霞が関から見た永田町

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地方議員のなり手不足 地方議会制度の再構築を

 

 

 

「4年に1度の選挙で落選リスクがあり、不安定な上に議員報酬が少ない」、あるいは「社会保障がないから自治体の厚生年金に議員も加入できるようにすべき(実質的な議員年金)」。ここ数年、地方議員のなり手不足が叫ばれて久しい。議員報酬の少なさや将来の保障が薄いことが、果たして地方議員のなり手不足の原因なのだろうか?

 

 

高給取りの都道府県議でも無選挙がトレンドに

 

ここに1つの資料がある。総務省の「統一地方選挙における改選定数に占める無投票当選者数の割合の推移」である。この資料を見ると、町村議会議員選挙における無投票当選者の割合はなんと、20.2%。これは2011年の数字であるため、今はもっと高い数字になっている。一方、政令指定都市議会議員選挙のそれは2011年当時だと0%。政令指定都市の市議会議員の議員報酬は横浜市で1700万円弱と破格であることから、議員報酬はなるほど、議員のなり手と直結しているように見える。

 

ところが、である。同じ資料に都道府県議会議員選挙の無投票当選率の数字も記載されている。なんと、17.6%である。都道府県議会議員といえば、その議員報酬は横浜市と同水準の1300万〜1700万程度。それだけの議員報酬が約束されている都道府県議ですら、6人に1人は無投票で選ばれているのである。しかも、この数字は2011年のものだ。それから8年が経過し、2019年の統一地方選挙はさらに輪をかけて、なり手不足の状況は進行しているようだ。

 

 

全選挙区の半数が無選挙という神奈川県の異常事態

 

例えば、神奈川県を見てみよう。選挙が始まったわけでないため、今後状況は変わる可能性はわずかにあるものの、現実的には告示日が目前に控えた今、状況が変わることはほぼないだろう。その前提で数字を見てほしい。

 

神奈川県議選は全部で48の選挙区がある。そして、2019年の統一地方選挙では、実にその半分の24選挙区が無投票の見込みだ。前回(2015年)の倍、である。24選挙区からの無投票当選者数は51人。県議会の定数の48.6%。ほぼ半数が選挙の審判を経ずに県議会議員になる見込みで、明らかに異常事態と言えよう。

 

神奈川県議会議員の議員報酬は横浜市議とほぼ同程度の1600万円超、である。特に無投票の傾向が著しいのは、横浜市、川崎市、相模原市などの政令指定都市を選挙区とするエリアで、横浜市内は全18選挙区あり、このうちなんと11選挙区は無投票という有様である。まさに県議会議員のレゾンデートルが問われている。

 

 

優秀な地方議員がバッジを外す決断

 

そして2019年の統一地方選挙のもう一つの傾向は、政策立案やリサーチなど、周囲からも力を認められている地方議員が立候補することなく、バッジを外す決断をしていることだ。これも1人や2人ではない。女性議員を中心に、全国各地で「この人は」という議員が2019年統一地方選挙に立候補せずに引退するのもまた、偶然ではないだろう。

 

地方議員のなり手がいない、というのがやはり二元代表制が制度疲労を起こしている証しなのだろう。予算編成権を持たない二元代表制では、地方議会は首長の提案の追認機関にどうしてもなりがちだ。メディアはこの辺を理解していないため、国会との比較で「議員提案条例が少ない」と批判するが、そもそも、議会は予算編成権もなければ、予算執行権も有していないため、予算の発生が見込まれるような条例はそもそも提案できないのである。

 

 

レゾンデートルが問われる地方議会

 

加えて、国会のように議会をサポートする仕組みも貧弱だ。国会なら国会図書館をはじめ、各省庁の調査室が議員会館内に陣取ってサポート体制を整えているし、実際の立法プロセスにおいては衆議院法制局、参議院法制局が手取り足取り、サポートする。こうした機能が地方議会にはないのである。一応、議会局なるものは存在するものの、到底、条例提案を全面的にサポートできるほどの人材もいなければ、そういう仕組みになっていない。

 

このまま高給を侍るだけで、何のアウトプットもアウトリーチもできない地方議会のままでは不要論が巻き起こっても仕方ない。しかし、それは地方議員だけのせいではない。今こそ、この国のあり方、地方自治のあり方を議論する時ではないだろうか。