霞が関から見た永田町

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動き出したら止められない現政権のコロナ対策

「Go to トラベル」につづき「布マスク」も

 感染者数が全国で軒並み増加する中でも強行された「Go to トラベル」キャンペーン。

その影響が表れるのは2週間後のため、8月初旬には感染者数の増減というかたちで、その影響を私たちは知ることになる。新規感染者数が減っていることを強く望みたいところが、もしも「Go to トラベル」キャンペーンの影響の有無など気にならない程に大きな数の新規感染者が出ていたとすると、「Go to トラベル」キャンペーンの当否など議論されることにもならないかもしれない。

 

 一度動き出した施策が止まらないというのは政府の抱える宿痾だが、コロナ対策のために繰り出される施策は「Go to トラベル」キャンペーンに限らず、安倍総理が「やる」と決めたら、意地でも実行に移すということが官邸や霞が関の官僚の考えていることらしい。

それを象徴するような施策であるアベノマスクも問題を検証するどころか、さらに布マスク配布を続行するというのだから恐れ入る。

www.asahi.com

 

布マスク、今後さらに8千万枚

 全戸配布のアベノマスクは既に6月に終了しているが、介護施設や保育所、幼稚園など向けの配布は現在も続けており、さらに今後8千万枚の配布を予定していると報じられた。

 この件、主要紙では朝日新聞が報じていることもあって、政府の意図を曲解した悪意に満ちた記事だとの批判もネット上ではあるようだが、そういう批判こそ政府の事業を理解していない誤った批判である。

 

 そもそも、今後追加される8千枚の布マスクの配布は巷間言われているアベノマスクとは別事業である。配布される布マスクの素材や形状は同様であるため、届けられるのはアベノマスクそのものではあるが。

 介護施設や保育所、幼稚園などに向けた布マスクの配布は全戸配布のアベノマスクに先行して実施されていた。この事業の一環として妊婦向けに配布されたマスクからカビや虫などの混入が見つかって回収騒動になった。この回収騒動もあって配布が滞っていたということもあり、全戸配布のアベノマスクの事業が完了した後にも新たな契約を行って配布を続行するというのである。

 その追加の契約は6月22日付に行われており、8月末までに納入されることになっているとのことだ。

 

 ネット上の朝日新聞に対する批判は「配布が終わっていないから、終わるまで続けるだけで、追加で配布を始めるわけではないのではないか」というものだ。しかし、契約の日時を見れば明らかなように、市中でのマスクの入手が十分に可能になった6月中旬の時点で、事業継続のために追加の調達契約を厚労省は行っているのである。

 6月中旬の時点で、「もうマスクの購入は難しくないので、ここで配布は止めよう」ということにはならず、市中で購入するよりも決して安くはない費用で購入し、配布費用をかけて配布を続行しようというのだ。追加で配布を始めることの当否ではなく、必要性が減じた中でそれでも事業の継続という判断がなされたことの当否が問われているのである。

 

 もちろん、布マスクの配布をこれから受ける介護施設や保育所、幼稚園などにとっては、新たな配布はありがたいことかもしれない。しかし、あえて6月の時点で追加の契約を行って布マスクを政府が購入し、それを配布することに合理性はあるのか疑問が残る。

 既に各種マスクの価格は低下し、マスク不足が叫ばれた頃と比較すれば落ち着いた価格となっている。それら施設でマスクが必要とされているのであれば、あるいは布マスクではない市場に流通するマスクを購入して配布する方が安価で済む可能性すらある。

 

 布マスクを配布すると決めたら、社会的環境がどうなっていようが、とにかく最後まで続行して完了させようとする。一度始めたら、意地でも止めようとしない政府のやり方には辟易するばかりだ。

 まさか、失政を認めたくないから、最後までやり通すことにこだわるということではないと思いたいが、これだけアベノマスクに批判があっても布マスクの配布にこだわるところを見ると、あながちその見立てが間違っていないのかもしれない。