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北朝鮮にも譲歩する安倍総理 さらなる外交敗北となるのか

 

 

安倍総理、前提条件をつけずに北朝鮮へ

 

 安倍総理は、5月1日に産経新聞が行ったインタビューに対して、前提条件をつけずに北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談を行いたいと答えた。

 

special.sankei.com

 

 

 これは、「制裁と圧力」という従来の立場を大きく変更する発言だ。与野党双方から、強い批判があってしかるべき方針転換である。
 それを連休中の新聞紙上で発信するあたり、巧みなメディアコントロールと言えるだろう。これなら、直ぐに国会審議で与野党から追及されることもない。
 北朝鮮との対話を主張する勢力も勿論あるが、北朝鮮に対して強い姿勢で臨むべきとする国民の方が大勢だろう。そういう中で、これまで北朝鮮に対して強硬な姿勢であった安倍総理はそれをもって支持されていた側面もあろうかと思うが、だからこそ今回の方針転換は衝撃的である。

 

 そもそも、安倍総理は国会議員の中でも北朝鮮による拉致問題に早くから関心を払う数少ない議員の一人であった。それゆえ、拉致被害者の会からの信頼も厚い。総理大臣に就任した際には、その都度、拉致問題の解決へ向けた進展が期待されてきた。
 しかしながら、安倍総理の在任中に、拉致問題は一向に進展を見せていない。
 外交である以上、水面下では様々な交渉も行われ、見えないところでは何らかの進展があるのかもしれない。ただ、表立った成果がない以上、掛け声だけと言われても仕方がない状況が続いている。
 そんな中での、今回の大幅な譲歩と見られる発言である。

 

 

今度は北朝鮮相手に日本を「売る」のか

 

 先ごろ、安倍総理が北方領土問題についてロシアに大きく譲歩したことを指摘した。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 

 思い起こせば、北方領土に関する記述を削除した外交青書では、北朝鮮に関する記述から「圧力を最大限に高めていく」という部分も削除されていた。既に伏線は張られていたということだろう。
 今度は、北朝鮮に大きく譲歩しようとしているということだ。未解決の拉致問題が厳然と存在しているにもかかわらず、さらには国交すらない国のトップと、前提条件をつけずに会うというのは、譲歩以外の何物でもない。

 

 もう拉致被害者は帰って来なくても良いのだろうか。
 一時、主に野党から北朝鮮から対話を促すような提案があったときに、それを突き返し、あたかも野党が弱腰で売国的であるかのように批判していた時の姿勢はどう説明するのだろうか。

 安倍総理の訪朝や金委員長との会談となれば、おそらく、拉致問題をはじめ日朝の間にある問題の解決へ向けた進展が期待されることになるだろう。夏には参議院議員選挙が予定されていることから、その期待感を持たせることで、「安倍外交の成果」を喧伝しようとしているのかもしれない。
 もしそうであるならば、それは安倍総理が政権維持のために「国を売る」ということと同義だ。「日本を取り戻す」と力強く宣言して政権に返り咲いた安倍総理。行き着く先は、政権維持のために、どんどん国を売り渡す。とんだ食わせ者と言わずして何と言えようか。

 

 

水面下で「お土産」を渡すのか

 

 日本との関係では問題しかない国のトップと前提条件なしで会う。これ自体、大変な問題だが、それを額面どおり受け止めるべきではないだろう。
 相手が会いたいと言っているのであれば、それに応じて前提条件なしに会うということも無いわけではないが、こちらから会いたい言った場合、水面下では何らかの見返りを用意していると思った方が良い。
 北方領土の件でロシアに対して行ったのと同じように、今回も水面下で日本の経済支援の裏約束を進めていると疑うべきだ。日本国民には見えにくいところでお土産を渡して、その見返りとして、表面的な外交成果を得る。何とも酷い話だが、「外交の安倍」という虚像に騙された少なくない人は、またもや熱狂することになるのだろう。

 

 あるいは、数名の拉致被害者の帰国が実現するのかもしれないが、それでお茶を濁されてはならない。全員の正確な安否確認と生存者のただちの帰国は絶対に譲ってはならないのだ。

 

 

北朝鮮の返事は飛翔体か

 

 安倍総理のインタビューが公開された直後、5月4日に北朝鮮は日本海側に向けて飛翔体を発射した。

 

www.jiji.com

 

 

 昨年のトランプ大統領と金委員長の会談以後、鳴りを潜めていたが、早速の示威行為である。下手に出れば、それに乗じられるのは外交の常道。プーチン大統領の甘い言葉に乗った結果、北方領土のロシア化をさらに進められてしまったのと同じ轍を今回も日本は踏まなければならないようだ。

 

 もちろん、「制裁と圧力」だけを声高に叫んだところで、日本政府として出来ることには自ずと限界がある。他国のように軍事的な手段に訴えることは出来ない。それでも、拳を振り上げた以上、それを下ろせば相手がそれに乗じてくるのだから、簡単にそれを降ろすと総理が言ってはならなかったはずだ。
 目の前に成果がチラつき、おいそれと譲歩してしまう安倍総理。日本を取り戻すどころか、どんどん大事なものを失ってしまっていることに、早く気付いて欲しいものだ。