霞が関から見た永田町

霞が関と永田町に関係する情報を、霞が関の視点で収集して発信しています。

MENU

AI時代の働き方を語ろう

 

 

 

第3次AIブーム真っ只中である。AIは人間の知能を超えるか否か、シンギュラリティの到来を議論する論調もあれば、今ある職業のほとんどがAIによって代替されるなど、悲観的な話も多い。

 

もう少し、具体的な話をすれば、例えば、2013年のマッキンゼーグローバル研究所の報告書によると、「ロボットと人工知能の市場は2020年までに152.7億ドルに達し、これらの技術の適用によって、いくつかの産業では生産性が30%向上。現在、労働者1万人につき66台のロボットが世界で稼働しており、最も自動化が進んでいる日本の自動車部門では1520台が稼働している。工場の流れ作業のような低水準の作業だけでなく、知識集約型のタスク(消費者の信用格付けなど)もコンピュータに置き換わることで、世界中の賃金コストを9兆ドルまで削減できる」。

 

 

テクノロジーの進化には抗えない


2016年の米国経済白書でも、AIによる自動化は所得格差を拡大すると触れている。これは低所得者の職種では雇用が失われ、一方、高所得者の職種は雇用が増えると予測されているからにほからならないからだ。

 

基本的にこの流れに抗うことは不可能だ。世の中のあらゆるものがAIやIoTで置き換えられていく。「嫌だ」といったところで、そうなってしまう。

 

であれば、その時代の流れに日本もフィットしていく以外にないだろう。ここに政治の大きな役割がある。政治家は専門家ではない。ましてやテクノロジーの動向については、正直、「よく分からない」というのが本音だろう。

 

しかし、今ほど政治や行政といった、社会のルール、システムをつくる立場にある者たちはテクノロジーに対する素養を磨かなければならない時代はないと言ってもいい。なんといっても、働き方はもちろん、雇用の在り方まで変えてしまう可能性があるのだから。

 

 

Winddows95の登場がわずか20年前


振り返ってみれば、わずか20年前のことだ。Windows95が発売され、1995年の流行語対象は「インターネット」だった。理工学部の1年生の授業で、メールの使い方やインターネットへのアクセスの仕方などが教えられていた時代。それがわずかに20年前のことだ。

 

当時、「IT革命」という言葉もよく聞かれた。多くの、いやほとんどの人は「インターネットができることで何が革命なんだろう?」と思ったはずだ。しかし、あれから20年。ムーアの法則に従って、半導体はどんどんと高性能で、かつ小さく、消費電力も少なく、それでいて安くなった。今私たちのポケットに中にあるスマホは20年前のパソコンより何十倍も高性能だ。

 

 

ポケットの中に95年の何十倍の高性能のマシン、という時代


半導体だけではない。通信技術も発達した。あのころは128kbpsで「高速」と呼ばれていたのが、今や5Gが目の前に到来していて、その通信速度たるや10Gbpsと、現行の通信規格4Gと比較しても100倍という速さだ。

 

気がつけば、スマホ一つで決済もスケジュール管理も、連絡も何もかもが可能になった。いまでは財布よりスマホの方が大事、という人も少なくない。これだけ時間が経ってみると、インターネットの登場とテクノロジーの進歩によって、私たちの生活が大きく変わったことを実感する。まさにIT革命だ。

 

 

永田町はテクノロジーへの素養を磨け


さて、AIである。今、第3次ブームと言われている中で、過去の2回のブームと大きく異なるのは、AIを支える半導体、通信速度、ストレージの性能、コストが過去とは比較にならないほど、圧倒的であるということだ。20年前、IT革命と呼ばれたように、今から10年の間に私たちが予測すらできない速度でAIが社会に浸透し、働き方をはじめ、社会のあらゆるものを変えていくだろう。

 

ぜひとも永田町の人たちにお願いしたいのは、テクノロジーの素養を磨き、こうした時代背景をしっかりと掴んでほしい。なんとなくAIを頑張ろう、という話ではないのだ。