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LINEの個人間送金機能が普及の鍵!? キャッシュレス・ポイント還元制度の肝は若者だ

 

 

 

増税への負担感軽減ばかりだけではない

 

「084」「0833」「114106」
公衆電話にテレホンカードを差し込んで、せっせと番号を入力する高校生。公衆電話に長い列ができ、若者は一心不乱に番号を入力したのは20世紀の終わり頃。

業務上、持っていたという社会人は少なからずいるだろうが、ポケベルは若者が初めて一人一台所有し、昼夜を問わず友人と連絡を取り合うことになる電子機器だった。

 

冒頭の数字は、「084」(おはよう)、「0833」(おやすみ)「114106」(愛してる)。9月30日に唯一ポケベル事業を提供してきた東京テレメッセージがサービスを終了したというニュースに、懐かしさを覚えた世代も多いかもしれない。番号だけで言葉を表現したコミュニケーションは、やがてPHSを経て携帯電話へと移り変わっていった。

 

一つの時代に幕が下ろされた翌日10月1日から始まったキャッシュレス・ポイント還元制度。経済産業省は開始から1週間が過ぎた11日に事業に関する状況を公表した。発表によると、1週間で約60億円が還元され、1日あたり平均で8億2千万円分。キャッシュレス決済額は1日あたり平均202億円だった。

 

消費税を10%に増税するのに伴って、導入されたポイント還元制度だが、その予算額は2800億円。これは増税による消費者の負担増加額とされる4.6兆円の6%程度に過ぎない。来年6ヶ月までの9ヶ月間の還元分として十分なのか。今後追加予算を投入しなければならないとすれば、十分な議論が必要だろう。

 

むしろ政府としての狙いは、見た目のポイント還元よりもキャッシュレス化の促進と見た方がいいのかもしれない。

 

果たして50兆円を超えたとも語られるタンス預金を消費者に吐き出させる効果が期待できるのか。今後のキャッシュレスの拡大に注目したい。

 

 

 

キャッシュレスの明暗はどう分かれるか。

 

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今回のキャッシュレスシステムの導入推進によって、消費者は自らに便利な決済サービスを選択できるようになったメリットはある。手続きは煩雑かもしれないが、日常的にキャッシュレスが暮らしに馴染んでいる人ほど、恩恵にあずかれるという意味では、キャッシュレス化を推し進める一助になるかもしれない。

 

ただ一方でタンス預金を溜め込んでいる主に高齢世代に、キャッシュレス決済がどれだけ浸透するかは未知数だ。

 

大きく分けてクレジットカード、デビットカード、ICカード、スマホ決済(主にQRコード)といったグループ分けができるキャッシュレス決済環境も、特に高齢者ではスマートフォンを活用するQRコード決済などの浸透にはハードルが高い。公共交通機関の利用が多い、SuicaやPASMOなら利用する人も多いので、便利なスマホ決済か、広く普及したICカードか、「キャッシュレス」の明暗がどのように分かれるかは、今後の注目ポイントだ。

 

特にデジタルネイティブと呼ばれる若い世代が何を利用するかがキャッシュレス決済社会の勢力図に大きく影響を及ぼすに違いない。今、多くの人が日常的に「LINE」を使うのも、若い世代から波及していった。スマホが普及し始めた当時、パソコンでネットワーク環境を利用して音声通話をする際には「Skype」が広く浸透していた。しかし部隊がスマホに移ったときに若い世代はSkypeを選ばなかった。Skypeのアプリサイズが、3G環境でアプリのダウンロードが許される容量を超えていたのが理由だった。

 

若者はSkypeが3G回線で「ダウンロードできない」というだけの理由で異なる無料通話アプリを求めるようになり、そこで覇権を握ったのがLINEだった。それが今や世代を問わず、かつて電話番号を交換してきたときのように「LINEを交換する」世の中になった。

 

前提条件は少々異なるが、デジタルネイティブが自由に決済に使えるかどうかを見ていくと、契約が必要になるクレジットカードには不利な環境だ。むしろ日常的に利用している交通系ICカードあるいは、手元のスマホで手軽にダウンロードして銀行口座から入金できるスマホアプリに一定の可能性が見えてくる。

 

 

普及の鍵は個人間送金

 

そこで重要になってくるのは「店舗側」の話ばかりではない。
個人間送金の利便性が向上するかは大きなカギになる。日常決済において個人間送金の機会は決して多くない。多くはないものの飲食代をまとめて支払ったり、日常の何気ない金銭のやりとりの際に「現金がないと困る」というシーンが残れば残るほど、消費者は「現金を収められる財布」が必要になる。

 

その煩わしさから解放されるという点で、若い世代がLINEを選択したように、若い世代がどのような決済方法を選択するかは分水嶺になるだろう。そういう意味では、すでにLINEは個人間送金機能を備えており、優位な位置にある。他にも同様の仕組みを搭載したサービスはあるので、実際にアプリを使い分けてみればわかるが、個人間決済ができないアプリはいずれ敬遠されるようになるかもしれない。

 

ポイント還元制度期間中の若者の決済額が占める割合は僅かだろうが、その後のキャッシュレス決済社会を動かす未来の消費者という点では、実は見過ごせないレイヤーだ。

 

ポケベルから始まりコミュニケーションツールとして移り変わってきた通信機器はついに「決済」という新たな機能が加わり若者の手のひらに収まった。かつて数字の羅列で思いを届けた通信機器の役割はますます拡大し、私たちの生活を激変させていくに違いない。