿論、大企業側が中小企業や下請け企業をいじめないようにすることが主眼であり、弱い立場にある中小事業者が名乗り出て、自由に意見をいえるかという問題もある。それなら中小企業関係者OBが発言するとか匿名なりの意見表明を認めるなど工夫ができるのではないか。


知り合いの中小企業の関係者からは連日のように、大企業からいじめの被害を受けていることを聞いている。そんな生の声も紹介していないで、きれいに取り繕っている中小企業庁の姿勢は問題だと考える。

 

 

中小企業政策が花形の時代があった


 個別の議員は別にして、一昔前に比べると、政党が中小企業政策に力を入れる度合いは小さくなったような印象を受ける。かつての商工委員会は通産省、公正取引委員会、経済企画庁を所管していたが、通産省が経済産業省になり、経済企画庁が内閣府に入って、経済産業委員会の扱う幅が狭くなってしまったことも関係しているかもしれない。

 

 さて、菅官房長官は、5月17日の記者会見で、「新元号の公表日を改元の1カ月前と想定をし、官民の情報システム改修の準備を進める」ことに言及した。退位特例法の審議の際、与野党でとりまとめた附帯決議には「政府は、本法施行に伴い元号を改める場合においては、改元に伴って国民生活に支障が生ずることがないようにする」との文言が明記されており、政府だけで改元時期を勝手に決めるべきではないと考える。


 なぜ改元のことについて突然触れたかというと、かつて印刷業界の関係者から、カレンダー製作は中小企業が中心になって行っており、元号、祝日などが変わることで現場はかなり苦労していることを聞かされたことを思い起こしたからである。やはり今度の改元についても、「カレンダー業界は2020年版の製作への影響を懸念する」(『産経新聞大阪朝刊』、2018年5月18日)などという声が聞こえてきている。


 役所や大企業と違って、法律改正や社会の変化などに対して、中小企業者がどれだけ大変な立場に置かれているかを、政治関係者、官僚は再認識する必要がある。

 

 今からすると想像はできないが、かつて中小企業政策が花形だった時代があった。 野党の中では、毎年泊まり込みで政策研修会を行っていた民社党(1960年~1994年)が中小企業政策に熱心に取り組んでいた。


『日本経済新聞』(1984年11月18日朝刊)は、「春日常任顧問は初日のあいさつで『これまでのわが党の政策は自民党にも影響を与えてきた』と胸を張った。中小企業基本法、消費者保護基本法、銀行法改正などは民社党の研修会がその発端になっているからだ」と報じている。


 同党は他党に先んじて、中小企業の承継税制の確立などを強く打ち出していた。衆参法制局・調査室などの知恵を最大限に生かして、全議員が議論に参加する中で、議員立法の草案等をまとめていた。「春日学校」とも呼ばれた研修会は、当初は中小企業政策に最大の重点を置いていたようだ。後に外交防衛政策など扱う分野はひろがっていったと聞いている。

 

 

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