霞が関から見た永田町

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働き方改革の呼び水となるか。テレワークデイズがスタート。

 

 

 

東京オリンピックの開幕まであと1年を切った。灼熱の首都東京に毎日満員の通勤電車に揺られてくる通勤客に加えて、来年は世界から四年に一度の祭典を楽しみに訪れる観光客が入り混じることになる。

 

予想される大混雑に備えるのと同時に、これを機に新しい働き方を浸透させるべく始まったのがこのテレワーク・デイだ。

 

今年はテレワーク・デイズ2019と銘打ち、「2020年東京大会前の本番テストとして、7月22日から9月6日の約1ヶ月間をテレワーク・デイズ 2019実施期間と設定し、テレワークの一斉実施」を呼びかける。

 

実施に際して、全国で3,000団体、のべ60万人以上の参加を目標とし、都心の大企業や競技会場周辺企業をはじめ全国の様々な企業・団体に参加を促している。

 

この期間、モバイル、サテライトオフィス、地域でのテレワークの実施以外にも、時差出勤やフレックスタイム、ワーケーションなど多様な働き方が奨励されている。

 

 

オリンピックがトリガーとなる

 

2017年から始まったこの取り組みに毎年多くの企業が参加を表明している。特に今年は東京五輪の前年とあって関心は高い。今年もテレワークデイに無人になったPCメーカーのオフィスの様子が報じられたり、テレワーク・デイズ参加を伝えるプレスリリースもいくつも見られた。

 

仕事を取り巻く環境はテクノロジーの進化もあって、テレワークを進める環境が整いつつあるのだろう。ようやく重い腰を上げた会社も多いのかもしれない。チャットツールやオンライン会議システムを活用して日々の業務を行うという業種や職種も増えている。

 

企業としても働き方改革は一つの課題。いかにして働きやすい職場を作り出すかは、生産性の面でも選ばれる職場としての面でも避けては通れない課題である。

 

今後、高齢化に伴って労働力人口は徐々に減少していく。さらに人口が減少するので、労働力の減少と同時に消費者も減る。経済全体が退縮していくときに、企業はどうやって生き残るかを考えなければならない。

 

だが昨今の働き方改革はどうしても「残業の抑制」にばかり目が向きがちだ。以前にも書いた通り、残業時間のカットが働き方改革の本質ではない。

 

 

肝心なのはテレワークのその先。

 

テレワーク・デイズに先立って、神奈川県がサテライトオフィスの活用で年間621億円の経済効果があるとする推計を発表した。神奈川県は約90万人超が東京都内に通勤しており、総務省の統計によると神奈川県民の通勤通学時間の平均は1時間45分と全国一長いという。
こうした時間を労働時間や余暇の時間に置き換えられるのがテレワークの魅力ではあるものの、達成すべきは残業中心の働き方からの脱却である。就業時間中に「1」の成果を達成し、さらに残業で「+0.5」を稼ぎ出そうとしていたのがこれまでの働き方。これを就業時間中の生産性を「1」から「1.5」にしようというのが働き方改革の本質である。

 

残業代を稼ぐのではなく、就業時間中の生産性を上げることによって企業業績を向上させ、賃金アップを実現させていくということになる。

 

 

テレワークをすることがそもそもの目的ではない。

 

テレワークの議論では、労働時間の把握や管理が課題となるが、これは単純に働く場所を変えるだけの発想に基づくもの。テレワーク自体が目的になっているから生じる議論だ。

 

言ってしまえば、テレワークを選択する必要がなければ、それは導入コストの分だけ無駄でしかない。従来の働き方よりもコストダウンでき、生産性が向上するからこそテレワークを導入する意義がある。

 

そこには、朝出勤して夕方に退勤する従来型ではない働き方をすることで、業績を向上させ、多様化する従業員の満足度向上、企業実績の向上など、もう一段階会社を上向かせるという目的があるはずだ。

 

であればこそ、時間による管理ではなく、アウトプットの管理こそがテレワークのような働き方では必要になってくる。その従業員に課せられたアウトプット、アウトカムが何かを明確にし、マネージャーはスタッフを管理する。

 

この時、従来通りの8時間労働を課す必要もないかもしれない。テレワークの導入で、育児をしながら働くことができて、会社に出勤して拘束される時間よりも短い時間で同様の生産性が確保されるのなら何ら問題ない。更に言えば、より多くの実績を上げられるのであればその従業員には報酬の増額で報いることもできる。

 

同時に、社会保障としての環境整備も必要になる。国としても未来への投資を後回しにせず、子育てしながら働き続けられる働き方改革にも着手して欲しい。来年の五輪開幕を契機に、この国でも新時代にふさわしい働き方が広く浸透して欲しいものだ。