霞が関から見た永田町

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安倍首相の施政方針演説の「方針」とは何か

 

 

 

憲法改正への言及

 

 通常国会が開会し、安倍首相による施政方針演説と各政党・会派代表者による代表質問が終わった。

 テレビ受けするのは憲法改正に関するやりとりであったようで、安倍首相の憲法改正への意気込みとそれに対する野党側の質問が主にニュースで取り上げられていた。

 ここで確認しておきたいのは、安倍首相の施政方針演説の中で、「憲法」に言及したのは最終盤にあたる部分であったことだ。

 

 

施政方針演説の構成

 

 安倍首相の施政方針演説の構成は以下のとおりである。

 

一 はじめに

二 働き方改革

三 人づくり革命

(全世代型社会保障)

(教育の無償化)

(多様な学び)

四 生産性革命

(中小・小規模事業者の生産性向上)

(政策の総動員)

(行政の生産性向上)

五 地方創生

(農林水産新時代)

(地方大学の振興)

(観光立国)

(安全と安心の確保)

(東日本大震災からの復興)

六 外交・安全保障

(積極的平和主義)

(北朝鮮問題への対応)

(防衛力の強化)

(日米同盟の抑止力)

(地球儀を俯瞰(ふかん)する外交)

七 おわりに

(力を結集する)

 

この中で、「憲法」という言葉が出て来たのは、「7 おわりに」の中のさらに終わりの方の部分である。

実際の文章は短いので、引用すると以下のとおり。

 

「五十年、百年先の未来を見据えた国創りを行う。国のかたち、理想の姿を語るのは憲法です。各党が憲法の具体的な案を国会に持ち寄り、憲法審査会において、議論を深め、前に進めていくことを期待しています。」

 

 施政方針演説は約45分の長さであった。その中でも、最後の最後で憲法ついて言及したに過ぎないのである。

 最高法規である憲法について首相が言及した以上、それをマスコミが取り上げ、野党も質問で問い質すのは当然としても、この部分だけがクローズアップされてしまうのは、いささかバランスを欠いているように思われる。

 

 

今年の施政方針演説から消えたこと

 

 安倍首相の施政方針演説の構成を再度確認されたい。前半部分に掲げられたのは、働き方改革・人づくり革命・生産性革命の各点である。これは、思い返せば、昨年の臨時国会で議論されることが予定されていたテーマだ。

 

 

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 臨時国会の冒頭で解散となってしまったため、それらのテーマは国会で議論をされることなく現在に至ってしまったと言える。政策のスピードという点で、安倍首相自身がその速度を落としてしまっていたことは事実であるが、そのような遅れについて言及はされなかったのである。

 さらに、今回の施政方針演説だけを見ていると、見落としてしまうことがある。それは、安倍首相は長く政権の座にあるが、実は出来ていないことも多いということだ。

 

 その証拠の一端として、昨年の通常国会における施政方針演説の構成を以下に示す。

 

一 はじめに

二 世界の真ん中で輝く国創り

(日米同盟)

(地球儀を俯瞰(ふかん)する外交)

(近隣諸国との関係改善)

(積極的平和主義)

三 力強く成長し続ける国創り

(「壁」への挑戦)

(中小・小規模事業者への好循環)

(地方創生)

(観光立国)

(農政新時代)

(イノベーションを生み出す規制改革)

四 安全・安心の国創り

(被災地の復興)

(国土の強靱(じん)化)

(生活の安心)

五 一億総活躍の国創り

 (働き方改革)

(女性の活躍)

(成長と分配の好循環)

六 子どもたちが夢に向かって頑張れる国創り

(個性を大切にする教育再生)

(誰にでもチャンスのある教育)

七 おわりに

 

 全体を眺めてみると、それぞれの項目が入れ替えられていることが分かる。そして、適宜、いくつかの事項が間引かれていることも分かる。

 例えば、「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」は二年連続登場するが、「近隣諸国との関係改善」が本年ではなくなっている。その他に、「イノベーションを生み出す規制改革」「国土の強靱(じん)化)」「女性の活躍」も項目としては存在しなくなっている。

 いずれの点も昨年まで安倍総理はその推進を強調していた事柄だと思うが、それらは施政方針演説で項目立ててその推進を謳わなくとも、既に目標は達成されたということなのだろうか。

 むしろ、規制改革に顕著なように、目立った成果が出せていないため、施政方針演説で前面に押し出すことを止めたということではないだろうか。

 

 本年の施政方針演説だけを、あるいは憲法改正に関係している部分だけを見ていると、重要な点を見失うことになりかねない。

 安倍首相は、2012年に政権に返り咲いて以後、既に5年以上が経過している。その時々で、政策目標として掲げながら、結果として実現せず、それにつき次の政策課題を掲げることで曖昧にされてしまったことを改めて確認する必要がある。

 

 

首相として本当に進めたいことは何か

 

 昨年の施政方針演説でも憲法への言及は「七 おわりに」の部分であり、以下のように語られた。

 

 「憲法施行七十年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる七十年に向かって、日本をどのような国にしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか。」

 

 本年は、後段のところで、「議論を深め」に加えて、「前に進めていくことを期待しています。」としたところが新しい点である。それでも、憲法改正に意欲的な安倍首相にしては、随分と控え目な言い回しである。

 首相が施政方針演説の中で憲法改正について言及すべきではないという意見もあり、それをおそらく安倍首相も当然意識した上で慎重な言い回しをしているものと思われるが、本当に憲法改正が必要というのであれば、施政方針演説の冒頭で高らかに理想を掲げるくらいのことをすべきではないだろうか。

 

 これまで何を実現して、何が実現出来なかったのか。そして、今後、自らが首相として進めたいことは何なのか。そのあたりの整理を十分にせず、毎度のように明治時代の逸話を持ち出して煙に巻き、何か目新しいことに取り組もうとしているかのように見せているだけに過ぎない点があること、特に野党は質疑で厳しく問い質して欲しい。

 

安倍首相 施政方針演説動画

 

www.ksmgsksfngtc.com