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公的制度に対する国民の信頼を毀損した安倍政権の罪は重い

スキャンダルによる東京高検検事長の異例の辞職

 賭け麻雀を報じられ、それを認めざるを得なかった黒川弘務東京高検検事長が辞職した。

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 検察庁法に則れば、本年2月に定年退職となるはずだった黒川検事長。安倍政権は明らかに違法と言えるやり方で、法解釈を捻じ曲げて閣議決定をしてまで黒川検事長の勤務延長を認め、その任に当たらせていた。

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安倍政権にとって余人をもって代えがたい存在であったはずの黒川検事長も最後はスキャンダルによってその地位を追われることになったのだ。

 

5月に入ってからの動きは急で、黒川検事長の賭け麻雀は5月の初めのこと。その前にも常習的に賭け麻雀は行っていたようだが、週刊文春が報じたのは5月のそれである。

そして、ゴールデンウイーク明けに急に盛り上がりを見せたのが検察庁法の改正に向けての動きであった。国会で法改正の動きが顕在化すると、ゴールデンウイーク明けに、「#検察庁法改正案に抗議します」のハッシュタグが瞬く間に拡散され、大きなうねりとなった。

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 黒川検事長の定年延長を後付けで正当化しようとするかのように見えた法改正に反対の声が高まり、結果的に、検察庁法改正は断念されることになった。これが5月18日。

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 そして、黒川氏のスキャンダルが報じられたのがその週の20日であった。

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 この間の安倍政権は完全に潮目を読み違えていた。黒川氏の処遇を誤り、それが内閣支持率の急降下にまでつながっている。

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 これだけ支持率が低下すれば、それはもはや政局に発展する事態に至っていると判断するのが妥当だろう。

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疑惑は何ひとつ解消されていない

 思い返せば、安倍政権下で生じた疑惑は何ひとつ解消されることなく現在に至っている。

 森友学園・加計学園の問題は未だ真相は闇の中だ。未解決であることをもって、そもそも問題などなかったのだと擁護する層もあるようだが、その都度、「国政上、他に取り組むべき問題がある」と誤魔化してきた結果、どうだろうか。

 GDPや毎月勤労統計の不正、桜を見る会やその前夜祭の問題など、毎年のように新たな疑惑が生じ、いずれも未解決のままである。

直近で問題になっていた桜を見る会に関わる疑惑も新型コロナウイルス感染症の感染拡大を前にして、追及する野党が批判されるような状況になり、有耶無耶にされようとしている。

 

 黒川氏が法務省や検察庁の幹部として、そのような案件にどのように関与したのかは外側から見る限り憶測の域を出ない。しかし、少なくとも黒川氏がいるところで政治家の不起訴案件が連続していたのも事実である。その責は黒川氏のみだけではなく、検察全体にあるとは思うが、安倍政権や与党自民党に関係する数々の疑惑について、検察がきちんと向き合っていないのではないかとの不満は国民の中に着々と蓄積していたはずだ。

 その不満が今回の黒川氏の定年延長からスキャンダルでの失脚、そして、極めて甘い処分によって臨界点に達したのではないだろうか。

 

 

検察制度への信頼を毀損した罪は大きい

 今回、検察の最高幹部である東京高検検事長が賭け麻雀で辞職することになった。しかしながら、その処分は訓告と言う極めて軽いもので、人事院規則と照らし合わせても明らかに不当である。

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 この甘い処分にも官邸の意向が作用したのではないかとも伝えられている。

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 これでは、黒川検事長がこれまでに政治案件で手心を加えてくれたから、最後に政権が黒川検事長を守ったのではないかと疑われても仕方がない。

 

 違法に勤務延長を認め、さらにはその違法な行いを事後に正当化するような法律改正まで目論もうとした安倍政権。それ自体、国民の検察制度を見る目を厳しくさせてしまったと思うが、それに加えて最高幹部であり余人をもって代えがたいとまでされた黒川氏自身が賭け麻雀で辞職し、さらには軽い処分で済まされては、一層国民の目は厳しくなろうというものである。

 

 森友学園問題では財務省に公文書改竄をさせるまでに至らしめた安倍政権は、今度は検察制度も破壊しようとしているのかもしれない。もはや、我が国の重要な公的制度の基盤を崩壊させようとしているのではないかと疑いたくもなる。

 安倍政権下で進む公的制度に対する国民の信頼の毀損。それを進める罪は極めて重い。