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質問に正面から答えないことは総理になっても変らない

 内閣の基本方針から復興と原発事故が消える

 菅内閣が始動した。

 そのはじめから、質問には正面から答えなかった菅官房長官の姿を彷彿させる、そんな一幕があった。

 

 ことは、菅内閣が16日の初閣議で決定した基本方針に関わる。

 第2次安倍政権では、この基本方針に東日本大震災からの復興や東京電力福島第1原発事故に関する記述があった。しかし、菅政権の基本方針では、そのような記述がなかったのだ。

 この記述の不存在を記者から問われて、平沢勝栄復興大臣は23日の会見で、「たまたまそういうことになった」と釈明した。

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 内閣の基本方針に、東日本大震災からの復興や東京電力福島第1原発事故に関する記述がないということ自体、そもそもあり得ないことだと思うが、それを「たまたま」と片付けてしまうのだから恐れ入る。

 

 いまだ復興や原発事故対応の途上にあるにもかかわらず、そして、安倍政権でも基本方針に明示されていた事柄であるにもかかわらず、それらの記述が消えたのである。

 来年に延期された東京オリンピック・パラリンピックは「復興五輪」だったのではないだろうか。

 

 さて、菅総理はどう言い訳をするのかと思っていたら、相変わらずの詭弁を弄してきた。 

 

指示書には記載している!?

 菅総理は、取って付けたように、26日に福島県を訪問した。そこで、記者に対して、組閣の際に全閣僚に渡した指示書では復興への方針を「しっかり書き込んだ」と釈明した。

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 基本方針には記載していなかったが、指示書には記載していた。それが正しいとすると、平沢復興大臣も23日の会見で、「基本方針には記載されていなかったが、指示書には記載されていたので問題ない」と答えれば良かったはずだが、どうして「たまたまそういうことになった」といった批判を呼びそうな回答をしたのだろうか。

 指示書は、まさに各大臣に指示をするために手交するものであり、重要な文書のはずだが、平沢復興大臣はまさか内容を未確認だったのだろうか。

 

 近日中に、指示書が公開されて、「このとおり、指示書には記載されている」と反論されるのかもしれないが、後からは何とでも言える。

 安倍内閣では公文書の改竄まで行われているのであって、事後に「こんな文書がありました」と示されても、後付けで都合の良い文書を作ったという疑念は拭えない。

 

 いずれにしても、菅内閣の基本方針には、東日本大震災からの復興や東京電力福島第1原発事故に関する記述がなかった。そして、その事実を指摘された時に、直ちに指示書の存在は提示されなかった。これが全てである。

 基本方針から記述が消えたことの説明はまったく出来ていない。 

 

質問をはぐらかす菅「総理」へ

 菅氏は官房長官の時に、都合の悪い質問には正面から回答しようとしなかった。むしろ、質問した記者が間違っている、そんな不遜な態度までとってきた。

 官房長官から首相に上り詰めても、その本質は変わるところがないのだろうか。これからは、菅総理として質問には正面から答えずに誤魔化しに走ることになりそうな、そんな気配を今回の基本方針から消えた記述についてのはぐらかしからは感じるところである。

 

 まだ菅政権は始動したばかりであり、国民の期待が集まっている期間である。俗にいう政権と国民のハネムーン期間である。

www.smbcnikko.co.jp

  野党も性急な批判や評価は手控えする期間でもある。そのため、今回の基本方針をめぐって弄された詭弁も不問に付されることになりそうだが、スタートから以前と同様に質問をはぐらかしているようでは、前途は暗澹たるものであると予想せざるを得ない。

 

 いまだ国会審議は始まっていないが、総理となれば、これまで以上にその言動には注目が集まる。官房長官であれば少しは許されたかもしれない質問のはぐらかしも、総理となれば簡単には許されない。

 国会審議にどこまで耐えられるのか。直ぐに菅総理の正念場が訪れるかもしれない。