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2020年2月27日は日本が法治国家であることを止めた日になるのか

森法務大臣の不信任決議案を否決

 2020年2月27日午後、立憲民主、国民民主、共産、社民の野党4党が衆議院に提出していた森雅子法務大臣の不信任決議案が自民党や公明党などの反対で否決された。

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 不信任決議案が提出される原因となったのは、黒川弘務東京高検検事長の定年延長をめぐる一連の常軌を逸した政府の対応であり、その中心となったのが森法務大臣である。

 黒田検事長の定年延長については、既に書いたとおりだが、検察庁法の規定では63歳で定年となるところ、政権に近いとされる黒田検事長は過去に例を見ない定年延長がなされたのだ。

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 その際に繰り出されたのが公務員法では定年延長が認められているという理屈である。これは法律の大原則である「特別法優先の原則」を無視するものであった。
 この原則は、一般法と特別法が競合する場合には、特別法が優先されるというものである。ここで言うところの一般法は公務員法で、特別法が検察庁法ということになる。それぞれ定年に関する定めがあるということでは競合関係にあり、この場合は特別法である検察庁法が優先される。

 検察庁法では定年の延長の規定はなく、当然に検察官の定年は63歳であった。
 そのように解釈することは野党の指摘を待つまでもなく、当然のことであり、かつて政府解釈はそういうものであった。

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 それが今回は、黒川検事長の定年を延長させるために、法律の解釈を変更したというのだ。そもそも解釈変更は可能ではないはずなのだが、ここで驚きの事実が発覚した。
 当初、解釈変更の決裁をしたと森法務大臣は答弁していたのだが、その決裁が口頭によるものだったというのだ。

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 まさか、役所が文書によらない決裁を行うなんてことは前代未聞だろう。
 法律の大前提である原則を破棄するような解釈変更を口頭による決済で決定してしまう。およそ法治国家にあっては起こり得ないことが起きたのだ。

 さらに、立法府である国会は、そのような法務大臣の不信任決議案が提出されたにも関わらず、自らの存在意義を否定するかのように、それを否決した。不信任決議案に反対票を投じた自民党や公明党、日本維新の会は日本が法治国家であることを止めることを承認したということだ。

法律的根拠はない公立小中高の休校要請

 さらに、2月27日にはもう一段の衝撃が待っていた。
夕方、突然、安倍総理が3月2日からの全国の公立の小学校、中学校、高校、特別支援学校の臨時休業を要請したのだ。

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 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎたいという気持ちは理解出来るが、残念ながら国が公立の小中高を臨時休業させる法的根拠は乏しい。
公立の各種学校の設置者は全国の自治体の首長だ。休業をするとしても、それを決めるのは首長であって、安倍総理の要請には、ただの「お願い」である。今回の要請については、そこに何かを強いる法的根拠はない。
早速、その唐突な要請に対して、各地の首長から疑問の声が上がった。

 

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 もちろん、少なくない自治体は総理の要請に従って、休業にすることになるだろう。
要請に従わないことで国から不利益を受ける可能性があるからだ。そういう中で、首長が自らの判断で要請に従わないというのは容易ではない。

 法的根拠のない要請で、自治体の首長に何らかの判断を強いる。これは明確に憲法に規定するところの地方自治の本旨に悖る行為だ。これはまさに、法治国家の根幹である憲法の精神をないがしろにする行為が平然と行われているということである。ここでも日本が法治国家であることを止めることを意味する暴挙がなされていると言える。

 2月27日は、二つの大きな出来事があった。その二つの出来事は日本が法治国家を止めることを象徴するものとして、後世には記憶されることになるのかもしれない。