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再燃する森友問題、涙なしには見られない文春砲、権力に殺された公務員を見捨ててはいけない

2020年3月18日。文藝春秋が発売した3月26日号「週刊文春」。これまで数々の政治スキャンダルや政治家あるいは芸能人の不倫スキャンダルを次々と暴き、近年、文春砲という言葉まで生み出してきた雑誌だ。時にその取材スタイル、あるいは世へ問い方などから「文春はやり過ぎだ」という批判も出ていた。

 

 

弩級の衝撃だった近畿財務局職員の手記

そんな週刊文春が2年半ぶりに完売し、書店から週刊文春が消えた。完売した理由は3月29日号に掲載された、1つの手記だ。森友問題で自殺した財務省近畿財務局の男性職員(当時、54歳)の遺書「すべて佐川局長の指示です」が全文公開されたのだ。

 

「ぼくの契約相手は国民です」が口癖だった、そんな真面目な公務員がなぜ、自殺という道しか残されていなかったのか。霞ヶ関はもちろんのこと、このブログを読んでいる読者の多くも、文春の記事は目にしたことだろう。涙なしには読めない記事だった。そして、権力が持つ恐ろしさを再確認させられた。

 

社会の公僕であることに誇りを持って仕事をしてきた人間が、国家権力のトップへの忖度を判断基準に行動する上司、それも近畿財務局からすれば、遠く雲の上の存在の見えない上司に振り回され、次第に追い込まれていく。

 

週刊文春の編集長は「この原稿を初めて読んだ時に、震えました」と答えている。百戦錬磨の、これまで数々のスキャンダルと暴き、数々の情報が持ち込まれる編集部にあっても、今回の手記は弩級だったのだ。

 

安倍首相が人には見えなかった

この文春の記事に合わせて、亡くなられた男性職員の妻が、国と改ざんを事実上指示したとされる財務省の佐川元理財局長に1億1000万円余りの損害賠償を求める訴えを大阪地方裁判所に起こしている。

 

今回の提訴について原告側は、「改ざんが誰の指示で行われ、どのようなうその国会答弁が行われたのかを、法廷で当事者に説明させるとともに、保身や忖度による軽率な判断や指示で現場の職員が苦しみ、自殺することが2度とないようにすること」が目的と語っている。

 

この提訴を受けた政府のコメントには、正直、背筋が凍る思いがする。安倍首相は参院総務委員会で「検察ですでに検査を行い、結果が出ていると考えている」と答弁し、麻生氏は記者会見で「手記と調査報告書の内容に大きな乖離があるとは考えていないので、再調査の考えはない」、菅官房長も衆院内閣委員会で「関与した職員には厳正な処分が行われた。適材適所の人事」と答えている。

 

音を立てて政権が壊れ始めている

現時点ではそう答えざるを得ないのかもしれないが、3人は政治家だ。政治家だからこそ、木で鼻を括ったような答えはすべきではないし、もう少し、人の温かさの通ったコメントが出せたはずだ。これが今の安倍政権の正体だ。

 

手記にもあるように、財務省そのものが、今回の自殺問題の根っこは安倍首相そのものにあることは、誰でも知っている。知っていても、それを口にできない。永田町、霞ヶ関に蔓延する忖度の空気の前に足がすくんでしまうからだ。

 

当たり前だが、それが国家権力の怖さだろう。問題は安倍首相以下、自民党のトッップ3から、権力を握ることの謙虚さが見えてこないことだ。今の安倍自民党政権は日本という国をどこへ持っていこうとしているのだろうか。

 

野党はパフォーマンスを厳に慎め

今回の手記を受けて、野党は「森友問題再検証チーム」を発足させ、再調査を求める声が上がっている。

 

野党に気をつけて欲しいことがある。テレビ、なかんずく情報番組やニュース番組へのテレビ映りを気にしたパフォーマンスは徹底的に排除してもらいたい。野党のテレビパフォーマンスは有権者の心を引き離すだけだ。百害あって一理なし。

 

今やるべきは立ち上げた調査チームがパフォーマンスに走ることなく、粛々とタスクに当たること、そして何より亡くなった近畿財務局の職員およびご遺族の気持ちに寄り添うことだ。気持ちに寄り添うことができれば、これを機に目立とうというパフォーマンスにはならないはずだ。そして、それはそのまま、野党への信頼に繋がっていく。

 

森友問題は手記の公表によって、一気に状況が変わった。自民党政権も問われているが、野党もまたその姿勢が問われている。今、国民が求めているのは、真に有権者に寄り添う政治家の真摯な姿だ。