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新型コロナウイルス対策に遅れた上に問題点は残すのか

遅きに失した新型インフルエンザ対策特別措置法の改正


 3月10日、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けて、政府は新型インフルエンザ対策特別措置法改正案を閣議決定し、国会に提出する。

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 必要な手立てを最大限に講じるという意味では、新型インフルエンザ対策特別措置法改正も検討すべき一手段だと思うが、この段階で取り組むこととして手遅れ感があることは否めない。
 そもそも、新型インフルエンザ対策特別措置法は改正せずとも、現段階で活用出来る可能性があった。これについては、国民民主党の玉木代表の説明が明快だ。

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 にもかかわらず、政府は現行の新型インフルエンザ対策特別措置法を活用する道を自ら閉ざしてしまった。そのように主張する内閣官房内閣官房国債感染症対策調整室のツイートまである。
これについては、京都産業大学の髙嶌英弘教授が丁寧に反論している。

togetter.com

このような無理な主張をしなければならないほど、何としても既存の新型インフルエンザ対策特別措置法を適用したくないというのが政府の姿勢なのだろう。
その頑なな姿勢に、新型インフルエンザ対策特別措置法は民主党政権下で成立した法律であることから、それを活用したくないのではないかと勘繰られても仕方がない。

改正する以上は問題点の修正を


 今回の新型インフルエンザ対策特別措置法の改正で焦点となるのは首相による緊急事態宣言の部分についてである。この点については野党が共同して修正案を提示している。
 どこが問題になるのかと言えば、現行の新型インフルエンザ対策特別措置法では、首相が緊急事態を宣言すれば、都道府県知事による外出自粛要請などが可能となる。この緊急事態宣言に当たっては「国会に報告する」というのが現行法の規定であるが、この点について野党は修正案を提示しているのである。
 修正案では、緊急事態宣言について、開始時は原則国会の事前承認を求めることとし、緊急時など事前承認の時間がなければ事後承認も認め、延長をする際には事前承認を必要とするとした。さらに、国会が議決すれば緊急事態を解除することも可能とすることも求めている。
 緊急事態宣言が発せられると、様々な私権を制約することにつながる。緊急事態だからこそ、そのような制限も一定程度認められるとしても、その歯止めが利かなくなることは避けたい。だからこそ、国会の関与を明確にしようという修正の提案が合理的であると言えるだろう。
 この緊急事態宣言を利用して安倍総理がやりたいことを何でもやるようになってしまうといった批判は、少々妄想を膨らませ過ぎのように思うが、首相が誰であっても、フリーハンドを与えてしまうと暴走する危険がつきまとうことは確かだ。少なくとも、そのようなリスクを出来るだけ小さくするために、緊急事態宣言に関して国会の関与を法律の中に明記したいところだ。
 しかし、政府案では、国会の事前承認が条文の中に書き込まれていない。
 そもそも、この改正自体が遅きに失したものだとは思うが、改正して今後活用することを考えるのであれば、この際、問題点はきちんと解消する手立てを講じて欲しい。