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シラク元大統領の国葬に駐仏大使しか送らない安倍外交の失態

 

 

 

30日の国葬には駐仏大使が参列 

 

 9月26日に亡くなったフランスのシラク元大統領。その国葬が30日に取り行われた。
 親日家として知られたシラク元大統領。大の相撲好きで、飼い犬の名前を「スモウ」にしたというエピソードまである。

 

www.yomiuri.co.jp

 

 

 そんな日本とも深い縁のある人物の国葬だ。日本からも相応の要人が国葬には派遣されるのかと思っていたら、驚きの事態となっていた。

 

 

www.jiji.com

 

 これはシラク元大統領の国葬を報じた記事だが、注目して読み進めて欲しい。最後の方に、「日本政府からは木寺昌人駐仏大使が参列した。」とある。

 

 アメリカはクリントン元米大統領、ロシアはプーチン大統領。その他では、イタリアのマッタレッラ大統領、ベルギーのミシェル首相らが参列している。
 各国から国家元首級の人物が参列するなかで、日本はフランス現地に駐在する大使の参列に留まっているのだ。決して、大使が偉くないわけではなく、こういう場合は日本政府を代表しての参列になるが、他国からの列席者と比較すると劣後していると言わざるを得ない。
 まさか日本の首脳の列席が断られていたわけではなかろう。にもかかわらず、大使の派遣にとどめる。これでは、日本の著しい外交感覚の欠如を内外に見せつけてしまったと言わずして何と言えようか。

 

 臨時国会の開会を控えているとは言え、国会開会中ではない以上、国会日程により国会議員をフランスに向かわせることが出来ないという理由も成り立たない。あるいは、現職国会議員ではない元首相らに依頼するという方法もあったはずだが、少なくともそういう動きがあったとの報道もない。この件、外務省所管の事項とは言え、最終的な判断は官邸が下しているはずで、現地にいる大使を参列させるだけで十分としたということだろう。何とも残念な判断としか言いようがない。
 繰り返すが、親日家の元大統領の国葬である。安倍総理が参列したとしても、まったくもって不思議ではなかったはずだ。こういう機会を利用して、各国首脳との会談を設定することも可能であり、その機会も逃してしまったことになる。

 

 

外交失態の安倍総理となるのか

 

 昨今、安倍総理は外交で成果をあげているとされてきた。ところがどうだろうか。今回の件も外交的な失態を犯したと言っても間違いではないと思われるが、それでも「外交の安倍」などと言っていられるのだろうか。

 

 シラク元大統領の国葬に、日本からは国家元首級ではなく駐仏大使が参列した。これをフランスから見れば、安倍政権から「フランスを重要視していない」というメッセージを送られた、そう受け止められてしまった可能性すらある。特に、日本以外の国の対応を見れば、いかに日本が不十分な対応をしていたのか分かろうもの。
 外交は人と人の関係性の中で展開されていくものである。要人の国葬のような機会では、まさに人と人のつながりを重んじた対応を取りたいところである。

 

 もちろん、安倍総理とて、何もしていないわけではない。ベルナデット・シラク元大統領夫人に向けて、メッセージを発信している。

 

www.kantei.go.jp

 

 

 ただ、これは型通りの対応と呼ぶべきもの。外国の要人が亡くなったので、慣例により哀悼の意を表したというものである。他の要人に向けたものよりは若干文章の量が多いようにも思うが、受け取った側からすれば、数ある外交的文章のひとつにしか見えないだろう。
 何より、国葬という舞台があるにもかかわらず、そこに日本政府としての「姿」を見せることが出来なかったのは痛恨ではないだろうか。

 

 ロシアのプーチン大統領は他国の国葬に参列するのは異例とされる。裏を返せば、参列すれば、それだけで世界中にその事実が報じられ、参列を受けた側からも感謝されるということだ。それこそ、首脳としての外交の何たるかを熟知したプーチン大統領の振る舞いと言えるだろう。

 対して、日本では。日本国内では、「外交の安倍」と称して国民を煙に巻きながら、実態は外交音痴で失態を重ねる。そんな残念な状況が出来つつある。

 早く「外交の安倍」の幻想から脱却したいものだ。