霞が関から見た永田町

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加計学園問題の核心 ―行政手続の適正性をいかに担保するのか―

 加計学園による獣医学部新設に関して、「総理のご意向」なる文章が書かれた文書が公開され、その存在を政府は否定するものの、前文部科学省事務次官の前川氏がその存在を認め、さらには「行政がゆがめられた」と記者会見で前川氏が話すという前代未聞とも言えるような事態が起きている。

 

 加計学園の件については、既に3月頃から週刊誌などでは報じられていたが、問題となる決定的な証拠や明らかな違法行為は認められなかったため、特段の注目を集めてはいなかった。そのような中で、「総理のご意向」なる事柄が書かれた内部文書と思しき文書が表に出るところとなり、国会でも民進党玉木雄一郎議員などが取り上げたことから、にわかに事が急展開を見せ始めたのである。当初は菅官房長官や松野文科大臣もその文書の存在を否定していたが、直近まで事務次官を務めた前川氏がそれを覆す証言を行い、それでも菅官房長官らは文書の存在を否定しようとしているのである。

 

 加計学園岡山理科大学などを運営する法人で、その理事長が安倍総理とも親しい関係にあることから、52年ぶりに獣医学部の新設が認められた件につき、安倍総理の何らかの不適切な関与があったのではないかと野党は追及の構えを見せていた。確かに、設置が不可能なところで、その設置が総理の意向で無理矢理に認められたというのであれば、問題は明らかである。しかし、加計学園による獣医学部の新設は国家戦略特区の枠組みの中で認められたことであり、たとえ総理の意向があったとしても、国家戦略特区自体が総理の主導する施策のひとつであることからして、そのルールに則って決められている限りは特段の問題はないはずである。そもそも加計学園による獣医学部の新設は前の第一次安倍政権下で既に浮上していた話であり、民主党政権時代にも議論の俎上に上がっていた。これを捉えて、「民主党、またもブーメラン直撃」と騒ぐ向きもあるくらい、来歴のある話である。

 

 そのような経緯から、事の真相が分かりにくくなっているが、この件について問題となるのは行政手続が適正に進められたのか否かの一点に尽きる。国家戦略特区自体が様々な規制を一部について緩和するという、行政における例外を認める制度である。獣医学部については、これまで新設が制限されてきたところ、今回、1校に限って、しかも空白地区に限って認めるという制限の緩和があったのである。この制限の緩和により、獣医学部の空白地区である四国の愛媛県今治市における加計学園による新設が認められたのである。前の安倍政権でも、そして民主党政権下でも認められなかった獣医学部の新設がどのような経緯で認められ、しかも、他の地区では京都産業大学による新設の提案がある中で、空白地区に一校に限り、京都産業大学の提案と比較すると必ずしも優れているとは言い難い加計学園の提案を受け入れるということがどのように決定されたのか。その行政手続が適正に行われたのか否かがこの問題の核心にあるのである。

 

 よって、加計学園による獣医学部の新設を認める決定をした現政権は、あらゆる方法を用いてその手続の適正性を証明する必要がある。にもかかわらず、前事務次官が存在していると主張する文書すら、その存在の確認はもう行わないと強弁している。これでは、加計学園による獣医学部の新設には、どこか探られては困ることがあると認めてしまっていると言われかねない。先の森友学園の問題の際にも、野党側の求めに応じて、ようやく資料を公開したにもかかわらず、真相を明らかにする上で重要と思われる部分は黒塗りであったということもあった。手続きは適正に行われたと説明・証明する責任が政府にはある。問題となる点につき証拠を出せと野党に迫りながら、証拠らしきものが出てきたら、そんなものは存在しないと抗弁するというようでは政府としての責任を全く果たしていない。

 

 前川氏は証人喚問にも応じると答えている。加計学園の問題について、あらゆる手段を尽くして、その適正性について国民に分かりやすく説明すること。これが現在、政府側に求められている第一の事柄である。